5G時代に向けた新たな規制のあり方を模索すべき――総務省「モバイル市場の競争環境に関する研究会」でMNOが主張(2/3 ページ)
総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が5回目の会合を開催。大手キャリア(MNO)、無線ブロードバンド(BWA)事業者や中古端末業界団体からのヒアリングと、意見交換を行った。この記事では、MNOとBWA事業者の主張を簡単にまとめる。
UQコミュニケーションズ:「ミルク補給」は全事業者を対象に検証すべき
UQコミュニケーションズ(以下特記のない限り「UQ」)からは担当者が2人出席。西川嘉之執行役員(渉外部長)が主な説明を担当した。
UQは全国エリアでBWAサービス「WiMAX 2+」「WiMAX」を展開するMNOであると同時に、沖縄県を除く46都道府県でau回線を利用する通信サービス「UQ mobile」を展開するMVNOでもある(※3)。今回のヒアリングでは、MNOとしてのUQを中心に説明を行った。
※3 沖縄県では、UQモバイル沖縄(沖縄セルラー電話の子会社)がUQ mobileのサービスを提供している(参考記事)
現在、大手キャリア(沖縄セルラー電話を含む)の通信設備は「第二種電気通信設備」に指定されている。この設備を保有するMNOは、他社から接続(回線借用)の要請があった場合に原則としてそれに応じる義務を負う。総務省の検討会では過去に、au(KDDIと沖縄セルラー電話)に回線を貸し出している同社のWiMAX 2+と、ソフトバンクに回線を貸し出しているWireless City Planningの「AXGP」の設備も第二種電気通信設備として指定すべきなのではないかという議論がなされている(関連記事)。
第二種指定の根拠として重要なポイントが「接続交渉上の優位性」、つまり接続交渉をする上で相手に対して明らかに強い交渉力を持ちうる事業者かどうかにある。現状では「業務区域で10%以上の端末シェアを持つこと」が指定基準だが、この基準の解釈が大きな問題となる。
UQはWiMAX 2+における卸通信サービスの大半がauの4G LTE通信サービス契約者向けの「キャリアアグリゲーション(CA)」用に使われている現状から(具体的なシェア情報は構成員限定公開)、UQ単体では接続交渉上の優位性を持ち得ないこと、企業会計の作成方法の変更準備に時間を要すること(※4)、第二種設備で開放義務のある「アンバンドル機能」(※5)を自社単独では提供していないことなどを挙げて、WiMAX 2+設備の第二種指定に否定的な考えを示した。
万が一、UQを含むBWA事業者を第二種指定する場合は、先述の状況と5G時代を見据えて第二種通信設備の定義を抜本的に見直すことを求めた。
※4 第二種通信設備を持つMNOの企業会計は、「電気通信事業会計規則」に従って作成する必要がある。UQは現時点ではこの会計を適用していないため、移行を求められた場合はシステム改修などの対応に時間が必要となる
※5 「音声交換」「データ交換(レイヤー2接続)」「MNP転送」「SMS(ショートメッセージ)交換」の4機能が対象。UQの場合、データ交換はKDDIを通して提供しており、その他3機能はBWAサービスなので提供できない
先述の通りUQはauにWiMAX 2+を卸提供しつつ、MVNOとしてKDDIからau回線の提供を受けている。そのことから「KDDIから帯域購入面で優遇を受けているのでは?」という疑念を持たれた。この点については、過去の検討会において構成員限定ながら資料を提示して否定したものの、「MNOのグループ内取引を検証するべきだ」という声は少なからずある。
UQはMNOやそのグループ企業の経営資源を検証する必要はないとしつつ、もしもグループ内取引を検証する場合は、あらゆる形態の企業におけるグループ内取引を検証して公平性を担保するべきだと訴えた。具体的な社名は出さなかったものの、ドコモとNTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズの取引、ソフトバンクのブランド間取引(ソフトバンク⇔Y!mobile)、ソフトバンクとLINEモバイルの取引、関西電力とケイ・オプティコム(mineo)の取引、楽天と楽天モバイルネットワークの取引などを想定しているものと思われる。
KDDI:接続料はMVNO主導で算定できる仕組みを導入
KDDIからは担当者が3人出席。古賀靖広執行役員(渉外・広報本部長)が主な説明を担当した。
KDDIは先にヒアリングを受けたUQの親会社である(米国会計基準適用時)。そのこともあり、「親が子を助ける」ような主張が複数見受けられた。
まずUQのWiMAX 2+の第二種通信設備指定については、同サービスの契約数の大半がauが卸提供を受けた回線(CAを実現するために借り上げた回線)ものであるとして、UQに実効的な交渉の優位性はなく、同サービスを二種指定することは適当でないとした。
合わせて、二種指定の際に問題となる「交渉上の優位性」についても徹底した議論を求めている。
UQの主張にもあるように、現状のアンバンドル機能基準は、音声通話可能なサービスが前提となっている。しかし、MVNOサービスが普及したこともあり、現状では通信の主体はデータ通信となっている。MVNOが複数のMNOから回線を選択できるようになったことや、SIMロックフリー端末も選べるようになったことでMVNOが交渉においてむしろ優位に立てる場面が出てきた。5Gが普及すると、より多くの無線リソースの中から自由にネットワークを選べるようになることも予想される。
制度設計時から状況が変わったことから、第二種通信設備の制度に関する見直し、特にシェアが10%を超えたことによる機械的な二種指定はしないように訴えかけた。
グループ間連携の検証についても、おおむねUQと同趣旨の主張をしている。
MVNOの活性化面では、11月1日までに全端末でテザリングを利用できるようにする改修を行い、接続料の精算方法を改善したことなどを紹介した。
接続料の計算において支払い猶予(先行値下げ)を可能としたしたこと、前年度・当年度精算を可能にしたことや、音声卸サービスについて低廉化に向けた交渉に応じることなどは、ドコモと基本的な考え方は同じだ。
モバイル通信における将来予見が困難であるという見通しについても、基本的な考え方はドコモと同様。その上で、将来原価方式を導入するなら、乖離(かいり)額調整の原則を算定ルールに盛り込むことを要望した。
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