5G・IoT時代に向けて見直しは不可避だが課題も――第7回「モバイル市場の競争環境に関する研究会」開催 「接続料」「第二種指定」に関して意見交換(1/2 ページ)
総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が7回目の会合を開催。今回はMVNO市場活性化に向けて、事務局が取りまとめた5つの論点について構成員が意見交換を行った。
総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」は1月22日、第7回会合を開催。「事業者間の競争環境に関する事項」について、事務局が提示した方向性案(論点案)にもとに構成員が討議を行った。
論点は5つ 特に「接続料」は重要
事務局が今回示した方向性案は大きく5つ。MNO(無線通信設備を自ら持つ大手キャリア)とMVNO、あるいはMNOのサブブランド・子会社MVNOと独立資本のMVNOとの“公正競争”のために検討すべき論点を整理して示している。
接続料算定の適正性・透明性の向上
MVNOは、MNOの無線通信設備を借り受けてサービスを提供している。データ通信の場合、その利用料金は利用帯域に応じて「接続料」という形で支払うことが多い(おおむね10Mbps以上1Mbps単位)。
接続料については現状、前々年度(2年前)の利用実績に基づいて決める「実績原価方式」となっているが、MVNOからは事業に対する予見性(将来見通し)を高め、キャッシュフロー(資金繰り)への負担を軽くする観点から、将来の利用見通しに基づいて決める「将来原価方式」の導入を求める声もある。
そこで、今回の総務省の論点案では、第二種指定電気通信設備(モバイル通信)において将来原価方式を導入することの検討が盛り込まれた。
通信における将来原価方式は、第一種指定電気通信設備(固定通信)ではすでに導入されているがが、第二種設備に導入する場合、主に以下のような課題がある。
- モバイル通信は技術革新のスピードが速い(予測と実績の乖離が発生しやすい)
- 予測と実績が乖離した場合、調整するためのルールをどうするのか
- 接続料の算定期間や頻度をどうするのか(1年ごとか、それより高頻度か)
接続料を巡っては、算定根拠の透明性確保(向上)も重要なテーマとなっている。
第一種設備の接続約款は「認可制」となっており、認可の有無を問わず情報通信行政・郵政行政審議会に対して諮問することになっている。認可に際して意見(パブリックコメント)を募集する際には、接続約款における接続料の算定根拠も公表される。
一方、第二種設備の接続約款は「届出制」で、約款に対する変更命令を発出する場合を除き同審議会に諮問されることはない。接続料の算定根拠も公表されない。
そこで、今回の総務省の論点案では、第一種設備における状況を踏まえて、第二種設備の接続料の算定根拠を同審議会に報告・公表することと、接続料の算定根拠についてMNOから情報提供を受けることについて検討すべき課題として位置付けている。
モバイル通信における将来原価方式導入について、構成員からは「予測方法や算定ルールについて、専門家を交えた本格的な検討を新たに始めるべき」といった提案が出る一方で、「接続料の算定自体に時間と手間が掛かりすぎている」「接続料で『乖離額調整』を行う場合、MNOが(撤退MVNOからの)回収リスクを一方的に負ってしまう」といった問題点も指摘された。
ネットワーク提供条件の同等性に関する検証
モバイル通信の競争環境を巡る過去の議論では、「MNOがMVNOを不当に差別している」という観点で、MNOの格安料金プラン(ソフトバンクにおける「Y!mobile」を含む)やMNOの子会社であるMVNO(※1)に対する資金援助(いわゆる「ミルク補給」)が問題として挙げられてきた。
今回の総務省の論点案では、公正競争を確保するためにMNOサービスが不当に廉価でないことの確認と、MNO子会社のMVNOが提供する各種サービスが不当に廉価でないことの確認を行うことを提案している。MNO子会社のMVNOについては、さらに必要な検証を進めることも盛り込んだ。
※1 KDDIの子会社MVNO……UQコミュニケーションズ、UQモバイル沖縄、ビッグローブ、ジュピターテレコム(J:COM)、ソラコム
ソフトバンクの子会社MVNO……SBパートナーズ、LINEモバイル
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