後発だが勝機あり? スマホ決済「au PAY」の狙いと課題:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
4月9日にスタートする「au PAY」は、キャリアとして最後発になるQRコード決済。FeliCaなどの非接触決済と比べ、導入が容易なことから、キャリア以外からもさまざまなプレーヤーが参画している。あえてKDDIがau PAYを開始する勝算はどこにあるのか?
au PAY提供の狙いは? 夏にはキャリアフリーのサービスに
ただ、当初は中小加盟店の手数料も無料になるため、au PAYからの直接的な利益は上がりづらい。開始時点での狙いは、ロイヤリティーの向上だ。中井氏は、「まずはauのお客さまに便利に使っていただきたい」としながら、「au WALLETアプリをスマホの中心に据えていきたい」と語る。「さまざまなサービスの利用につながる入り口になってもらえればと思っている」(同)というように、派生サービスに広げていくのもau PAYを提供する目的の1つだ。
au PAYが成功すれば、通信契約の解約抑止にもつながる可能性がある。KDDIのコンシューマ事業本部 コンシューマ事業企画本部 副本部長の松田浩路氏は、「能動的に、月3回ぐらい使っていただくと、結果として契約を続けていただける率が高まる」と語る。「日常的にお使いいただき、auを好きになっていただくことが大事」(同)というわけだ。店舗での決済に使えるポイントを持ったままだと、他社に移りづらいという心理も働く。ポイントがたまりやすければ、その傾向はさらに強くなるはずだ。
将来、決済手数料を取るようになれば、KDDIの売り上げにも貢献できる。加盟店手数料は無料だが、これはあくまで2021年7月までの期間限定。有料化後の手数料は明かしていないが、このときまでに広く普及し、定番の決済手段になっていれば、加盟店も契約を打ち切りづらくなる。キャリア決済はauの付加価値ARPA(1人あたりの付加価値収入)の柱になっているが、au PAYはそれをリアルな場に拡大する手段と考えると理解しやすいかもしれない。
とはいえ、auのユーザーだけのサービスだと、どうしても利用者は限定されてしまう。契約しているキャリアを問わずに利用できる他のサービスの方が、規模を拡大しやすいのも事実だ。2600万を超えるモバイルID数(2018年12月時点)を抱えているとはいえ、対象はスマートフォンのユーザーだけになるため、数はさらに少なくなる。利用者が少なければ、加盟店も導入に二の足を踏んでしまうはずだ。
この状況を変えていく切札になるのが、au IDのオープン化だ。au IDのオープン化は、すなわちサービスの開放を意味する。通信とひも付かない形で、サービスはサービスとして勝負していくというわけだ。au IDのオープン化は2019年夏ごろを予定しており、それに伴い、au PAYも、au以外のキャリアと契約しているユーザーが利用できるようになる。
関連記事
- 全容が見えた「au PAY」 競合サービスにはない特長とは?
コード決済「au PAY」が4月9日にスタートする。競合の「○○ペイ」にはない強みはどこにあるのか? 既に物理カードの決済サービスや非接触決済サービスを提供しているKDDIが、なぜコード決済を提供するのか? - 「au PAY」のキャンペーンはどれだけお得? 26.5%還元はレアケース?
4月9日にスタートするauのコード決済「au PAY」は、サービス開始に合わせて、さまざまなキャンペーンを展開する。競合サービスも、20%還元などの大型キャンペーンを積極的に実施しているが、au PAYのキャンペーンはどれだけお得なのか? - スマホ決済「au PAY」が4月9日に開始 最大26.5%還元のキャンペーンも
KDDIが、QRコード/バーコード決済サービス「au PAY」を4月9日に開始する。「au WALLET」アプリの画面に表示されたQRコードやバーコードから決済する。最大26.5%を還元するキャンペーンを4月15日以降、順次実施する。 - 「au PAY」は後発でも戦える――KDDI高橋社長が語る強み
KDDIが4月にサービスを開始する予定の「au PAY」。バーコードやQRコードを用いる「コード決済」サービスとしては後発だが、KDDIの高橋誠社長には勝算があるようだ。 - auが「ID」「決済」「ポイント」のキャリアフリー化を表明 2019年夏対応予定
KDDIが、auサービス限定となっている「ID」「決済」「ポイント」の3サービスをキャリアフリー化する方針を示した。2019年夏をめどに対応する予定で、詳細は決まり次第発表される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.