通話とSMSに特化 シンプルケータイ「un.mode phone01」が生まれた理由:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/3 ページ)
通話とSMSに特化したシンプルケータイ「un.mode.phone01」が、クラウドファンディングで話題を集めた。7480円(税別)という価格の安さにも注目が集まり、Makuakeでは、最終的に1300万円以上の資金を集めた。なぜあえて、シンプルなケータイを開発したのか? 販売元に聞いた。
クラウドファンディングサービスのMakuakeに突如登場し、話題を集めた謎のケータイがある。シンプルフォンの「un.mode phone01」が、それだ。同製品は通話とSMSに特化した端末で、たたずまいはまさに携帯電話そのもの。“ガラケー”と評されることもあるが、ワンセグやおサイフケータイはもちろん、カメラすら搭載されていない。un.mode phone01は7480円(税別)という価格の安さにも注目が集まり、Makuakeでは、最終的に1300万円以上の資金を集めた。
un.mode phone01は、キャリアショップの経営や、アプリ販売、アクセサリーの開発を手掛けるテラが販売。端末の設計や仕様策定は、兵庫県にある住本製作所が行っている。この座組を含めた端末やブランドの企画を主導したのが、ベンチャー企業W.H.Oの渡辺哲也氏だ。un.mode phone01は、同氏による第1弾の端末になる。
渡辺氏は、かつてヨドバシカメラの執行役員としてSIMロックフリースマートフォンやMVNOのSIMカードの販売を手掛け、“格安スマホ市場”の黎明(れいめい)期を支えていた。実は以前、本コーナーのインタビューにも登場いただいたこともある。そんな渡辺氏がなぜ今、実際に端末を開発する側として、通話とSMSに特化したシンプルケータイを開発したのか。その理由を本誌に明かした。
「もしもし、はいはい」端末へのニーズはまだある
―― まずは、なぜ渡辺さんが、端末の企画を手掛けるに至ったのかを教えてください。
渡辺氏 2016年の春に前職を辞め、どうしようかと考え、自分で起業しようと思い立ちました。それが今の会社です。端末に関しては前からずっと考えてはいました。ニーズがあることも分かっていましたが、やはり開発には資金も必要になります。製品を実際に作ってくれるパートナーも探さなければなりません。この段取りをするのに、2年ぐらいかかってしまいました。そこからノロノロと動き出し、具体的に話を進めてからちょうど1年ぐらいで今に至ります。
―― 携帯電話にもスマートフォンやフィーチャーフォンなど、いろいろな種類がありますが、なぜシンプルフォンだったのでしょうか。
渡辺氏 現状を見ると、SIMロックフリースマートフォンもMNOのスマートフォンも、ある程度、機能や価格のバリエーションがしっかり出てきています。un.modeは「流行でない必要」をコンセプトに掲げていますが、それが何かを考えたとき、電話としてのシンプルな携帯電話に行きついたのが開発のきっかけです。iPhone XS Maxや、最近発表されたフォルダブルスマートフォンを見ても、電話としては正直難があります。モノが進化する過程で、スマートフォンは、どちらかというと「もしもし、はいはい」の端末ではなく、データをやりとりする端末に最適化されてきたからです。
ある程度大きくなり、薄くなり、CPUを上げていこうとするとああいう形になりますが、単純に電話だけをする人もそれなりにいます。ノロノロやっているうちにドコモさんが近いコンセプトのもの(カードケータイのこと)を出してしまいましたが、そういった端末は、まだまだ足りないと見ています。
―― 開発体制のことを教えてください。
渡辺氏 住本製作所という、兵庫県にある会社がやっています。前職のときに地デジをアナログに変換するチューナーを作ってもらった経緯があり、お声がけしました。今回のお話をしたところ、「トライしましょうか」ということで担当いただけました。実際にものを組み立てているのは中国の提携工場になりますが、設計やソフトウェアをいじるところ、製造管理、検査まで、全て住本製作所にお願いしています。
―― 国産……ではなく、「Designed in Japan」のような形ですね。
渡部氏 われわれから日本“製”と発信したことはないのですが、一部のメディアにそう書かれて困ってしまいました。ただ、今はこういう商品だと、全部を日本で作っていることはほとんどありません。設計自体も住本製作所にある程度やっています。
―― ベースモデルがあって少しカスタマイズした、というわけではないということですね。
渡辺氏 デザインもしていますし、ソフトウェアも、例えば電話帳の検索などを、メニューボタンを押して呼び出すようにしています。検索アイコンを出してしまうものもありますが、あれだと操作性が微妙だと思ったからです。また、プロトタイプはカバーの中にカメラの穴も開いていましたが、それもきっちりふさいでいます。
―― カメラの穴があったというのは、なぜですか。
渡辺氏 基板はもともとあるものを使っていて、そこにカメラがモジュールとして搭載してあったからです。それを取ることは、自分たちでやっています。他にも、TELECの審査(技適の取得)やIMEIの取得も、私ども会社が直接やっています。工場が持っているIMEIを直接使うところも多いのですが、そういうところまである程度自分たちで手掛けることにしました。ただし、繰り返しになりますが、製造は中国です。
―― カラーバリエーションは全5色ですが、ブラックとマットブラックのように、かなり近い色もあります。これはなぜでしょうか。
渡辺氏 ブラックは法人向けを想定しています。法人のお客さまは、ほとんどが黒を選択するからです。ただ、黒にどういう好みがあるのかまでは分からなかったので、2つの色味を用意しました。この中ではシルバーが売れると思っていたのですが、遊びの色としてレッドも混ぜています。あとは白ですね。
原価は上がるが、あえて不必要な機能は省いた
―― 機能はほとんどありませんが、端末を見ると厚みがそこそこあります。もっと削れたのではと思えてきますが、これはあえて厚みをつけたのでしょうか。
渡辺氏 コンセプト的に、普通に使えて安く、かつ操作が簡単で自由に使えるSIMフリー端末を目指していたからです。大きさは、電池によるものです。今手元にある端末は、6日間使っていますが、残量が66%あります。200時間とうたっている一方で、使い方によっては10日間ぐらい持つこともあります。ある程度電池の持ちをよくしようとすると、大きなバッテリーを搭載しなければなりません。まずそこがあったので、電池の容量は1450mAhと大きくなっています。
おっしゃる通り、小さくすることはできました。海外の展示会に行くと、カード型の端末も出展されています。ただ、あれは実際に買って海外で試してみましたが、電池がすぐになくなってしまいます。使ってみて、普通の使用に耐えられないことが分かりました。
後は画面ですね。この端末は2.4型のカラー液晶にしていますが、親指の先ぐらいの小さい画面だと、文字がものすごく小さくなってしまいます。これでも今のスマートフォンに慣れた方には、ちょっと小さいかもしれない。ですが、電話帳をある程度の大きさで見られるようにしようと、今の画面サイズになりました。
電話ですから、耳に当てたときにマイクが口元に来るという安心感も考えました。小さい端末は、小さくすること自体をコンセプトにしていますが、この商品とは設計思想が全く違うという認識です。
特別なことができなくてもいいので、普通に使えて安い。音声通話しかできないので、SIMカードを入れるだけで、APNの設定も必要ありません。ただSIMカードを差し替えるだけでいいのは、使い勝手としてもいいと思っています。ネットにつながるようにするという選択肢もありましたが、いちいちAPN設定をしなければいけなくなってしまいますし、この画面サイズでどのぐらいの人がやるのかということで、思い切って外しています。
ただ、(ベースの基板やソフトウェアから)機能を取ると、手間がかかってその分原価は上がってしまいます。経済原理を考えると、機能を減らして原価を高くするのはあり得ないですよね。携帯キャリアを見ても分かると思いますが、ビジネスを成長させるためには、1人あたりからの収益(ARPU)を上げる必要があり、家電メーカーも機能を付加して単価を上げていくことが成長の源泉です。普通に考えるとあり得ないいことですが、あえていらないものは全部外しました。ここは、経営判断としてかなり悩んだところです。
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