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経験者が語る「完全仮想化ネットワークにおける障壁」――実用化に必要な「カネと人的リソース」石川温のスマホ業界新聞

楽天モバイルが構築する「完全仮想化ネットワーク」。同社は素晴らしいものだとしているが、なぜ今まで既存キャリアは採用してこなかったのだろうか。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 楽天がキャリアに新規参入する際の切り札としているのが完全仮想化ネットワークだ。今年のMWC19では世界に向けて完全仮想化ネットワークでのキャリア参入を大々的にアピール。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年5月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 楽天の三木谷浩史CEOは、事あるごとにメディアで完全仮想化ネットワークの話題を出し「世界最先端の技術で、初期投資を大幅に下げることができる。だから、通信料金も安く提供できる。世界で第4のキャリアはほとんどが成功している。これは携帯電話の民主化活動であり、アポロ計画だ」と胸を張ってきた。

 ただ、そんなに素晴らしい技術であれば、すでに世界的に採用が進んでいてもおかしくないはず。では、なぜ楽天が世界初になるのだろうか。

 実際、過去に完全仮想化ネットワークにチャレンジしたことにある業界関係者によれば「これは相当、難しい技術だ」という。

 コア側のネットワークを仮想化するのは多くのところでも採用されている。しかし、基地局側の仮想化がかなり大変だと関係者は言うのだ。

 「BBU(Base Band Unit)とRRU(Remote Radio Unit)の間が1対1、あるいは1対2で仮想化するのであれば簡単。ただ、これは実用化したうちに入らない。

 これが1対多接続となると相当、大変。5Gの世界だと1対350という数字にもなる。汎用機でもできるとは思うが、相当、手こずるのではないか。NTT局舎にすべて設備を入れていけばできるかもしれないが、それだと何のための仮想化なのか。コストが上がり、設備投資の問題が出てきてしまう」

 ただ、困難な技術であるのは間違いないが、実用化できないというわけではないという。中国のファーウェイやZTEであれば、こうした困難を克服できる実績を持っているとのことだ。

 世界中のキャリアから、ファーウェイが一目置かれるというのは、こうした卓越した技術力、人材、資金力を持っているからにほかならない。だからこそ、5G時代においても、世界中のキャリアからファーウェイは必要とされているし、一方でアメリカがファーウェイを脅威と感じるのも頷ける。

 かつて、チャレンジした業界関係者でさえ「相当、困難な技術だ」と本音を漏らす完全仮想化ネットワーク。1対Nの接続が難しいと言われる中、相当、自信を持っている楽天には既存キャリアにはなかった秘策があるのだろう。CTOであるタレック・アミン氏率いるインドチームの開発力は、既存キャリアやベンダーの知見を超えているのかもしれない。

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