Meituはなぜスマホ事業から撤退したのか? 中国の“セルフィー競争”を振り返る:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
中国のスマホメーカーMeituがスマートフォン事業から撤退することを発表。同社はインカメラを強化し、美しい自撮りができることを特徴に打ち出してきた。Meituの歩んだ道は中国スマートフォンのインカメラの歴史でもあるのだ。
ライバルとの差が縮まり、セルフィーだけでは勝負できなくなった
しかし他社スマートフォンの美顔機能も年々性能を高めていった。美顔機能と聞くと目を大きくしたり皮膚を白くしたりするだけ、と思っている人もいるだろう。Meituの美顔機能は初期のからそのような前世代的なものではなく、皮膚の質感を保ったまま美白効果を与えるなど仕上がりは自然なものだったのだ。しかしライバルメーカー、特にOPPOやVivoが美顔機能でMeituを追いかけ始めた。そしてHuaweiがセルフィーを意識したライン「Nova」を2016年に発表すると、中国メーカー同士の美顔機能の競い合いはピークを迎える。
OPPOはMeituがスマートフォン市場に参入した2013年に、カメラが前後に回転する「N1」を発売した。背面の1300万画素カメラを前面側に回転させることで、高画質なインカメラとしても使えるモデルだ。しかも回転角度は206度。これはN1本体を手に持ったとき、カメラを前に回転させるとちょうど自分の顔が正面に写る角度なのだ。このようにOPPOも古くからセルフィー機能には注目をしており、その後は「R」シリーズとしてセルフィー機能を強化した端末を投入していった。
OPPOのライバルであるVivoもセルフィー強化端末を開発し、中国のセルフィーフォン事情は「Meituがダントツにトップ、その2、3歩後をOPPOとVivoが追いかける」という状況が2014、2015年ごろの状況だった。ところがHuaweiが翌年セルフィー市場に参入したことで、美顔機能はこの3社だけが強みを発揮できるものではなくなってしまったのだ。
Meituは2017年に発表した「V6」でインカメラでもボケを効かせたセルフィー機能をアピール、2018年の「T8」では顔だけではなく全身をスリムに見せる美体形モードを搭載した。しかしこれらの機能はもはやMeituのスマートフォンが「顔」の美しさだけでは差別化できない製品になってしまったということを物語ってしまった。またMeituは海外展開も考えていたが、国ごとに求められる「美顔」機能は異なる。ソフトウェアレベルならば各国のプロファイルを用意できるだろうが、スマートフォンで国別に特化した美顔機能を搭載するのは難しかったのだろう。
気が付けば今やほとんどのスマートフォンに美顔機能は搭載されるようになっている。今でもMeituの美顔機能が最も美しい効果を得られることは間違いないだろうが、そこまでの機能を求めない消費者も多いだろう。さらに最近はインカメラの性能もより高まっており、ボケを効かせた「ポートレートモード」にも人気が集まっている。「自分の顔を美しくする」だけではなく「美しい景色に浮かび上がった自分の顔写真」もスマートフォンのインカメラには求められているのだ。
Meituが2019年1月に発売した「V7」は、プロセッサにシリーズ初のハイスペック品、Snapdragon 845を搭載。インカメラは2000万画素+1200万画素+800万画素のトリプル、アウトカメラは1200万画素+800万画素のデュアルで、アウトカメラより高性能というMeituらしい仕様になっている。そしてVシリーズの製品の特徴である、本革張りの高級感あふれる本体仕上げも継続されている。Meitu最後のモデルにふさわしく、同社の技術力を全てつぎ込んだ製品となった。
今後XiaomiからMeituブランドのスマートフォンが投入されるとしても、Xiaomiの幅広い製品ラインアップとの調整を考えると、ミッドレンジクラスのモデルとして出てくる可能性が高い。また美顔を含むインカメラ機能は、Xiaomiのメインラインの製品にも搭載されるはずだ。そうなるとXiaomiの全スマートフォンにおける、Meituブランドの製品の位置付けはあいまいなものになってしまう。
Xiaomiはゲーミングスマートフォンを開発するBlackSharkに出資し、同社のスマートフォンを自社で販売している。一方では低価格ラインの「RedMi」を分社化することも発表している。セルフィー機能だけでは差別化が難しく、「女子スマホ」という分野でDoovが失敗しているだけに、今後MeituのスマートフォンがXiaomiからどのような形態で出てくるのか気になるところだ。
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