楽天の強みは「決済のパーツがそろっていること」 楽天ペイメント中村社長に聞く:モバイル決済の裏側を聞く(3/4 ページ)
コード決済を中心に、モバイル決済サービスは乱立の様相を呈している。こうした中、モバイル決済業界では古参に当たる楽天は、どんな戦略を描いているのか。2019年4月1日に誕生した楽天ペイメントの中村晃一社長にお話を聞いた。
必ずしもスマホ決済である必要はない
実は、こうした電子マネーカードやポイントプログラムを組み合わせて地域振興を図っている例としては、「WAON」を推進するイオングループの活動がよく知られている。同社は「ご当地WAON」の名称で100種類以上の異なる券面を持ったWAONカードを発行しているが、これらを使って地元イオン店舗だけでなく、周辺の商店や自治体を巻き込んだ地域活性化を行い、WAONを一種の地域通貨的に利用している。今回の楽天によるEdy活用はまさにそれに近いものだが、これは前述の政府によるキャッシュレスビジョン実現に向けた重要な足掛かりになると筆者は考えている。
一般に「地方ほど高齢化でキャッシュレス化が遅れていて現金社会だ」と思っているかもしれない。だが実際には逆で、「地方ほど高齢化でキャッシュレスが進んでいて電子マネーが活用されている」という。「スーパーマーケットのお客さんというのは割と高齢者の方が多くて、実際にEdyのカードを店舗に導入して一番喜ばれるのはそういったお客さまなのです。
僕らが『キャッシュレス』といった瞬間に「じゃあ高齢の方はどうするんですか?」という反応がすぐに来るのですが、そのときは「高齢の方にほど使ってほしいサービスなんです」と答えるようにしています。高齢の方の反応を聞いていると『後ろに並ばれなくていい』という声があって、小銭を数えるのに時間がかかってそれが恥ずかしかったり、気にしたりする人が多いのが分かります。Edyのカードならそれが一切ないので、それこそが僕らがキャッシュレスを推進する1つの意味だと思うのです」(中村氏)
同様のことは、WAONを推進するイオンも話している。同社によれば、イオン北海道などのケースで、キャッシュレス比率が6割を超えているケースもあるとのことで、恐らく都会の平均よりも利用率が高いと筆者は考える。EdyとWAONともに「現金を渡してカウンターで電子マネーの都度チャージする行為が果たしてキャッシュレスなのか」という声をたびたび聞くが、キャッシュレス化の推進は決してスタイル的なものではなく、実を取る部分にあると考えている。少なくとも一連の行為は「会計のスムーズ化」に寄与しているわけで、これもまたキャッシュレスの1つの形かもしれない。
「楽天ペイメントを作ったときに、合わせてWebサイトも作成しなければいけなくて、幾つかデザイン案が上がってきていたのですが、そのうちの1つに『キャッシュレスというと近未来的な響きがあるから』ということで、そういう摩天楼がきらめくようなデザイン案が含まれていたわけです。そのときに『違うんだよと。街の商店街の魚屋さんやお花屋さんとか、そういう写真を撮ってきてほしい』とお願いするわけです。
確かに最新のテクノロジーを使ってサービスを提供しているのですが、テクノロジーに人々が合わせて生活態度を変えるのはいまひとつスムーズではないと思うんですよね。店員とお客の間の何気ないやりとりの時間こそが大事で、お釣りのやりとりに時間を割かれるよりは、むしろ親しみやすい便利なサービスで、何気ない会話に時間を使うことが基本線にあるべきなのです」(中村氏)
また同氏は「『スマホ決済』を推進する立場の会社の社長ではあるのですが、必ずしもスマホである必要はないと思います。楽天ではEdyとクレジットカードの両方をやっていますが、同じユーザーでも昼間はEdyを使って、夜はカードという使い分けをしている方はけっこういらっしゃいます」とも話す。あらゆる「決済ツール」を持つ同社ならではの意見ともいえるが、単一のテクノロジーにこだわってユーザーがそれに振り回されるよりは、生活シーンに合わせてうまく適切な手段を選んでほしいというわけだ。
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