楽天ペイが進める“完全キャッシュレス化”のメリットと課題とは? 今後は顔認証決済も可能に?:Rakuten Optimism(1/2 ページ)
Rakuten Optimismでは、楽天ペイが開発している新たな決済サービスを体験できる。顔認証決済では、スマホアプリからあらかじめ顔を登録して、タブレットなどから顔認証をすることで支払える。来店前にスマホであらかじめ注文しておくモバイルオーダーも体験した。
7月31日からパシフィコ横浜で開催されている「Rakuten Optimism 2019」にて、楽天ペイの新機能を体験コーナーが展示された。同イベントの体験型イベント&フェスティバル「フューチャー・ワールド」にある楽天ペイブースでは、今後同サービスに導入される顔認証決済機能やモバイルオーダーの仕組みを体験できる。なお、モバイルオーダーに関する展示を楽天社外に披露するのは今回が初となる。
顔認証を利用することでより素早い決済へ
楽天ペイが開発に取り組んでいる顔認証決済では、スマートフォンのアプリからあらかじめ自身の顔を登録し、4桁のPINコードを登録しておく。利用者は支払いの際に自身のスマートフォンを取り出して決済画面を提示する必要はなく、店舗側が用意するタブレット端末などで認証を行えばよい。
店舗を想定したブースではiPad Proが使用されており、店舗向けのアプリ画面が表示されている。その画面で購入者が「支払う」をタップするとインカメラが起動し、あらかじめ登録しておいた顔の情報と照らし合わせて認識される。正しく認証されればタブレットには「支払い完了」の画面が表示される。決済の記録は店舗向けのアプリケーションにリアルタイムに反映される。顔認証決済は実証実験の段階であり、一般向けに展開する時期は未定だ。
楽天ペイ事業本部 事業管理&オペレーション部 事業戦略グループ 事業戦略チームの石沢元樹氏は「顔認証では奥行きも認識しているので、顔写真や動画などでは認証されない。また、顔の認証だけでなく、スマートフォンのBluetooth信号を認識して、2段階で認証されるようにしており、双子の誤認証なども防げるようにしている」と話す。ブース展示のデモでは、実際にスマートフォンの画面に顔を表示して近づけても、認証できずに弾かれた。
ちなみに、スマートフォンを持参しなかった場合や、Bluetoothをオフにしている場合などには、顔認証が終了した段階で設定していた4桁のパスコード入力が求められる。
こうした顔認証を用いたシステムの開発は、楽天技術研究所が担う。2019年1月に開催された「SCビジネスフェア2019」でも同様の展示が行われたが、その時点では、Bluetoothを利用したダブルの認証はなかった。また、5月16日に東京ドームで開催されたプロ野球パ・リーグ公式戦「楽天スーパーナイター」では、一部座席に対し、チケットアプリと連動した顔認証により、チケットレス入場の実証実験が行われた。この実証実験では、ピンコードではなく覚えやすい選手名を伝えることでダブルチェックが行われた。
楽天技術研究所 リアリティドメイングループの蔡永男氏は、楽天スーパーナイターの際に得られた知見について、「入場管理の実証実験では、135人が参加し、うまく認識できなかったのは2人のみだった。化粧の有無などによって登録時と入場時で見た目が大きく変わる場合にはこういうことが起きる。認証のしきい値を下げることはできるが、その分セキュリティが弱まるので、バランスを整えるのが課題だった」と話す。
初披露のモバイルオーダーは受け取り時に合言葉を言う
ブースでは、スマートフォンの「楽天ペイ」アプリを利用した「モバイルオーダー」の体験コーナーも展示されており、これも試した。楽天社内にあるカフェで実証実験を行ってきたというが、一般向けに公開するのは今回が初だ。こちらもまだ実証実験段階であり、一般向けの提供時期は未定。
まず、楽天カフェの店舗を想定したQRコードをアプリで読み取ると、商品メニューが表示されるのでこれを選択する。その後、スライド操作で支払いを確定させる。通信の待ち時間には「頑張っています」などの文字が表示されるなど、利用者を和ませるUI(ユーザーインタフェース)の工夫も垣間見えた。
その後、アプリ画面にはオーダーした商品の準備状況が表示される。商品が出来上がると通知が届くので、レジの列に並ぶ必要はない。また、受け取り時に伝える合言葉(引き取りキーワード)としてここでは国名が表示されていた。筆者の場合には「モルディブ」と表示され、これをスタッフに伝えれば商品を受け取れる仕組みだった。
実際には、店舗でQRコードを読む段階は必要なく、Webサイトからも同様のことが行える。自宅などであらかじめ注文をしておき、完成時を見計らって商品を取りに行くといった流れに利用されると見込まれる。こうした仕組みは、既にスターバックスコーヒーやマクドナルドなどが一部店舗で先駆けて導入を試みているが、楽天もこのトレンドに追従する形といえる。
なお、楽天は2018年6月8日に「Curbside」という米国のベンチャー企業に出資している。同社は、店舗が顧客の位置情報から来店時刻を予測して商品を準備できるサービスを展開しており、今後楽天でもこうした技術を活用していくものと予想される。
楽天ペイ事業本部 加盟店営業第一部 エリア営業開発第三グループの土田智之氏は、こうした新しい決済機能を開発する意図について「決済を通じてお店の利便性を高められる。こうした機能を開発していることを知ってもらいたい」と話す。
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