京セラが5Gスマホ投入へ まずは米国から 「ローカル5G」にも注力
京セラの2020年3月期上期決算説明会で、谷本秀夫社長が5Gへの取り組みについて説明した。5G端末の引き合いが増えたことから、インフラ向け部品の需要が伸びている。京セラ自身も5G対応のスマートフォンを投入するという。
京セラが11月1日、2020年3月期上期の決算説明会を開催。谷本秀夫社長が、5Gへの取り組みについて説明した。
同社は5Gのインフラ向け部品として、光通信モジュール用のセラミックパッケージ、5G基地局用のセラミックフィルターなどを手掛けており、これら部品の需要が増加しつつあるという。セラミックフィルターはアンテナと並ぶ重要な部品。5Gの特定周波数を通過、遮断させる機能を備えており、広範囲をカバーするマクロセル基地局での利用が見込まれている。京セラとユー・イー・エルの合弁会社「京セラ宇部RFテック」がセラミックフィルター事業を展開し、グローバルの販売網を活用して拡大を図る。
谷本氏は「(5Gの)インフラが進むことは予想していたが、思った以上に5G携帯が来期動きそうだと感じている」と話し、その分、5Gインフラ向けの電子部品が第4四半期以降、想定よりも伸びるとみる。特に「5G携帯電話で活発に引き合いがあるのは米国向けが多い」そうで、京セラ自身も「来期(2020年4月以降)に(米国向けに)5Gスマートフォンを開発する」という。日本向けの5Gスマートフォン投入については「まだ具体的には話はないが、技術としては米国向けも日本向けも違いは多くないので、要求があれば作れる体制は整えたい」と述べるにとどめた。
上期の事業セグメント別を見ると、京セラの携帯電話事業を含む「コミュニケーション」は、売り上げが前年比10.5%増の1269億7700万円、利益が前年比662%増の49億9900万円。このコミュニケーション分野は「5四半期連続で黒字」(谷本氏)だといい、日本での携帯事業が好調を維持していることがうかがえる。同社の日本向けスマートフォンはミッドレンジモデルが中心だが、手軽に5Gを体験できるモデルで存在感を発揮することが期待される。
工場、オフィス、病院など限られたエリアで5Gネットワークを構築する「ローカル5G」にも京セラは取り組む。ローカル5Gは、キャリアが提供予定の5Gサービスとは異なるもの。キャリアのエリア展開が遅れる場所で先行して5Gを導入したり、セキュアかつ安定したネットワークを構築したりすることを目的に、制度化が進められている。周波数帯は4.5GHz帯と28GHz帯の利用を想定しており、2019年11月〜12月に免許の申請がスタートする予定。
京セラはローカル5Gのネットワーク構築を可能にするローカル5Gシステムと、5G接続が可能なデバイスを開発。これらを用いて、まずは自社の工場で実証実験をスタートする見込み。谷本氏は「当社が通信事業で培ってきた高度なアンテナ技術と、部品からシステムソリューションまでの幅広い知見を融合させることで、さまざまな5G関連のソリューションを展開する」と意気込みを語った。
関連記事
- 「TORQUEを出したらカシオさんが喜んでくれた」 京セラに聞く、タフネス携帯の歴史
京セラの高耐久ケータイとスマートフォンの累計集荷台数が1000万を突破した。京セラがタフネス携帯の開発を始めた経緯、各ブランドの違い、耐久性能にまつわる京セラならではの技術、ユーザー属性などについて聞いた。 - 京セラの高耐久携帯、世界で累計出荷1000万台を突破
京セラは、同社の高耐久ケータイとスマートフォンの世界累計出荷台数が1000万を突破した。「Dura」「TORQUE」シリーズなど北米を皮切りに世界各地で製品化し、11年で達成となった。国内最新モデル「TORQUE G04」は8月下旬に発売する予定。 - 「4G端末の方が安いと5Gは普及しない」「基地局整備は共同で」 4キャリアが5G戦略で議論
CEATEC 2019で開催された「5G Summit」では、4キャリアの社長や副社長を交えたトークセッションを実施。5Gで変わるビジネスモデルや基地局整備のスタンスなどが語られた。5G端末を普及させるためにはまだ議論が必要、との意見も出た。 - 2020年にはミッドレンジの5Gスマホも登場? Qualcommが5Gの技術動向を説明
Qualcommは米サンディエゴにある同社の本社で「The Future of 5G Workshop」を開催。5Gの現状とユースケースを中心としたこれからの展望について説明した。カギを握るのがミリ波。同社はミリ波に対応したアンテナモジュールを開発し、スマホでミリ波を利用できる技術を確立した。 - ドコモが「5Gプレサービス」対応端末を披露 スマホ3機種とルーター1機種
NTTドコモが、9月20日から開始する5Gプレサービス用のスマートフォンとルーターを披露した。一部を除き「Sub-6」「ミリ波」両方の通信に対応するが、あくまでもプレサービス用という位置付けで市販される予定はない。【追記】
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.