ペン操作で驚くほど簡単に使えるiPad版「Illustrator」 課題は生産性にあり
ベクターグラフィック編集ソフト「Adobe Illustrator」が、iPadでも使えるようになる。米ロサンゼルスで開催中のクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」で発表された。イベント会場では早速デモ版に触れることができ、製品担当者に話を聞くこともできた。
デザイナー御用達のベクターグラフィック編集ソフト「Adobe Illustrator」が、iPadでも使えるようになる。米ロサンゼルスで開催中のクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」で発表されたもので、リリースは2020年の予定。イベント会場では早速デモ版に触れることができ、製品担当者に話を聞くこともできた。
Adobe IllustratorのiPad版では、デスクトップ版と同様にベクターグラフィックが扱えるが、その操作性はかなりシンプルかつApple Pencilに最適化されている。左側にツール、右側にレイヤーなどのパネルという構造はデスクトップ版と同じで、選択、ペン、鉛筆、長方形などのツールを選んでオブジェクトが作成できる。
iPadらしい機能として、カメラで手書きした下書きを取り込み、自動でトレースしてオブジェクト化が簡単にできる他、描いたオブジェクトを放射線状やパターン、鏡状に簡単にリピートできる機能も備わっている。Apple Pencilを使うことで初心者でも簡単にベクターグラフィックが扱え、楽しくデザインができるといった印象だ。
Illustrator iPad版を担当するAdobe デジタルメディア デザイン シニア ディレクターのエリック・スノーデン氏(左)と、同デザイン製品シニアプロダクトマネジャーのウェイン・ホン氏(右)
Adobe デジタルメディア デザイン シニア ディレクターのエリック・スノーデン氏によれば、Illustrator iPad版では、既にリリースされたPhotoshop iPad版と同様にクラウドを通じてデスクトップ版と作業の共有が可能で、デスクトップ版で作成したファイルがiPad版でもシームレスに扱えるようになるという。Photoshop同様、iPad版のリリースに合わせて、デスクトップ版もクラウドへのファイル保存に対応するようだ。
このタイミングでのiPad版の提供について、デザイン製品シニアプロダクトマネジャーのウェイン・ホン氏は「Illustratorは多機能で非常にパワフルなソフトウェアであり、iPadでレンダリングするにはハードウェアのパワーが必要になる。またApple Pencilによってフリーハンドでのアートワーク作成が可能にったことも大きな理由の1つ」と説明。最近はiOSでAdobe無料フォントが利用可能となったが、これによって「リッチなタイポグラフィーが扱えるようになるなど、環境が整ったことも大きい」という。
前述の通りデモを試した限りでは、操作がシンプルで初心者にも無理なく扱えそうなiPad版だが、目標としているのは「プロのクリエイターがデスクトップ版と同じことを、iPadでもできるようにすることだ」とスノーデン氏。現在Photoshop iPad版ではデスクトップ版のフル機能は使えないが、今後アップデートで対応予定となっている。
Illustrator iPad版も同様に、最初からフル機能搭載とはいかないものの、新しいユーザーへの間口を広げると同時に、「プロフェッショナルに、使ってもらえるものにしていきたい」という。
そのために重要になってくるのが「ショートカット」だ。デスクトップ版のユーザーの中にはキーボードのショートカットを用いて、まるでピアノを弾くかのようにIllustratorを使いこなしている人も多いが、それと同じ生産性を「キーボードがないiPadでどう実現するか」は大きな課題だという。
Adobe FrescoやPhotoshop iPad版では、タッチの仕方によって機能を切り替える、つまり、タッチをShiftキーやコマンドキー(コントロールキー)のように活用する「タッチショートカット」が採用されているが、Illustrator iPad版でも同様の機能が用いられることになりそうだ。ただし「デスクトップ版をそのままコピーするのではなく、あくまでもiPadらしく、楽しく使えることが大切」とスノーデン氏は話している。
(取材協力:アドビ システムズ)
関連記事
- 「Adobe Illustrator」にiPad版登場 2020年リリース予定
Photoshopに続き、「Adobe Illustrator」にiPad版が登場する。「Adobe MAX 2019」に合わせてβ(ベータ)テストを開始し、2020年内に製品版をリリースする予定だ。 - iPad版「Photoshop」が製品版に 「Fresco」(旧・Project Gemini)はWindows版登場
「Adobe MAX 2018」でβ(ベータ)リリースされたiPad版「Photoshop」が、製品版に移行。iPadにUIを最適しつつもデスクトップ版とおおむね同等の使い勝手を実現した。Photoshopと連携するペイントアプリ「Fresco」にはWindows版が登場する。 - 「Adobe Creative Cloud」が2020年版に クラウド対応を強化 機能追加やパフォーマンス改善も実施
Adobe(アドビ)の有料サブスクリプションサービス「Creative Cloud」の各種アプリが2020年版に。新機能の追加はもちろん、従来からある機能の改善も図っている。 - あのPhotoshopがカメラアプリになった! 「Adobe Photoshop Camera」登場
AdobeがiOS、Android向けのカメラアプリ「Adobe Photoshop Camera」を発表。同社のAIプラットフォーム「Adobe Sensei」を用いて、ポートレート、風景、自撮り、食べ物といったシーンごとに、最適なダイナミックレンジや色調を調整する。2020年の提供を予定している。 - とにかくすごい! 「Lightroom for iPhone」のHDR撮影を試してみる【追記あり】
Adobeの写真アプリ「Adobe Photoshop Lightroom」にモバイル版があるのはご存じだろうか? そのモバイル版に、2017年3月のバージョンアップでHDR撮影機能が実装された。これがとにかくすごいので、紹介するのである。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.