エリアだけでなく料金にも不安要素 3キャリア社長が「楽天モバイル」を冷ややかに見る理由:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
楽天モバイルは、10月からのサービスインを事実上見送り、5000人のユーザーを対象にした「無料サポータープログラム」を開始。三木谷浩史社長は「高品質のネットワークだ」と自信を見せるが、大手3社の幹部は冷ややかに見る。エリアだけでなく、料金の面でも不安要素が残る。
もろ刃の剣となるauローミング、低料金は本当に打ち出せるのか
それでも、破格の料金を打ち出せるのであれば、勝機はあるかもしれない。ただ、KDDIの高橋氏は、こうしたメディアの論調にも懐疑的な見方を示す。「楽天はMVNOとして既に参入しているが、そこからMNOに移行してくると考えると、むちゃくちゃな料金をつけると採算が悪化してしまう」というのが、その理由だ。楽天モバイルのサービス開始が事実上延期されたことで値下げ圧力が弱まったというより、もともと値下げ圧力は感じていなかったというのが高橋氏の見解だ。
宮内氏は「どんな料金を出してくるのか分からない」と前置きしつつも、「微修正で対応できる」と自信をのぞかせる。「ソフトバンクはギガモンスター+をやっているが、これが非常に強い商品に育ってきている。10GB以下であれば、Y!mobileが順調。楽天がどういう値段を出してきても、(LINEモバイルを含めた)3つのブランドで戦えると思っている」と語ったように、現行の料金プランで十分対抗できるとみているようだ。
三木谷氏は「他社がまねできない料金」を実現できると語っていたが、auローミングを利用しているうちは、構造的にその難易度が大きく上がる。KDDI高橋氏はローミングの料金には「固定部分と従量部分がある」と言い、トラフィックに応じて楽天からKDDIへの支払いが発生するという。KDDIが公開したユーザー向けの約款によると、その金額は1GBあたり約500円。KDDI広報部は、この金額がそのまま楽天から支払われるわけではないとするが、ある関係者によると、差分は「誤差」に近いという。
無料サポータープログラムは100GBのプランとして提供されているが、仮に全ての容量をauエリアで使ってしまうと、ローミング料金は5万円に跳ね上がる。10GBでも5000円。現状では、首都圏でも「23区から外に出ると、ほぼうちのネットワークになる」(高橋氏)というように、全国区で見れば、auに接続するエリアの方が広い。ビル内などの基地局展開にも課題があり、「かなり整備しないと、室内浸透が厳しくなると感じている」(同)という。
楽天モバイルのエリアも徐々に広がっていくため、ローミング料の支払いは「当初の予定よりかなり抑えられる」(三木谷氏)というが、従量制である以上、“容量無制限”などの大胆な料金プランを打ち出しづらい。一方で、auローミングを別建てにしてしまうと、魅力は半減してしまう。3GBで1500円程度であればauローミングを含んだ形の料金にはできそうだが、既存のMVNOと大きな差がなく、インパクトは弱くなる。
極端な言い方かもしれないが、auのネットワークに頼っているうちは、KDDIに料金設定権の一部を握られているようなものだ。そんな楽天モバイルの懐事情を踏まえると、高橋氏が「むちゃくちゃな料金で参入してくるとは思っていなかった」と語るのも納得できる。楽天モバイルが自社のネットワーク整備を急がなければならない理由の一端も、ここにある。
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