ドコモが「Amazonプライム1年間無料」で見据える先 ECを強化し、5Gへの布石に:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
ドコモが、「ギガホ」「ギガライト」ユーザー向けにAmazonプライムを1年間無料とするキャンペーンを実施する。ドコモがこのタイミングでAmazonとの関係性を深めた背景には、競争環境の変化がある。Eコマースサービスが手薄だったドコモならではの事情も、Amazonと手を組んだ理由の1つといえる。
ドコモとAmazonは、12月1日から「ドコモのプランについてくるAmazonプライム」キャンペーンを実施する。内容はシンプルで、新料金プランの「ギガホ」に契約しているユーザーが申し込むと、Amazonプライムが1年間無料になるというものだ。合わせて「スタートアップキャンペーン」と銘打ち、「ギガライト」もこのキャンペーンの対象にする。キャンペーンが2つに分かれていて少々複雑に聞こえるかもしれないが、「新料金プランならAmazonプライムが1年無料になる」と言えば理解しやすいだろう。
Amazonプライムの料金は、年間4900円(税込み)。新規契約などの縛りがないため、もともとAmazonプライムを利用していた人にとっては事実上の値下げになる。ドコモがこのタイミングでAmazonとの関係性を深めた背景には、競争環境の変化がある。Eコマースサービスが手薄だったドコモならではの事情も、Amazonと手を組んだ理由の1つといえる。2020年春の開始が迫る、5G向け料金プランの布石という意味合いもありそうだ。
必然だったAmazonとの連携強化、電気通信事業法改正も影響
国内最大手のドコモと、「GAFA」の一角であるAmazonが手を組むのは、意外なことに思えるかもしれない。しかしドコモの吉澤和弘社長が「Amazonと連携したのは自然な流れだった」と語っていたように、2社の歴史を踏まえると、このキャンペーンはむしろ必然だったと捉えることができる。ドコモとAmazonが急接近したのは、2012年のこと。Kindleにドコモの回線を利用したのがその“なれそめ”だ。
他の協業先にイコールフッティングを求められる恐れがあったため、接続先をAmazonのサーバに限定せざるをえなくなったエピソードは、ドコモ側が禁止行為規制の緩和を求めるなかで、たびたび語られている。法の壁がなければ、実現した以上に大々的な提携をしたかったというわけだ。逆にドコモは、自社サービスのサーバにAWS(Amazon Web Service)を利用。16年5月にはドコモブランドのスマートフォンに、Amazonアプリのプリインストールを開始した。
さらに、17年6月にはAmazon側が決済サービスの「ドコモ払い」(当時)に対応。18年12月には「d払い」となり、大々的な還元を行ってきた。全ネットの店舗も適用されるキャンペーンだけでなく、Amazon専用のキャンペーンもたびたび行うなど、決済分野で深く連携してきた結果、「ネット決済の中で使っていただいている額は(Amazonが)一番多い」(同)と、Amazonはd払い加盟店の“顔”になりつつあった。20年3月31日まで、キャンペーン対象者がAmazonでd払いを使った際につくdポイントが5倍になる取り組みも実施する。
一方で、「ドコモの契約者でも、Amazonプライムを使っていなかった方がいた」(同)。既存の利用者も、新料金プランにするだけで4900円が1年無料になるのはお得感がある。料金プランの移行に弾みをつけたかったドコモは、「ギガホの魅力を高め、新たな価値をお客さまにご提供するため、Amazonと取り組んでいくことになった」(同)というわけだ。では、なぜこのタイミングで連携を発表したのか。背景には、電気通信事業法の改正がある。
吉澤氏は「端末値引きという競争ではなく、魅力的なサービスを付加してさらに料金プランを磨き上げていく必要がある」と語るが、10月1日以降、端末割引の上限が省令で2万円に制限された。各社のエリアに大きな差がなくなりつつある中、キャリアは料金プランでの競争を余儀なくされている。とはいえ、単純な値下げを繰り返すのには限界もある。同時に収益性を高めなければならないのも、キャリアにとっての課題だ。お得感を出しつつも、料金水準は変えない――サービスをバンドルするのは、このトレードオフを解決するための王道だ。
同様にドコモは、12月1日からとウォルト・ディズニー・ジャパンと共同で運営する「Disney DELUXE」を、新料金プランの契約者に1年間、無料で提供する。吉澤氏によると、「対象者は必ずしも一致していないが、新しい料金プランの魅力を高めるという取り組みという意味では、考え方は同じ」だという。
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