「MNOにできないことをやる」 成長が鈍化するMVNO市場でmineoが出した答え:MVNOに聞く(3/3 ページ)
オプテージが「mineo」向けに、混雑時間帯の帯域を譲ることで特典を得られる「ゆずるね。」と、高速通信をオフにした際の通信速度が200kbpsから500kbpsに上る「パケット放題」を導入する。MVNOの成長が鈍化する中で、mineoはどう対応するのか。新サービスの生まれた背景や狙いとともに、今後の展開を聞いた。
キャリアの値下げが契約数の鈍化に影響
―― これはmineoに限った話ではありませんが、契約者の伸びは鈍化しています。特に影響が大きかったのは、どのようなことだとお考えですか。
太田氏 キャリア(の料金値下げ)ではないかと思っています。MVNOの契約者数のデータが発表されるたびに成長が鈍化しているのは事実で、キャリアが練ったプランを出してきている影響は大きいと思います。今後は、MNOにできない独自性を、いかに打ち出していくかがカギになると考えています。
―― そういう意味で言うと、今回のサービスはMNOがやらないものですね。MNOとしては、これから5Gが始まるので、むしろ、もっとジャブジャブ帯域を使ってほしいでしょうし(笑)。逆に、他を見ると、以前より個性的な料金プランが減ってしまった印象もあります。みんなY!mobileのよう、というか。
太田氏 逆に合わせにいっている感はあります。比較表としてまとめられたときのことを考えているのではないでしょうか。ここには功罪あって、確かに分かりやすさはうたえますが、3段階程度の料金で本当に分かりやすいのか? と自問することもあります。
福留氏 独自の価値と、シンプルで分かりやすく、手頃な料金体系であることは、両方追い求めていきたいと考えています。
シニアに向けたサポートサービスを検討中
―― シンプルさという意味で言うと、MVNOはサービス内容もシンプルにしてその分を通信費に還元してきた側面があると思います。一方で、最近は国民生活センターがシニアのクレームが増加したとして、注意喚起しています。ある意味相反することですが、これについてはどうお考えですか。
福留氏 mineoのシニアユーザーは、全体の割合の中の1割程度です。ただ、ここはもっともっと増やしていきたいという思いがあります。例えば、シニアの方々に分かりやすいオールインワンのメニューが何かできないか。簡単にお使いいただける端末と保証サービス、加入後のサポートをワンセットにしたものを提供できないか、検討しています。そういった中で、より丁寧な対応を心掛けていければと考えています。現在検討中で、3月ぐらいにはリリースしたいですね。
―― ID、パスワードを含めた初期設定のサポートは、対面でないと難しい側面もあります。
太田氏 店舗がない(少ない)ので、そこはどうしても遠隔になってしまうところです。
福留氏 一方で、簡単に使える端末が欲しいという声もいただいています。12月には富士通の「arrows M05」を入れさせていただきました。
端末販売の半分はiPhone
―― その端末ですが、mineoはSIMフリーのiPhoneも取り扱っています。こちらの売れ行きはいかがですか。
福留氏 引き続き堅調で、端末販売の半分はiPhoneです。
―― それは比率が高いですね。
福留氏 もともとmineoは、ユーザーの6割がiPhoneでした。通常のMVNOだと、Androidユーザーの方が多いのではないでしょうか。最近は買い替え需要も高まっていて、iPhoneを購入された方の約8割が既存の契約者です。
太田氏 端末そのままでお使いいただけるとうたっていたとき、KDDIから移ってこられた方が多く、その方々が買い替えのタイミングを迎えているからです。
福留氏 ちなみに、回線と端末をセットでお求めになる方は、全体の1割ぐらいです。9割は、今お使いの端末そのままでmineoを契約されています。
―― SIMのみが多いですね。
福留氏 端末の価格訴求をどのぐらいしているのか、というのも関係していると思います。
―― 今後の目標は10%のシェアを獲得することとおっしゃっていましたが、MM総研のデータを見ると、まだ1.7%ほど足りません。ここはどうやって上げていくかを教えてください。
福留氏 これまで申し上げてきたように、独自価値の追求とベース価値の追求をやっていきます。この2本立てで、シェアをきっちり固めていくことが重要になります。共創戦略の深化や独自価値の追求によって、単独指名でmineoをお求めになる方が増えていることが、数値として見えてきました。ここは引き続き推し進めていき、単独指名の方を増やしていきます。
一方で、独自価値は口コミに依存するところが大きく、なかなか伝わりづらいのも事実です。お客さまがコミュニティーを通じて広げてくださる側面はありますが、それだけだとなかなか難しい。ベース価値も追求し、キャンペーンやパケット放題などで広げていく必要があります。この両面を進めていき、シェア10%を目指したいと考えています。
―― 間もなく、MNOが5Gサービスを始めます。MVNOとして、ここにはどう対応していく予定でしょうか。
福留氏 これまでも3Gが4Gに変り、ガラケーがスマホに変わったように、技術の進展は世の常です。5G時代になれば、当然新しいユースケースも出てくるでしょう。当然、ここにも対応していきたいと考えています。ただし、まだ卸側の料金や技術仕様が公開されていませんし、われわれにもそれなりの設備投資がかかる可能性もあります。4Gと5Gのパケットを区別できるようにするなど、そういったところの対応も必要になります。全体を見た上で、いつ開始するのかは検討していきたいと考えています。
料金設計も、5G時代は高速、大容量が当たり前になり、われわれが手掛けてきた小容量や従量制といったサービスメニューが立ち行かなくなる可能性もあります。一方で、お客さま目線に立つと、必要な分を必要なだけ、手ごろな料金で使いたいというニーズは今後も必ずあると思っています。そのようなサービスを、どう提供していくかが重要になります。パケット放題もそうですが、一定の速度以下で使い放題になるというものは、5G時代に向けた試金石の1つです。(MNOの)値段が上がる可能性もあるため、そうなればむしろMVNOにとっては追い風になるのではないでしょうか。
取材を終えて:サービスで独自性を出すのがmineo流
mineoの投入する「ゆずるね。」や「パケット放題」は、限られた帯域をやりくりしなければならないMVNOらしいサービスだ。前者はインセンティブを与え、ユーザーが自主的に帯域を節約することを促しているところが新しい。既に導入されているエココースが、節約による料金面での優遇なら、「ゆずるね。」は特典での優遇といえる。どれほどの効果があるのかは未知数だが、MVNOでなければ出てこなかった発想のサービスだと評価できる。
後者のパケット放題も、速度を絞ってMNOより安価に容量無制限のサービスを提供するという点では、実にMVNOらしい。5G時代に定額無制限の料金プランが一般化すれば、MNOとMVNOの比較軸が、容量から速度に移る可能性もある。その意味では、福留氏が語っていたように、5G時代に向けての布石ともいえそうだ。IIJやNTTコミュニケーションズがフルMVNOやeSIMなどの技術面で差別化しようとしている中、サービスで独自性を出しているところにも、mineoらしさを感じた。
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