5Gの課題は「ビジネスモデル」と「端末価格」にあり 4キャリアがディスカッション:5G国際シンポジウム2020(3/3 ページ)
2020年春の商用サービス開始を控えた5G。ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が、5Gのサービスや課題について議論。5Gの課題はビジネスモデルの確立、周波数の性質、端末の価格にあるという。
周波数と端末価格も5Gの課題
5Gの課題としては、一般的に、割引が制限されたことで5Gスマホの浸透が阻害されると予想されること、5Gに割り当てられた周波数の性質、基地局インフラの共用などが挙げられている。
KDDI小西氏は、「5Gの魅力でもある高い周波数は、なかなか飛ばないというデメリットもある。特に28GHz帯は飛ばないだけでなく、遮蔽(しゃへい)に対しても非常に弱い。人がいると電波の強さが100分の1くらい落ちることもある。建物の中へ浸透、建物内から外への浸透も非常に難しい。カバレッジエリアをいかに作っていくかは課題」と語った。また地方を中心に、ソフトバンクと基地局設備を共有する件について、低コストでカバレッジを広げ、コストが下がった分をユーザーに還元すべきだという考えを述べた。
ソフトバンクの野田氏は、3.7GHz帯の扱いの難しさを挙げた。
「衛星事業者と一緒に使うバンドになって、そこと干渉協議をした上で、干渉しないような設置条件で設置していかなくてはいけないが、そこがかなり難しい。都市部に近いところでも衛星需要がある。事業者一丸となって、干渉の計算式を実態に合わせて見直すなどの取り組みが必要。個人的な意見だが、例えば衛星受信点の周りに高い壁を建設するといったことができたら、日本の5Gは3.7GHz帯で充実すると思う。これは米国も重たい課題として抱えている」
楽天モバイルの佐藤氏は、5Gの課題としてデバイスを挙げた。「価格が高いのは問題。違約金が下がって長期契約がなくなっているが、解約率は下がるという逆の現象が起きている。それは分離プランになったことで、端末代が高くなったように見えているから。デバイスをどういう形で提供するかは課題」
ドコモの中村氏は、端末の価格について「出る予定の5G端末は、基本的には思い切りハイエンドがメイン。5Gのミドルレンジ、中価格帯のバリエを増やすことも重要」とし、佐藤氏同様、5G端末を浸透させることを課題として挙げた。また、世代が変わって最初の頃の端末はバッテリー持ちが悪いことが多いが、5Gの場合も「やはりその傾向がある」と語っている。
産業界からアップリンクの高速化の要望が高いという。「低コストで抜本的に上げるのが難しい。TD-LTEは上り下りの比率を自由に変えられるという話が昔からあったが、結果的に全然変えられない状態。実際のところ、フレキシビリティは本当にない。全く別な周波数を持ってくるしかない」(中村氏)
最近、注目度が上がっているローカル5Gについては、各社とも、無線の知見を提供できるとしている。
ドコモの中村氏は「実証実験をやってきて、いわゆるプライベートネットワークのニーズの高さは肌で感じた」という。ローカル5Gでなくともプライベートネットワークの構築は可能で、「パブリックネットワークが使えるところでプライベートネットワークを作る方が安上がりになる可能性もある」という。
「ネットワークスライシングじゃなきゃいけないこともない。もっと広く、プライベートネットワークとして、それをどうするかが、これからの日本、さらに世界の通信社会、新たなビジネス、あらゆる無線化につながると思う」
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