キャリアのMVNO運営に新ルール 基地局整備を怠ったら他キャリアからの回線貸し出しはNGに
総務省が5月15日、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を改定した。キャリアやその関係法人がMVNOを運営する際に、公正競争上の弊害を引き起こした場合に、総務大臣による業務改善命令に対象となる。その一例として、収益性の低い地域で基地局整備を怠ることを挙げている。
総務省が5月15日、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を改定した。同ガイドラインは、モバイル通信分野の競争促進を図ることで多様で低廉なサービスを提供し、電波の公平な利用を確保するために策定したもの。
改定のポイントは主に2つある。1つは、MVNOにeSIMサービスを提供可能にするよう、リモートSIMプロビジョニング機能を「開放を促進すべき機能」に位置付けたこと。
2つ目が、キャリア(MNO)やその関係法人がMVNOを運営する際に、公正競争上の弊害を引き起こした場合に、総務大臣による業務改善命令に対象となること。その一例として、収益性の低い地域で、総務大臣の認定を受けた開設計画通りの基地局整備を怠ることを挙げている。
前社の基地局整備については、例えば収益性の低い地域で、キャリアA社の基地局整備が、A社が携わるMVNOに提供するキャリアB社よりも著しく劣っている場合、業務改善命令の対象となり得る。つまり「収益性が低いから」という理由で基地局整備を怠りながらも、MVNOという形態を借りて他キャリアに頼っているような状態を指す。
MVNOを兼営するキャリアが、収益性の低い地域の基地局整備を怠り、接続先MVNOの利益を不当に害する恐れがあると認められた場合、キャリアは「接続応諾義務」の例外に該当する(=接続に応じなくてもよい)としている。
他キャリアのネットワークを借りて、キャリア陣営がMVNO事業を行うことは法律上禁止されていないが、キャリアは「自らネットワークを構築して事業展開を図ることが原則である」とガイドラインに明記されている。
また、MVNO運営を通じて得た他キャリアに関する情報を活用して対抗サービスを提供したり営業活動をしたりすることも、公正競争を阻害するとガイドラインでは明記されている。例えば、5Gに関する他キャリアの技術をMVNO運営を通じて知り、それを自社のキャリアサービスに使うといったケースが該当する。
KDDI傘下のビッグローブが提供する「BIGLOBEモバイル」はドコモ回線を、ソフトバンク傘下の「LINEモバイル」はドコモ回線とKDDI回線を借りており、いわば競合キャリアのネットワークをMVNOで利用している。また、楽天モバイルのMVNOサービスはドコモ回線を利用しており、新規受付は停止しているが、サービスの終了時期は未定となっている。
競合キャリアのネットワークを使ったMVNO運営についてはドコモ側が警戒しており、吉澤和弘社長が「MNOとMVNOを並行させて運営するのは違うと思う」と苦言を呈したり、総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」でもドコモ側が「公正競争を阻害する」とする旨の意見を出したりしている。
電波を有効利用せずに基地局整備を怠ったり、情報が他キャリアへ流れたりすることは、ドコモ側も危惧していたことで、こうした内容が今回の改正ガイドラインに盛り込まれたといえる。
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