なぜ5G対応のiPhoneはまだ登場しないのか? カギを握るモデムチップの存在:5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)
5G対応が進んでいないアップル。Androidにスマートフォンを供給する主要各社はすでに5G製品を発表しており、このままではシェアを奪われかねない。その理由はモデムチップにあった。
2020年に5G対応iPhoneは登場するのか
そうした経緯からまだ5Gに対応していないと考えられるiPhoneなのだが、では一体いつ5G対応iPhoneが登場するのかと考えた場合、やはり2020年のフラグシップモデルでの対応が有力なのではないだろうか。
理由は、他の主要メーカーがほぼ5Gスマートフォンを投入しているためだ。2020年は日本以外にも、フランスやカナダ、台湾など幾つかの国と地域で5Gの商用サービスが開始、あるいは開始が予定されており、先行する国々も含めれば、Appleが得意とする主要な先進国は、ほぼ何らかの形で5Gのサービスが始まることとなる。
それだけに、これ以上5Gへの対応が遅れれば、iPhoneのシェア低下につながってくる恐れがある。犬猿の仲だったQualcommと和解するという大きな判断を下したことを考えれば、やはり2020年には5G対応iPhoneが投入されるとみるのが自然だろう。
例年通りであればAppleは9月にiPhoneの新機種を投入していることから、5G対応iPhoneの発表もそのタイミングになると考えられる。ただ新型コロナウイルスの影響で製造業は小さからず大きな影響を受けているだけに、発表・発売のタイミングがずれ込む可能性は十分あり得る。
Appleのプレスリリースより。2019年のフラグシップモデル「iPhone 11」シリーズを発表したのも9月だったことから、5G対応iPhoneの発表も2020年の9月が予想されるが、新型コロナウイルスの影響を受け、スケジュールが大幅に変わる可能性もある
一方、Appleが自ら開発した5Gモデムチップを搭載したiPhoneが登場するのは、より先のこととなるだろう。Intelが開発に手間取ったことを考えれば、順調に開発が進んだとしてもiPhoneへの実装までには数年はかかると考えられるが、Appleが5Gモデムチップを自社開発できるようになれば、他社の動向に振り回されることもなくなるだけに、その開発動向は、スマートフォンの競争動向を見据える上でも、重要なポイントになるといえそうだ。
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