端末販売で大打撃を受けたKDDI 低価格5GスマホとiPhoneが突破口に?:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
KDDIの通信事業は、コロナ禍の中でも需要が増していることもあり、業績自体は堅調だった。一方で端末販売は大打撃を受けた。電気通信事業法の改正も影響を及ぼした。特に第1四半期は5Gの立ち上げ直後で、インフラの移行計画にも影響を与えかねない。
コロナ禍に見舞われた2020年度の第1四半期。キャリア4社の中でいち早く決算を発表したKDDIだが、通信事業はむしろ需要が増していることもあり、業績自体は堅調だった。一方で、大打撃を受けた分野もある。それが、端末販売だ。特に第1四半期は5Gの立ち上げ直後で、インフラの移行計画にも影響を与えかねない。端末販売の立て直しは急務といえそうだ。その詳細を見ていきたい。
コロナ禍の影響は軽微だった第1四半期決算、電気やテレワーク需要は伸びる
生活に欠かせないインフラということもあって、通信事業はコロナ禍の影響を受けづらい。毎月の料金をユーザーから受け取れる上に、外出自粛の状態でも一定のニーズがあるからだ。むしろ、リモートワークやオンライン授業などで、通信そのものに対するニーズは増えたといえるかもしれない。KDDIの第1四半期決算も、それを証明する。
売上高は1兆2427億円で、前年度の1兆2461億円からはわずかに落ちて減収になっているものの、営業利益は2558億円から2907億円へと増加。第1四半期は、前年同期比で減収増益になった。業績予想については据え置かれている。同じインフラでも鉄道・航空など、他分野で会社とは1000億円を超える大幅な赤字を出している会社も多いが、そうした会社と比べ、通信はコロナ禍に強いといえそうだ。
コロナ禍の影響で、むしろ伸びている分野もある。コンシューマー分野では、外出自粛の結果、電気の使用量が大きく増えた結果、「auでんき」のARPA(1アカウントあたりの平均売り上げ)が640円に伸長。19年度の350円、20年度の490円を上回る伸びを記録し、営業利益の増加にも貢献した。
法人事業では、テレワーク需要が伸び、クラウドアプリ、リモートアクセス、ビデオ会議の申し込み数が、それぞれ5倍、4倍、8倍に増加したという。KDDIまとめてオフィスの新規契約数も、スマートフォンが1.6倍、タブレットが1.8倍、モバイルルーターが1.9倍と、テレワーク需要を取り込むことができた。上記のauでんきをはじめとしたライフデザイン分野と法人分野の伸びは、営業利益増の要因のうち、206億円に上るという。
端末販売台数45万台減少の衝撃、電気通信事業法改正も打撃に
足元の業績は堅調だったKDDIだが、不安要素もある。コロナ禍で、5Gへの移行に遅れが出ているからだ。深刻なのが、端末販売台数。2019年度の第1四半期が195万台だったのに対し、今期は150万台と45万台もの減少に見舞われた。KDDIの高橋誠社長もこの状況に危機感をあらわにしながら、次のように語った。
「販売コストの減少で241億円の増益になったが、端末販売台数は前値同期比で45万台減少している。5Gへの移行を進めていかなければならない中、これが予定通りに進んでいない。少々焦りを感じている」
端末販売台数が大幅に減少した結果、販売手数料も減ったため、増益要因になった一方で、5Gの立ち上がりがつまずいてしまったというわけだ。高橋氏は、「3月からかなり力を入れてやっていこうと思っていたが、その出ばなをくじかれてしまった」と語る。新型コロナウイルス感染症への警戒が広がる中、3月、4月に予定されていたイベントは全て中止になり、auショップも業務を大幅に縮小。ユーザーが端末を購入する機会が奪われてしまった格好だ。オンラインでの販売も、ショップでの落ち込みをカバーできなかった。
5G開始当初の端末はハイエンドが多かったことも、要因の1つといえる。2019年10月に電気通信事業法が改正され、ハイエンド端末の売れ行きにブレーキがかかってしまったからだ。高橋氏によると、販売台数減の影響は「コロナの拡大が一番大きかったが、事業法改正の影響がなかったかというとウソになる」といい、複合的な要因であることがうかがえる。
実際、販売した端末の単価も低下しているようだ。代表取締役執行役員副社長の村本伸一氏によると、「第1四半期はiPhone SEがシェアを占めていたが、低単価のため、前年同期比で端末の単価は下がっている」という。ご存じの通り、iPhone SEは4G端末。KDDIは、5Gの契約者数や5G端末の比率を明かしていないが、ユーザーが低価格な4G端末に流れている様子もうかがえる。
コンシューマーが増えなければ、インフラに対する投資が無駄になってしまいかねない。5Gの上で展開しようとしていた各種サービスも広がりを欠いてしまうと、悪循環に陥る恐れもある。「諸外国と比べ、展開スピードが後手に回っている。よく頑張らないといといけない」と危機感をのぞかせるのは、そのためだ。
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