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インタビュー

異例の早さでキャリア参入 Xiaomiスマホがauに採用された理由は? FeliCaへの対応は?(1/2 ページ)

2019年12月に日本参入を果たしたXiaomiは、キャリアとの強力にも積極的だ。auからミッドレンジの5Gスマートフォン「Mi 10 Lite 5G」が9月4日に発売。なぜ日本参入から早期にキャリアからの発売が実現できたのか。東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏に聞いた。

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 2019年12月に日本参入を果たしたXiaomiは、この市場でのいわば後発だが、先に上陸した海外メーカーの背中を猛烈な勢いで追いかけている。コストパフォーマンスに優れたSIMロックフリースマートフォンを投入し、徐々に販路を拡大していることはもちろん、キャリアとの協力にも積極的だ。

 参入表明と第1弾モデルの投入からわずか3カ月後になる2020年3月には、KDDIからミドルレンジの5Gスマートフォン「Mi 10 Lite 5G」を発売することを発表。9月4日に発売を迎える。他の5Gスマーフォンが比較的ハイエンドで、価格も10万円前後、安いものでも6万円程度の値付けになっている中、Mi 10 Lite 5Gは4万円台前半(税込み4万2740円)を打ち出し、衝撃を与えた。

Mi 10 Lite 5G
auから発売される「Mi 10 Lite 5G」

 KDDIが用意する「かえトクプログラム」を利用すれば、端末の下取りは条件になるものの、実質3万円を下回る価格で購入できる。一方で、スペックが値段なりかというと、必ずしもそうではない。プロセッサにはQualcommのSnapdragon 765Gを採用。クアッドカメラを搭載し、ディスプレイも有機ELで、指紋センサーもディスプレイに内蔵した。スペックやデザインを見ると、価格以上の価値がある端末といえそうだ。

 そんなMi 10 Lite 5Gを開発したXiaomiで、日本の事業を担当するのが、東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏だ。同氏は8月31日に開催されたオンライン発表会にも登壇。10周年を迎えたXiaomiの歴史やビジネスモデルを語りつつ、Mi 10 Lite 5Gを含む新製品群を発表した。では、初となる日本でのキャリアモデルをXiaomiはどう捉えているのか。Mi 10 Lite 5Gが低価格な秘密は。こうした疑問の数々を、同氏にぶつけた。

Mi 10 Lite 5G
アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏(写真は2019年12月に撮影)

日本のユーザーは非常に幸運だと思う

―― Mi 10 Lite 5Gがいよいよ発売を迎えます。

ワン氏 はい。Mi 10 Lite 5Gは、日本において、初めてオペレーターと一緒に展開する端末で、大変楽しみにしています。オペレーターとの協業を通じて、製品の品質や開発について学ぶこともたくさんありました。日本のオペレーターは要求や要件の水準が非常に厳しいことで知られているからです。

 Mi 10 Lite 5Gはぜひ直接ご覧になっていただきたいのですが、高級感があって、4万円のデバイスには見えません。デザインは高品質ですが、これはフラグシップモデルをベンチマークにして、品質を高める取り組みをしたからです。競合は背面にプラスチックを使ったり、フレームがアルミでなかったりしますが、私たちは品質やディテールにまでこだわりました。

 また、ディスプレイが美しく、サムスンのAMOLED(有機EL)を使っています。プロセッサもQualcommのSnapdragon 765Gです。このチップはモデムを統合したものになり、アプリケーションチップとモデムチップが分かれていないため、省電力性能や放熱パフォーマンスが優れています。

 スマートフォンで特に使われている機能の1つであるカメラも、4万円ながら(メインカメラが)48メガピクセルで、4眼です。静止画だけでなく、動画についてもソフトウェアの最適化を行っています。ぜひ実際に手に取って使っていただき、こうした機能を楽しんでいただければと思います。

Mi 10 Lite 5G
メイン、望遠、マクロ、深度測定用のカメラを搭載

―― キャリア(オペレーター)との付き合いで学びがあったとおっしゃっていましたが、どのような学びがあったのでしょうか。少し、具体例を挙げていただけますか。

ワン氏 1つ例を挙げるとすると、日本のオペレーターはユーザーエクスペリエンス(以下、UX)を重視しています。これは、世界中の多くのキャリアが注目していないことです。auとの協力によって、われわれのソフトウェアのUXを改善することもできました。その意味で、日本のユーザーは非常に幸運だと思います。世界中で、ここまでユーザー視点を持って真摯(しんし)に考えているオペレーターは、そんなにはありませんからね。Xiaomiはグローバルでスマートフォンビジネスを展開していますが、やはりビジネス視点だけで見ているところが多いと思います。

―― UX以外に、通信についても何か得られること、大変だったことなどありましたか。

ワン氏 品質という意味で、日本のキャリアは非常に細かいところまで見ています。私たちとは違う角度から、品質を見ている。全体として、私たちの能力を底上げすることができました。auの採用しているプロセスは非常に堅牢で、パートナーシップには満足しています。

5Gに対するアプローチがKDDIと合致していた

―― 一方で、その品質を満たすのが難しいことが、海外メーカーにとっての参入障壁になっています。Xiaomiはそこがかなり早く、日本上陸後、すぐにKDDIに採用されました。秘訣(ひけつ)を教えてください。

ワン氏 特に秘訣はありません(笑)。ただ、5Gに対するアプローチはKDDIと戦略的によく合致していた……少なくとも、私たちから見て、そう言えます。日本で展開するのは非常に難しいため、うまくやっていくには、ある程度の覚悟が必要になります。それもあって、私たちはこのプロジェクトを成功させるため、本社に、他のプロジェクトから100人のエンジニアを回してもらいました。これは、私自身がCEOに要請したことです。成功するには、そのぐらいの覚悟を持ってやる必要があると考えています。

―― その意味で言うと、Mi 10 Lite 5Gを日本向けにカスタマイズした部分はあるのでしょうか。

ワン氏 カスタマイズしたのは、ネットワークとソフトウェアです。逆に、ハードウェアはグローバル版とほぼ同じです。ネットワークは、対応バンドをKDDIの持つ周波数に合わせるところで、微調整しました。ソフトウェアについても、日本向けにUXを向上させた部分があります。コピー(文言)も、日本向けにこだわって改善しています。

ハードウェアの利益率を最低限にしている

―― そこまでやって、4万円は破格だと思います。実現できた理由を教えてください。

ワン氏 これは以前もお話ししたことですが、Xiaomiのスマートフォンが安いのには、幾つかの理由があります。まず、1つ目はハードウェアの利益率を最低限にしていることです。公約した通り、利益率は5%を上回らないように設定しています。2つ目は、スケールが非常に大きいことです。ディスプレイ、プロセッサ、カメラモジュールなどを購入する際に、規模が大きいことは有利に働きます。

 3つ目として、ポートフォリオ(製品ラインアップ)を多角化していることがあります。Xiaomiには、スマートフォン以外にも、2000以上の製品があります。固定費を、スマートフォンだけでなく、エコシステムビジネス(アクセサリーやIoT製品)、ソフトウェアビジネス全体で賄うことができます。全ての面で効率よくできるということですね。このコスト効率化で得た分は、私たちの利益にするのではなく、価格に反映させ、消費者に還元するようにしています。

 ただ、ここで強調しておきたいのは品質です。低価格というと、多くの消費者は「安っぽい」「安物」と思うかもしれませんが、Xiaomiのスマートフォンの細かなところまで、よく見ていただきたい。Mi 10 Lite 5Gにも、先ほどお話ししたように、サムスンのディスプレイや4眼カメラ、Snapdragon 765Gなど、さまざまな特徴があります。詳細まで見ていただければ、すごさに気づいていただけると思います。Xiaomiの4万円のスマートフォンは、競合の4万円のスマートフォンとは違うというわけです。

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