Huaweiが“Honorブランド”を売却 独立して生き残れるのか?:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
米国政府による制裁を受け、Huaweiのスマートフォン事業は苦境を迎えようとしている。その中で浮かび上がったのが同社のサブブランド「Honor」(オナー)を事業として売却する動きだ。Honorが完全独立したメーカーになったとして、生き残ることはできるのだろうか。
Honorは「安物」から「若者向け」にシフトして成功
Xiaomiは「Mi」「紅米」の2つのモデルを数カ月おきに展開していった。これに対してHonorはHuawei本体のスマートフォン販売数が増えていくにつれ、共通部材を取り入れ次々と製品種類を増やしていく。当初は「3」「4」といった型番を付けたローエンドも出るばかりだったが、やがて「5」「6」と型番を上げスペックを高め、製品の幅も広げていった。気が付けば紅米よりも製品のバリエーションは広がっていった。
そしてOPPO、Vivoがセルフィー人気で台頭し始めた2016年頃からは対抗ブランドとして若い世代にフォーカスし、芸能人を使った広告展開も行っていった。一方、このころのXiaomiは価格だけで勝負を行っていたため、格安品のイメージが付きまとい若いユーザーの獲得に失敗して販売数を落としてしまう。Honorは「安物」から「若者向け」へとイメージチェンジに成功したこともあり、ブランド力も高めていった。
そしてHuaweiがLeica(ライカ)とコラボし、ハイスペックなカメラを搭載したモデルを出すようになると、Honorも積極的にハイエンドモデルを出していった。Huaweiにはないスライド式ボディーを搭載した「Honor Magic 2」を出した2018年になると、Honorのイメージは大きく変わっていたのだ。
最新技術を搭載した製品開発は必須
Honorは2020年現在、ハイエンドモデルも多く5G対応製品も投入しており、上位機種からミッドレンジのお手頃価格モデルまで多数の製品をそろえている。Honorの店舗へ行けばその中から自分好みの製品を買えるほどだ。しかしHuaweiから独立してしまえば、Huaweiと共通の部材購入やカメラ開発などが行えなくなる。独立後のHonorは高いブランド力は持つものの、今後の製品開発を全て自社で行わなくてはならなくなるのだ。
Honorの現在のスマートフォン出荷台数はHuaweiの大体4分の1程度とみられている。2019年のHuaweiのスマートフォン出荷台数は約2億4000万台だったので、Honorは約6000万台という計算になる。この数値はXiaomiやOPPO、Vivoの約半分だ。ということは、独立後にこれら中国メーカーとの競争も厳しくなるし、競争を続けていくためには製品開発力も高めていかねばならない。
販売数を伸ばすためにミドルレンジモデルを中心とした展開を行う戦略もあるが、それが通用したのは数年前までだ。なぜならAppleですら「iPhone SE」2020年版を低価格で出しているし、Samsungをはじめ上位メーカーはみな100ドル台から上位モデルまで多数の製品を出している。ここ数年で価格を重視していたALCATELやWikoの存在感がなくなったのも、低価格モデルの開発に特化してしまい、その結果大手メーカーとの競争に勝てなくなっただけではなく、自社の製品開発力が伸びなかったからだ。
実は紅米、Honorの後に格安モデルを出した中国メーカーがあった。Coolpadだ。Coolpadは2000年代初頭から中国ではスマートフォン開発の先駆者であり、技術力も高いメーカーだった。そのCoolpadが紅米ショックに対し「大神」と名付けた低価格スマートフォンを出したところ、これが大ヒット。しかし大神に注力してしまいハイエンドモデルの開発を怠った結果、あっという間に市場での存在感を失ってしまったのだ。
HonorがHuaweiから分離して生き残るためには、ハイエンド・最新技術を搭載した製品開発は必須だ。特に中国では5G端末しか今後売れなくなる時代となる。5Gの感度を高めるアンテナ搭載デザインの開発や、5G時代に適した機能を搭載するスマートフォンの開発ができなければ、6000万台のシェアも一気に失いかねない。Huaweiから多くの技術者を移動させるなど、人材確保も必要になるだろう。Honorの売却はHuaweiに一時的な利益をもたらすメリットはある。しかし独立したHonorを待っているのは過酷な競争なのだ。
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