国際競争力強化を狙うBeyond 5G推進コンソーシアム――日本企業にはない「中国と韓国企業の強さ」とは:石川温のスマホ業界新聞
12月18日、総務省が主導する「Beyond 5G推進コンソーシアム」の設立総会が開かれた。キャリアに対して値下げを迫る中、5Gの先を目指した研究開発を通して国際競争力を強化しろ、というのは無理筋ではなかろうか。中国や韓国の通信機器メーカーがなぜ、世界でシェアを高めたのか、しっかりと見据える必要がある。
12月18日、Beyond 5G推進コンソーシアム設立総会が開催された。午前中にNTTドコモが新料金プランを発表したこともあり、取材にはいけなかった。会場には武田良太総務大臣、NTTドコモ・井伊基之社長、KDDI・高橋誠社長、ソフトバンク・宮川 潤一CTO、楽天モバイルの山田 善久社長が出席。
報道によれば2025年に開催される大阪関西万博を、Beyond 5Gを世界に発信するショーケースにしたいようで、特に武田総務相からは「Beyond 5Gが国際競争力の強化につながる」と期待するコメントがあったようだ。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年12月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
ただ、キャリアに対して「国民の財産である電波を使って、利益率20%以上とは儲けすぎだ。値下げしろ」と迫るくせに「Beyond 5Gで国際競争力を強化しろ」というのは無理があるのではないか。
日本以外の国際競争力のある企業は、いずれも本業で儲けた資金を使って、研究開発を行い、次の事業につなげ、国際展開を図っている。本業で儲けがないことには、研究開発もおぼつかなくなるのは明らかだ。
首相や総務大臣の圧力により、携帯電話料金の値下げが実現されつつあるが、このままでは各キャリアとも次世代の研究開発に向けた余裕がなくなってしまう懸念もあるはずだ。
また、総会では「過去の反省として、勝てる技術でもビジネスで負けないようにしなくてはいけない」という趣旨の発言もあったようだ。確かに、日本の通信技術は世界から見ても先進的であったが、うまく普及させられなかったという苦い経験がある。
ただ、これに関しても「ビジネス」といえば聞こえはいいが、結局のところ「世界でブラックに働けるか」につきるような気がしている。
スマホの世界トップシェアであるサムスン電子の人は、とにかく優秀で日本で働く人たちは韓国語、英語、日本語を自在に使いこなしている。我々に対しても、日本語で下ネタをかましてくるなど、卓越したコミュニケーションに圧倒されっぱなしだ。
また、ファーウェイの人たちも、これまた優秀であり、かつ、むちゃくちゃ働いている印象がある。発展途上の国に乗り込み、朝から晩まで基地局の整備をしていたり、日本で働いている人たちの話を聞いていると、とにかく働きまくっている印象だ。
世界で活躍している企業の人たちは、なんだかんだでブラック企業といえるのだ。
いまのご時世、日本の企業で、海外企業のようにブラック的に働かせるのは不可能だろう。日本企業が世界で凋落していったのは「あまり働き過ぎない」という風潮がもたらしたように感じている。
「いまから日本企業もブラックに働け」とは言うつもりはさらさらないが、「ニッポンの技術力で国際競争力を強化しよう」というのは、もはや時代遅れの発想のような気がしてならない。
なぜ、サムスン電子やファーウェイが世界で強いのか。キャリアの人たちは充分、知っているのだが、大学の先生たちは理解できていないのようなので、まずは、彼らの働き方を学ぶところから始めた方がいいだろう。
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