ドコモがオープンRANや5Gソリューションを海外展開 柔軟で拡張性の高いネットワークを(1/2 ページ)
NTTドコモは、オープンRANの海外展開を目的とした「5GオープンRANエコシステム」の構築を発表。NVIDIA、Qualcomm、NEC、富士通などと協業する。海外拠点を持つ法人に5Gソリューションを提供することを目的とした「海外法人5Gソリューションコンソーシアム」も設立する。
NTTドコモは、オープンな無線アクセスネットワーク(オープンRAN)の海外展開を目的とした「5GオープンRANエコシステム」の構築について、NVIDIA、Qualcomm、NEC、富士通など12社と合意した。また、海外拠点を持つ法人に5Gソリューションを提供することを目的とした「海外法人5Gソリューションコンソーシアム(5GEC:ファイブジェック)」の設立に向け、NTTコミュニケーションズ、NEC、富士通など12社と基本合意した。
2月3日にオンラインで記者発表会を行い、ドコモの井伊基之社長と谷直樹常務執行役員が、2つの取り組みについて背景や目的を説明した。
5GオープンRANエコシステム構築の背景
5GオープンRANエコシステムの構築に至る背景として、井伊氏は、オープンRANに対する期待や需要が世界的に高まっていることを挙げた。
「新しい周波数への対応やローカル5G構築など、5G時代に通信キャリアや企業のさまざまなニーズに応えるには、ネットワークの技術や製品を多様な製品の中から組み合わせられる、ネットワークのオープン化がカギ」(井伊氏)
オープンRAN導入のメリットは、装置を自由に選べることだ。ベンダーを1社だけに限定すると、そのベンダーが提供していない装置は導入できないが、オープン化されていれば、他ベンダーの装置も入れられる。サプライチェーンリスクを回避でき、常に競争が働くので大きなイノベーションも期待できる。
ドコモは、オープンRANの重要性に早期から着目し、2018年には標準仕様策定などを行う「O-RAN Alliance」を設立。2020年3月には、世界で初めて5G商用サービスでオープンRANを実現した。11月には、マルチベンダー接続可能な装置数を15種類に拡大。これらの装置を用いて、複数の周波数帯を束ねることで通信速度を向上させるキャリアアグリゲーションを5Gで実現するなど、オープンRANを積極的に推進しており、「ドコモならではの知見やノウハウを蓄積している」と自負する。
「長年のオープンRANのノウハウを活用することで、グローバルベンダーそれぞれの強みを単純に結合するのでなく、ドコモが融合させて多様な価値を生み出す」と井伊氏は意気込む。
5GオープンRANエコシステムでは、複数のグローバルベンダーと協力して、大手から新規参入までさまざまな海外通信キャリアのニーズに合わせて柔軟で拡張性の高いネットワークを構築し、導入、運用、保守までを行うという。
オープンRANとはどのような取り組み?
無線アクセスネットワーク(RAN)は、親局と子局から構成される。RANのオープン化は、(1)親局、子局をマルチベンダーで接続可能にする装置間のインタフェースのオープン化と、(2)親局のソフトウェア、ハードウェアの分離による装置内インタフェースのオープン化がある。
ドコモは(1)の装置間インタフェースのオープン化を既に商用で導入しており、異なるベンダーの親局、子局が相互接続可能。自由に基地局装置を組み合わせることが可能になっている。
一方、(2)の装置内インタフェースのオープン化は、仮想化RAN、vRANとも呼ばれている。汎用(はんよう)サーバ上に親局機能を集約することで、コスト低減や、エッジコンピューティングを組み合わせることで低遅延の通信が期待される技術だが、ここはまだ「チャレンジングな部分が多い」(谷氏)。そういった課題に対応していくことも、5GオープンRANエコシステムのテーマだという。
vRANを構成する機能には、基地局ソフトウェアに加え、仮想化基盤、アクセラレータ、汎用サーバなどがある。オープン化によって異なるベンダーの製品を組み合わせることが可能になり、vRANの各機能を自由に組み合わせることで、海外通信キャリアのニーズに応えることができるという。
「それぞれの強みを持ったベンダーに入ってもらい、仕組みとしてしっかり動くものを作っていこうというのが今回のエコシステム」の狙いでもあり、「2022年度にはマルチベンダー接続可能なvRANを実現する」(谷氏)としている。
5GオープンRANエコシステムにはグローバルベンダー12社が賛同しているが、これらのパートナーにとどまらず、「エコシステムに賛同してもらえる企業にはぜひ参画してほしい」と谷氏は呼びかけた。
なお、オープンRANの実現のために、ドコモのR&DセンターにvRANの検証環境を構築。検証環境は海外通信キャリアが遠隔で利用できるようにするという。
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