Honorの5Gスマートフォン「V40」が登場 “脱・Huawei化”のメリットと課題:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
Honorの新しいスマートフォン「V40」は、HuaweiのサブブランドだったHonorが独立してから登場する最初の製品。プロセッサや外部メモリなど、Huaweiのサブブランド時代とは異なる仕様が多い。販路も独立し、どれだけ認知を拡大できるかが問われている。
販路も独立、どれだけ認知拡大を図れるか
Honorはこれまで中国国内ではダブルスタンダード戦略で販売数を増やしてきた。Honorは中国ではHuaweiとは別の実店舗展開を行っている。Huaweiが上海や深センにオープンしたフラグシップストアにはHonor製品は一切展示されていない。Honorの店舗はHonorストアとして独立展開されている。インフルエンサーを使った広告なども、HonorとHuaweiではイメージの異なる展開がされていた。
一方、オンライン販売はHuaweiの「Vmall」の中にHuaweiコーナーとHonorコーナーがあり、両者は同じWeb上で販売されていた。Honorの新製品が発表されれば、Vmallを開くと真っ先にそれが表示される、といった具合だ。オンライン上ではHuaweiとHonorは区別なく販売されており、中国の消費者もHuaweiとHonorは同じメーカーの製品であることを十分認識しているのだ。
ちなみにVmallは2012年に開業しており、既に10年の歴史がある。2013年にHonorブランドが登場したとき、HonorはVmallやECサイト取り扱いのみというオンライン販売に特化した製品だった。そのころからHonorはHuaweiのサブブランドという位置付けを確立していったのだ。その後、Honorは若い世代向けのコスパ製品を扱うブランドとして人気を高めていったが、Honorの販売が国内で好調だったのは信頼のおけるHuaweiと同じメーカーの製品だったからでもあるのだ。
VmallでのHonor製品の扱いは2021年1月11日までで、1月12日からはHonorは独自の販売サイト「HiHonor」を開設した。HiHonorは既にグローバル向けに展開しており、そこに中国が新たに加わった。Vmallでは1月上旬から徐々にHonor製品の取り扱いがなくなり、1月12日のHiHonorへの移行が連日アナウンスされていた。
Honor V40の発表会で、同社CEOの趙明氏は「Honorは中国のオンライン販売でナンバーワン」と説明した。確かにHonorはオンラインに強いブランドではあるものの、前述したようにHuaweiと一緒にVmallで販売されていたからこそ製品が消費者の目にとまりやすかった。しかし独立運営された今、消費者の目をHiHonorに向けさせなくてはならない。Honor分離後のVmallではワインや高級食品の販売も目立つ。Huaweiですらそうやって消費者の興味を自社サイトに向けさせようとしている。
Honorも今後はスマート家電なども取り扱いたいところだろう。Huaweiのサブブランド時代はHonorブランドのスマート家電対応Wi-Fiルーターや、VmallのHonorコーナーでスマート家電を販売していた。しかしそれらはいずれもHuaweiのスマートソリューション「HiLink」に対応したものだった。Huaweiから独立した今、HonorはHiLink以外のスマートソリューションの開発、または他社ソリューションの導入も必要となる。スマートライトやスマートプラグなど手軽に買えるスマートを販売するにも、それを接続させるためのアプリやサービスが必要だ。
今後はV40を中心に、ミドルレンジやエントリーモデルの拡大も必要となる。MediaTekやQualcommが低価格な5Gプロセッサを投入している今、Honorはエントリーモデルも5Gモデルとし、全製品を5G化させることで消費者や通信事業者からの関心を引き寄せるという戦略もあるかもしれない。V40の次にどんなスマートフォンを投入してくるのか、Honorの今後の動きに注目したい。
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