大手キャリアの無制限プランは本当に「無制限」? 制約を理解して賢く使おう:5分で知るモバイルデータ通信活用術(2/2 ページ)
大手キャリア各社が、2021年4月までに「容量無制限」のプランを一通りそろえることになりました。ただ、その条件を詳しく見ると、各社で違いがあったりもします。今回は、その違いについて見ていきましょう。
ソフトバンク:5Gと4Gの共通プラン ただし“端末単体”のみ
ソフトバンクでは、3月17日から提供を開始する4G/4G LTEと5Gの共通プラン「メリハリ無制限」で月間のデータ容量を無制限としています。厳密には、このプランは携帯電話回線契約の「基本プラン」、データ通信用の「データプランメリハリ無制限」(データ接続サービス込み)をセットとしたものです。
メリハリ無制限は、auの無制限プランと同様に容量無制限は国内において端末単体でデータ通信をした場合に限られます。以下の通信については、30GBの月間(※)データ容量制限があります。
- テザリング
- 「データシェア」子回線での通信
(※)ソフトバンクの場合は翌請求締め日までの1カ月間(以下同様)
この制限を超過した場合、上記の通信における通信速度が最大128kbpsに制限されます。端末単体での通信でも時間帯によって、トラフィックの混雑を生じさせる通信について速度を制御することがあるとされています。具体的には、動画、ゲームなどのサービス、AR(拡張現実)コンテンツが対象になりますが、制限を掛ける可能性のある時間帯は明示されていません。
注釈の書き方を見る限り、制限は極力掛けない方針だと思われますが、注意する必要はありそうです。
楽天モバイル:容量無制限は「自社エリア」限定 1日単位の制限にも注意
楽天モバイルでは現在、「Rakuten UN-LIMIT V」で月間のデータ容量を無制限としています。4月1日からは、1名義1回線に限り月額0円から利用できる「Rakuten UN-LIMIT VI」に移行しますが、上限額(月額2980円)まで到達すると容量無制限となることに変わりはありません。
ドコモと同様に、Rakuten UN-LIMIT V/VIの容量無制限はテザリングやデータ専用機器での利用も対象となります。ただし、容量無制限は楽天モバイルの自社エリアのみが対象で、国内ローミング(au)エリアでは月間5GB、海外エリアでは月間2GBの通信容量制限があります。容量を超過した場合、通信速度が国内ローミングエリアでは最大1Mbps、海外エリアでは最大128kbpsに制限されます。
楽天モバイルは自社エリアの整備途上で、サービス開始当初よりも広がってはいますが、他の大手キャリアと比べると狭いことは否めません。そのためauネットワークへのローミングがある意味で「命綱」ですが、月間5GBまでとなると使い方次第ではあっという間に速度制限がかかってしまいます。
とはいえ、国内ローミングエリアで制限がかかった場合の速度は1Mbpsと少し高めです。動画は厳しいかもしれませんが、それ以外の使い道であれば意外と使えるかもしれません。
Rakuten UN-LIMIT V/VIは自社エリアでは最大料金時は容量無制限だが、国内ローミングエリアでは月間5GBの通信容量制限がある。ただし、その旨は目立つ所には書かれていない(画像はRakuten UN-LIMIT VIの場合)
「自社エリア内なら容量無制限で通信できるのか!」と思った人もいると思いますが、全く制限があるわけではありません。「公平にサービスを提供するため」に通信速度の制御を行うことがあるとされています。
他の大手キャリアの大容量プランでは、曖昧ながらも通信制限が掛かる、あるいは掛かる可能性がある利用例を挙げています。しかし、Rakuten UN-LIMIT V/VIではいつ、どのくらい、どのような通信をすると制限対象になるのかを全く示していません。
この問題については、この連載でも過去に取り上げています。検証を通して1日当たり10GB以上通信すると、当日の通信速度が最大1Mbps前後(現在は3Mbps前後)に制限されるということは分かりました。ただ、これはあくまでも“検証”の結果であって、楽天モバイルが自ら公表したものではありません。
この制限は、少なくとも「無料サポータープログラム」として提供されていた時点ではありませんでした。同プログラムからRakuten UN-LIMIT Vに移行したユーザーは、この制限について特に告知されることなく適用されるようになりました。
Rakuten UN-LIMIT VIに見られるように、楽天モバイルは積極的に料金プランを改定して大手キャリアに果敢に挑んでいます。しかし、大手キャリアと比べるとユーザーにとってマイナスな情報は積極的に告知しない点はどうしても引っかかります。
筆者は「帯域制限はけしからん、即刻撤廃すべきだ」と言いたい訳ではありません。ネットワークリソースは有限なので、一定の制限を設けるのは当たり前のことです。ユーザーも理解しやすい形で制限条件をある程度示すべきだと言いたいのです。
できうる限りの努力を行っても帯域制限をせざるを得ないのであれば、少なくともその制限ルールについて、契約者が理解しやすい形で広めるべきである。と言いたいのです。
Rakuten UN-LIMIT VIの発表会で、同社の三木谷浩史会長(楽天社長)は「楽天モバイル回線でPlayStation 5(PS5)のゲームをダウンロードするユーザーもいる」と、自社ネットワークにおける容量無制限をアピールしていました。しかし、PS5のゲームは50GBを超えるものもあります。先述の通り「1日当たり10GB」の制限があることを考えると、最初の10GBくらいはスイスイとダウンロードできても、残りの40GBが“待てど暮らせど”な可能性があります。
三木谷会長の発言の意図は不明ですが、春の引越しシーズンに向けて、楽天モバイルも固定回線の代替に適したデータ通信機器、あるいは制限条件の変更を準備しているのかもしれません。期待したい所です。
ここまで、キャリア4社の「容量無制限プラン」を見てきました。
少なくともスマホ単体で行う通信については、これまでよりも手頃な価格でたくさん通信できるようになりました。良い時代になったと個人的には思います。
とはいえ、スマホとその他の機器(PCやゲーム機など)との通信“内容”の差がそれほど大きくない昨今において、テザリングだけ別途容量制限を設けるのは合理的なのか……など、各種提供条件は随時見直してほしいとも思います。
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