「LINEMO」の戦略を読み解く ヤフーとLINEの経営統合がサービス強化のカギに:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ソフトバンクオンライン専用ブランドが「LINEMO」に決定した。料金も改定し、5分間の音声通話定額をオプションにすることで、最低料金を月額2480円に下げた。MVNOとして展開しているLINEモバイルを発展的に継承する形で、LINEとのサービス連携が最大の特徴になる。
「SoftBank on LINE」というコンセプト名だけが先行発表されていたソフトバンクのオンライン専用ブランドの名称が、「LINEMO(ラインモ)」に決定した。単に名前が決まっただけでなく、2020年12月に発表していた料金も改定。5分間の音声通話定額をオプションにすることで、最低料金を月額2480円(税別、以下同)に下げて投入する。データ容量は20GB。音声通話は従量課金になり、30秒20円だ。
料金水準やデータ容量は、1月にKDDIが発表した「povo」と同じ。一方で、povoをauの中の料金プランにしたKDDI対し、ソフトバンクは、LINEMOを、ソフトバンクやY!mobileと並ぶ3つ目の新ブランドと位置付けた。MVNOとして展開しているLINEモバイルを発展的に継承する形で、LINEとのサービス連携が最大の特徴になる。その中身や、ソフトバンクがLINEMOを展開する狙いを解説していきたい。
povoに追従し音声従量で2480円を打ち出したLINEMO、LINEはビデオ通話までフリーに
オンライン専用ブランドとして、SoftBank on LINEと銘打ったコンセプトを2020年12月に発表していたソフトバンク。20GBのデータ容量や、LINEのデータ通信量がカウントされないゼロレーティングサービスは、当初発表したときのままだ。LINEを通じて申し込みや契約変更などを行うコンセプトも、12月から変わっていない。一方で、料金やセットになっていた5分間の音声通話定額は、LINEMOのサービス開始にあたって見直しをかけた。
2020年12月にSoftBank on LINEとしてコンセプトを発表していたときから料金は500円下げ、2480円になった。代わりに通話料は従量になり、5分間の音声通話定額はオプションとして提供する
料金は2480円で、1月に発表したKDDIのpovoと同額。5分間の音声通話定額は500円のオプションにして、基本料金に含めない形になった。これを付ければ2980円になり、コンセプト発表時と同額になるが、選択肢を設けて、音声通話定額が不要なユーザーに対して値下げした格好だ。povoへの対抗以上に、音声通話定額を外した背景には、ユーザーの声があったという。LINEMOの事業を統括するソフトバンクの常務執行役員 寺尾洋幸氏は次のように語る。
「当然、コンペティター(競合)になるさまざまなサービスは常に意識しているが、一方で、お客さまの声を意識しながらサービスを作っている」「LINEのギガ(データ通信量)がフリーだったら電話はいらない、その分安くしてくれというお声をいただいた」
LINEには、テキストメッセージやスタンプ以外に、音声通話やビデオ通話の機能が備わっている。LINEの取締役 CSMO 舛田淳氏が「音声通話、ビデオ通話は月間76億回を超えている」と言うように、実はスタンプの送信回数である43億回より、利用頻度は高い。LINEの月間アクティブユーザーは8600万人超だが、1人あたりに換算すると、88回以上も音声通話機能が利用されていることが分かる。
LINEMOでは、これらの機能が全て「LINEギガフリー」として、20GBのデータ量を消費せずに利用可能だ。これは、携帯電話の音声通話以上に利用頻度の高いLINEの通話機能が、データ料まで含めて完全に無料になることを意味する。LINEMOのコンセプトを考えると、音声通話定額をオプションにするのは自然な流れだ。
裏を返せば、5分間の音声通話定額がセットにした料金は、事業者都合の“抱き合わせ”に見えてしまう恐れがあった。大手3キャリアが横並びで5分間の音声通話定額をセットにしていれば見過ごされていた可能性もあるが、KDDIがpovoの音声通話を従量課金にしたことで、それが可視化された。その意味で、LINEMOの料金体系は、事業者間の競争が有効に機能した結果ともいえる。
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