MVNO業界に衝撃を与えたIIJmioの新料金プラン なぜここまで安くできたのか?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
大手キャリアや楽天モバイルが安価な料金プランを発表する中、MVNOの大手IIJも、IIJmio向けの新料金プランを発表した。最安の2GBプランは音声通話付きで780円。大手キャリアはもちろん、他のMVNOの新料金プランを大きく下回る金額が話題を集めた。さらに、データ通信のみのeSIMだと、料金は2GBで400円まで下がる。
普及を狙ってeSIMは超低価格に、ユーザーの2スロット目を奪えるか
ギガプランは、音声通話付き以外にも、データ通信専用SIMやSMS対応SIM、さらにはフルMVNOのeSIMまで選択できる。価格は音声通話付きが最も高く、SMS対応は30円、データ通信のみは100円安い。この選択肢の多さは、ギガプランの魅力の1つ。音声通話のつかないデータ通信専用プランは大手キャリアが手薄になっているだけに、MVNOならではの攻め方といえる。
特筆したいのが、eSIMだ。音声通話やSMSができないなど、機能はデータ通信専用SIMに近いが、価格は一段安い。2GBは400円、4GBは600円、8GBは1000円、15GBは1300円、20GBは1500円と、他のMVNOの追随を許さない低価格を打ち出している。「設備や運営にまつわるコストを削減し、お客さまに還元した」(MVNO事業部 コンシューマサービス部長 亀井正浩氏)というのが安さの理由の1つだ。
この価格には、プロモーションの意味合いも込められている。亀井氏は「eSIMはとにかく使ってほしいので、あの価格で出した」と語る。対応端末はiPhoneやPixelなどに限定されるが、価格の安さゆえに、2回線目として維持しやすいため「サブ回線としてのニーズも大きい」(同)。eSIM対応端末の多くはデュアルSIMで利用できるため、他社ユーザーの“2スロット目”を奪いにきたともいえそうだ。
一例を挙げると、楽天モバイルを1回線目として使いつつ、IIJmioのeSIMを使えば、楽天モバイル以上に料金が安くなる逆転現象が起こる。楽天モバイルが4月1日から導入する「UN-LIMIT VI」は、1GB以下の料金が0円で、「Rakuten Link」経由での通話も無料だ。一方で、1GBを超えると、3GBまでの料金は980円になる。これに対し、1GBを超えそうなときに、データ通信だけを2GBプランを契約したIIJmioのeSIMに切り替えれば、料金は2回線合わせても400円で済む。20GBの場合も、楽天モバイル単独で使うと1980円だが、IIJmioのeSIMを使えば1500円に下がる。
亀井氏は「そこまで巧妙な狙いがあったわけではない」と笑うが、ユーザーのデータ通信だけを取りにいくのであれば、eSIMを低料金で投入するのは合理的な戦術だ。楽天モバイルとの組み合わせは極端なケースだが、1GBあたりの単価が非常に安く設定されているため、データ容量が微妙に足りないユーザーにとっても使い勝手がいい。毎月1GBなり2GBなりのデータ容量を追加する代わりに、IIJmioのeSIMを契約しておくという選択肢ができたというわけだ。
eSIMは、いち早くフルMVNO事業を開始したIIJならではの独自性といえる。IIJmio以外でコンシューマー向けにeSIMのサービスを提供しているMVNOはなく、この分野では差別化が図れている。他のMVNOがIIJmioと同じような料金プランを出そうと思っても、大手キャリアからeSIMの機能を丸ごと借りられるようになるのを待たなければならず、時間がかかる。また卸でeSIMの機能を借りてしまうと、IIJmioのように大胆な料金プランを打ち出すのも難しくなる可能性がある。
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