法人向け5Gデバイスを本格展開する京セラ 通信機器メーカーとしての強みは?(1/2 ページ)
1989年に携帯電話市場に参入した京セラは、長らく端末事業を展開しており、2000年代に入って車載・産業機器向け通信モジュールも開発してきた。端末メーカーの知見を生かして、設計からサポートまでをワンストップで行う「京セラコネクティングサービス」も提供している。2021年5月には法人向けのミリ波対応5Gルーター「K5G-C-100A」を本格販売する。
京セラは3月23日に通信端末事業30周年の記者説明会を開催し、IoT・5G関連事業についての展望を紹介した。
1989年に携帯電話市場に参入した京セラは、長らく端末事業を展開しており、2000年代に入って車載・産業機器向け通信モジュールも開発してきた。そして2021年5月には法人向けのミリ波対応5Gルーター「K5G-C-100A」を本格販売する。K5G-C-100Aはエッジコンピューティングとして単体でさまざまな処理を行え、導入企業のニーズに対応できるとしている。
同社通信事業戦略部IoT・ビジネスユニットの横田希氏は「長年の通信機器開発で培った通信技術・設計品質を生かして製品を展開している」と話す。
IoTシステム導入を京セラがワンストップでサポート
現在、携帯各社が5Gエリアを拡大しつつあるが、5Gの超高速・大容量、低遅延、多数同時接続という特徴は、IoTの通信基盤として最適。工場内などの限定エリアを5G化する「ローカル5G」も活用することで、IoTがさまざまな場所で活用できるようになると見込まれている。
しかし、IoTシステム導入のためには自社の環境に合った構築が必要で、ここに問題が発生すると横田氏は指摘する。IoTに接続する機器はその通信規格や耐用年数がそれぞれ異なり、「機器が古くてインタフェースが合わない」といったことも起きる。どのセンサーからどういう情報を取れるのか分からない、どの通信方式を使えばいいか分からない、保守運用はどうするのか……そんなさまざまな課題が発生するのだという。
さらに、こうしたIoTシステムを構築したい業界として自動車、公共サービス、製造業、小売業などがあるが、「通信技術の知識人材が不足している」(横田氏)。しかも事業者ごとに解決すべき課題が異なり、設置場所が多様で環境に応じた対応や耐久性が求められる、といった機器選定の難しさがある。
そこで、京セラではこれまでの通信機器開発のノウハウなどを生かし、設計、開発、アフターサポートをワンストップで行う「京セラコネクティングサービス」を用意。事業者ごとに適した機器導入やネットワーク支援、保守運用を行う。京セラ単独ではなく、複数のパートナーと連携することで、顧客のIoT化を実現していくことが狙いだ。
K5G-C-100Aは単体での購入も可能だが、基本的にはソリューション(京セラコネクティングサービス)との組み合わせでの販売となる。顧客が望むサービスを実現するために、ハードウェア設計やソフトウェア開発、カスタマイズや公的認証取得、障害発生時の対応、運用監視・サポートといったメニューを提供する。
ウェアラブルデバイス、セキュリティカメラ、ドローン、ロボットなどのIoTデバイスと接続するコネクティングデバイスとして、今回のK5G-C-100Aをはじめとしてさまざまなデバイスを用意。5G、LTE、自営網など経由してクラウドストレージやクラウドアプリケーションに接続可能にするのが、この京セラコネクティングサービスだ。
通信機器を導入していない事業者には、各種通信デバイスを提供。ボタン1つに機能を割り当てられる「LTE-Mボタン」や、GPSとビーコンを内蔵して子どもの見守り、Bluetoothで接続したセンサーの情報をクラウドにアップロードする、といった機能を備えるビーコン対応GPSトラッカー/ゲートウェイ、単体でGPS、温度、湿度、加速度が取得できるGPSマルチユニットといった製品が用意されている。
これらを利用したサービスとして、ネコリコの「独居ケアアシスタント」サービスがあり、GPSマルチユニットを独居老人の見守りセンサーとして活用。センサーのネコリコサーバへの接続、センサーのしきい値の設定、機器の保守、サービス運用サポートなどを行っている。
他にも、UCCのコーヒーマシンDP2000にGPSマルチユニットを接続。ドリップポッドカプセルを消費した数や在庫数を記録し、カスタムマイコンの設置など、IoT化のサポートを行ったという。
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