ローカル5G、フルMVNO、ドコモとの連携――NTTコミュニケーションズの5G戦略を聞く:5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)
NTTのグループ会社の中で、とりわけ法人向けビジネスに強みを持つNTTコミュニケーションズ。最近ではフルMVNOやローカル5Gなど、無線通信を活用した法人ソリューションの強化も推し進めている。同社では、法人ユースに対応したネットワークのクオリティーや知見を強みとしている。
MVNOとしての5Gは検討段階 ドコモとの連携は?
NTTコミュニケーションズはローカルだけでなく、MVNOとしてパブリックな無線ネットワークも手掛けており、2020年4月からは国内でもフルMVNOとしてIoT向けのモバイル通信サービスを提供している。安江氏はフルMVNOになることで「自由に料金が設定できるとか、SIMのライフサイクルに対してポリシーが設定できるなど、けっこうメリットがある」と話しており、その特性を生かして「ミドルB」(「B2B2X」の中間のB)の無線サービスに力を入れているという。
フルMVNOサービスの事例として多いのはやはり製造業で、eSIMを活用してSIMのプロファイルを遠隔で書き換えることにより、SIMを差し替える手間なく、ある国で製造した機器を別の国で通信できるようにするといった用途が多いとのこと。実は同社は2018年にフランスのMVNEであるトランサテルを買収、そのリソースを活用して2019年より、国内に先んじて「IoT Connect Mobile」という海外主体の法人向けのIoT通信サービスを提供している。
では、MVNOとして法人向けの5Gのサービス提供はどう考えているのだろうか。安江氏はライトMVNOとしての5Gサービス提供について「市場動向を見極めながら検討する」と話すが、フルMVNOとしてのサービス提供については設備投資が大きくなることに加え、具体的な提供形態がはっきりしていないこともあり、「おいそれとやるという判断はできない」と答えている。
ただ、仮にフルMVNOとして5Gのサービスが提供できるようになった場合、安江氏は工場の例を挙げ、1枚のSIMでローカル5Gとパブリックの5Gを活用できるようになれば「機密性の高い生産データは閉域でやりとりする一方、他の工場に運ぶ際のタグやパレットの位置情報などはパブリックの5Gでやりとりし、工場内でそのやりとりをシームレスに切り替えることができれば一気通貫でのデータ管理ができるのではないか」と話している。
では、最も気になるNTTドコモとの連携はどうなっているのだろうか。NTTコミュニケーションズの親会社であるNTTは2020年11月にNTTドコモを完全子会社化しているが、そのNTTは2021年夏にNTTコミュニケーションズをNTTドコモの子会社とし、法人事業をNTTコミュニケーションズに一元化する方針も打ち出しているからだ。
安江氏はこの点について「あくまで一般論」と断りながらも、両社の成り立ちの違いから「NTTドコモはコンシューマー向けのサービスに長けている会社で、弊社は法人向けのビジネスやサービスを主として成立してきた会社。得意分野が違う」と答えている。
それゆえ今後は両社の特徴を生かし、足りない部分を補うため、NTTコミュニケーションズが持つ固定系のノウハウをNTTドコモの法人ビジネス展開に活用することが考えられるとのこと。「NTTドコモは無線ネットワークの構築などの知見に一日の長がある。(NTTドコモが)ローカル5Gを直接展開はできないが、ノウハウは活用したい」と安江氏は話している。
取材を終えて:NTTドコモとの本格連携の行方が注目される
固定系ネットワークに強みを持ち、大企業を主体に多くの顧客を持つNTTコミュニケーションズは、現時点でローカル5Gを提供する事業者として優位な立場にあることに間違いないだろうし、取材を通じて現時点でもその強みは十分発揮できていると感じる。それだけに気になるのは、やはりNTTドコモとの連携の行方だ。
NTTの計画通りNTTドコモの子会社となり、有線・無線も含めた法人事業を一手に担うようになれば、ローカル5Gだけでなく、パブリックでの5Gに関しても従来のMVNOとしての枠を超えたビジネス展開が期待できるかもしれない。ただしその子会社化と両社による法人営業の一体化については、KDDIやソフトバンクなど競合他社が猛反発しており、総務省で公正競争に向けた議論がなされている最中だ。
その結論が出なければ動きづらい部分があるというのは確かだが、予定通り子会社化が完了すれば、同社が法人市場で一躍注目の的となることは確実。それだけに当面、その動向を見守る必要がありそうだ。
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