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NTTコムがローカル5Gの支援サービスを提供 ドコモとも連携して“キャリア品質”目指す

NTTコミュニケーションズが、2021年3月31日から「ローカル5Gサービス」を提供する。企業がローカルを5G導入する際のコンサルティング、免許取得、機器構築、運用などの支援をトータルで行う。NTTドコモが持つ、エリア調査や回線設計などに関する知見を取り入れることで、高品質なエリア構築を目指す。

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 NTTコミュニケーションズが、2021年3月31日から「ローカル5Gサービス」を提供する。同サービスでは企業がローカルを5G導入する際のコンサルティング、免許取得、機器構築、運用などの支援をトータルで行う。

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ローカル5Gの導入から運用までを支援するサービス

 ローカル5Gに必要な機器を月額料金で提供することで、初期費用を抑えられる。またユーザー側が希望すれば、機器を購入することもできる。費用は事業者によって異なるが、初期費用は数千万円を、月額費用は150万円程度からを想定している。

 ネットワークはSub-6帯(4.7GHz帯)のSA(スタンドアロン)方式に対応している。Sub-6はミリ波よりも電波が届きやすく、SA方式はLTEを介するNSA(ノンスタンドアロン)方式よりも高速大容量・耐遅延、多接続といった5Gの特徴をより生かせるようになる。5Gコアをクラウド上で提供することで、後から他のエリアにも広げるなど、柔軟なエリア拡張も可能としている。

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柔軟な運用を可能にするクラウド型5Gコア
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NTTコムのローカル5Gは、Sub-6帯とSA方式に対応している

 ローカル5Gのネットワークを構築するには免許申請が必要になるが、総務局への説明から免許申請書類の提出までをNTTコムが代行するため、企業側が有資格者を用意する必要はない。24時間365日のサービスデスクやネットワークの稼働監視を含む保守運用もNTTコム側で行う。

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導入コンサルティング、免許申請の代行、ネットワークの保守も行う

ドコモが持つネットワークの知見も取り入れる

 NTTグループの持つアセットとして、NTTドコモが持つ、エリア調査や回線設計などに関する知見を取り入れることで、高品質なエリア構築が可能になるとしている。例えば、敷地外からの電波干渉を測定し、影響を与える可能性のある電波については事業者と調整していく。この他、電波干渉や利用シーンを考慮した電波のチューニングや、見積もりと設計が乖離(かいり)しないための現地調査にも、ドコモの知見を生かしていく。

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ドコモの知見も取り入れて、高品質なエリア構築を目指す

 NTTコムは「キャリアグレードの技術や知見」とアピールするが、これらはドコモの「ローカル5G構築支援サービス」を活用したもので、他の事業者にも提供されている。NTTコムは2021年にドコモの子会社化となる予定で、さらなる連携が期待されるが、現時点で決まっていることはないという。

 1つ想定されるのが、ドコモの公衆5Gとの連携だ。例えば工場の敷地内ではローカル5Gを、敷地外では公衆5Gを利用する、といった使い方が想定される。「パブリック5Gとローカル5Gを活用してシームレスな連携をすることも将来的には考えていきたい」(データプラットフォームサービス部サービスクリエーション部門第四グループ担当部長の池上聡氏)とするものの、制度上の問題もあることから、まだ検討段階とのこと。

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グループアセットを生かすことを特徴の1つに掲げているが、ドコモとの“深い連携”は、これからのようだ

実証実験や技術開発を生かしてソリューションを提供する

 NTTコムはこれまで、いくつかの企業とローカル5Gの実証実験を行ってきた。

 例えばDMG森精機とは、生産現場の自動化につながるよう、AVG(自律走行型ロボット)をローカル5Gに接続して電波特性を検証した。「AGVが収集する障害物が周りにあるか、人がいるかといった周辺環境のデータを集め、リアルタイムかつ安定的にサーバに取り込むことができた」(ソリューションサービス部デジタルソリューション部門第一グループ主査の柿元宏晃)。こうした検証は、工場内での自動化設備の高度化につながるとしている。

 ブリヂストンとは工場敷地内での通信品質を検証し、センサー類のワイヤレス化や4Kカメラを使った高スキル者の技能分析などを行った。

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DMG森精機との取り組み
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ブリヂストンとの取り組み

 技術開発も積極的に行っている。NTTコムラグビーチーム「シャイニングアークス」の練習場「アークス浦安パーク」に設置したローカル5G設備から田町オフィスの5Gエミュレーター設備まで接続し、4.7GHz帯で現場の映像伝送に成功した。

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自社設備で4.7GHz帯での映像伝送に成功した

 さらに、アーク浦安パークの5Gで伝送された映像を、エッジコンピューティング(MEC)によってリアルタイムで解析することにも成功。例えば、ゴールキックの映像にボールの軌跡や付加情報を算出して描画するというものだ。エッジコンピューティングではクラウドよりも手前にあるネットワーク上で処理を行うことから低遅延を実現できる。こうした技術は「スマートファクトリーに適用して、ローカル5Gと映像技術を用いたソリューションの提供を目指す」(イノベーションセンターテクノロジー部門担当課長の桐山直樹氏)。

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エッジコンピューティングを活用してリアルタイムで映像分析を行った

 ローカル5Gは多くの事業者が提供しているが、データプラットフォームサービス部サービスクリエーション部門第四グループ担当部の長安江律文氏は「ローカル5Gの数多くの実証実験で培った技術を活用し、その先にある固定網からクラウドまでエンド・ツー・エンドで構築できることが強み」とアピールする。

データ利活用の「Smart Data Platform」とも組み合わせる

 もう1つ、NTTコムならではの特徴として、同社が推進している「Smart Data Platform(SDPF)」を活用できる。SDPFでは、データの収集、蓄積、管理分析など、各種ソリューションでデータを利活用するのに必要な機能を提供する。「ローカル5Gは、データ収集レイヤーの重要な要素と位置付けている」と池上氏は言う。

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データを利活用するための機能群である「Smart Data Platform」をローカル5Gでも活用していく

 例えば工場内でローカル5Gを利用する場合、ロボットをリアルタイムで制御しながら周辺環境のデータを収集し、搬送業務の自動化を行うといったものだ。Wi-Fiとは異なり、SIMによる認証情報を取得することで、セキュリティも担保できる。NTTコムは「製造業」をローカル5Gの大きな利用シーンに位置付けており、スマートファクトリーを推進していく。

 パートナーとローカル5Gサービスを共創できる環境も用意していく。NTTコムは2020年12月に4.7GHz帯の実用局免許を申請しており、田町グランパークタワーにローカル5G共創環境を準備中。2021年4月から利用可能になる予定だ。ここではパートナーと一緒に新規ビジネスやユースケースの創出に取り組んでいく。

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