3Gから4G、そして5Gへ モバイル通信の進化で業界のトレンドはどう変わった?:ITmedia Mobile 20周年特別企画(4/4 ページ)
モバイルの通信規格は、おおむね10年に1回、世代が進むといわれている。3Gではデータ通信速度が最大384kbpsになり、パケット定額サービスが導入された。LTE(4G)ではスマートフォンが普及し、キャリアのビジネスモデルが変革を迎えた。
まだ見えぬ5Gのキラーサービス コロナ禍のトレンドがヒントに?
一方で、現在進行形でエリアの拡大が進む5Gのキラーサービスが何になるかは、まだ見えていない。契約者は順調に増えているものの、どちらかというと5Gを目当てにしているわけではなく、最新のスマートフォンを購入したら、5Gに加入することになったユーザーの方が多いだろう。楽天モバイルやY!mobileは自動で5G契約に切り替わる上に、各社のオンライン専用プランは4Gと5Gを区別していないため、今後も見た目上、契約者数の増加は加速していくはずだ。状況としては、先に挙げた900iシリーズ登場以前だった3Gや、iPhone 5登場前のLTEに近い印象を受ける。
大容量や高速通信を生かす端末として、サムスン電子やファーウェイ、モトローラなどからフォルダブルスマートフォンが続々と登場している。スマートフォン事業からの撤退を表明したが、LGエレクトロニクスがここ数モデルで打ち出してきたデュアルスクリーンも、こうした流れに沿った端末といえそうだ。一方で、フォルダブルスマートフォンはまだ価格が高く、一般的なユーザーが簡単に手を出せるものにはなっていない。これがどこまでスタンダードなものになるのかは、もう少し状況を見守っていく必要がありそうだ。
ただし、その萌芽のようなものは見えている。1つは、コロナ禍でにわかに脚光を浴びたオンライン会議。Zoom、Teams、Google Meetなど、さまざまなサービスがあるが、これらをより高画質で、かつ気兼ねなく使おうと思ったら、やはり容量に制限がない5Gの方がいい。リモートワークの広がりを受け、PCやタブレットの販売台数が急拡大したのも、5Gにとって追い風だ(全てがモバイル通信対応ではないが)。こうした販売動向の変化には、次のスマートフォンに対するヒントが隠されているような気がしている。
また、5Gは売りの1つに超多端末接続がある。スマートフォンをはじめとする、携帯電話以外のデバイスも通信につながることが想定されているというわけだ。個人向けのIoTデバイスが徐々に身近になる一方で、その多くは接続をWi-FiやBluetoothに頼っている。こうしたところに5Gが入り込んでいければ、思わぬヒット商品が生まれるかもしれない。現状では、「データシェア」のような複数回線を持つ仕組みが不十分なため、5Gでの多端末接続を前提に、各社にブラッシュアップしてほしいと感じている。
20周年を迎えたITmedia Mobileだが、通信規格にしておよそ2世代分を丸ごと見守ってきたことになる。次の節目は30周年。そのころには、5Gが日本全国で当たり前のように使えるようになり、6Gのサービスが開始されている可能性もある。そのサービスインをいち早く報じられるよう、ここからの10年の健闘にも期待したい。筆者も(発注さえしていただければ)、微力ながら編集部を支えていきたいと考えている。改めて、20周年、おめでとうございます。
関連記事
- 政府主導で進んだ料金値下げ/静かな船出も普及の兆しを見せた5G――2020年のモバイル業界を総括
コロナ以上にモバイル業界を振り回したのが、政府主導の「官製値下げ」だ。2020年は1年を通じて料金が話題を集めた。3月にMNOが3社そろって5Gのサービスを開始したのも、モバイル業界にとって大きな転換点だった。AndroidのミドルレンジモデルやiPhone 12シリーズの登場を機に、普及の勢いに弾みをつけている。 - 「5G」商用サービスがいよいよ開始 ドコモ、au、ソフトバンクの戦略はどう違う?
3月25日にドコモが、翌26日にはauが、さらに27日にはソフトバンクが商用サービスを開始し、大手3キャリアの5Gがついに出そろった。ネットワークの構築の仕方や端末ラインアップ、料金設計には方向性の違いもある。それぞれの戦略を見ていこう。 - 公約を果たしたドコモ、果たせなかった楽天/スマホは二極化が進む――2019年のモバイル業界を振り返る
改めて振り返ってみると、2019年は携帯電話の「料金」や、スマートフォンの「端末代」に大きな注目が集まった。ドコモは公約通りに分離プランを提供したが、楽天モバイルの公約は果たされなかった。分離プランの拡大に伴い、端末の価格は見かけ上、高額化するようになった。 - 行政からのメスで「料金」が焦点に/苦戦を強いられるMVNO――2018年のモバイル業界を振り返る
2018年は、モバイル業界に行政からのメスが入った1年だったと総括できる。2017年から徐々に勢いを落としていたMVNOについては、LINEモバイルがソフトバンク傘下に入るなど、合従連衡の動きがさらに強まった。端末を見ると、Huaweiの躍進やOPPOの新規参入に沸いた1年だった。 - 「ポイント会員」「ライフデザイン」「群戦略」 新規領域に活路を見いだす3キャリア
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2017年度決算が出そろった。各社とも業績は好調ながら、戦略の軸足を非通信領域に移しつつある。3社の業績をまとめて振り返るとともに、新たに打ち出した戦略の詳細を見ていきたい。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.