Googleが考えるプライバシーの在り方 「広告にはユーザーデータを使わない」(1/3 ページ)
Web検索やマップ、カレンダーなどさまざまなWebサービスを展開するGoogleは、同意を得た上でユーザーの情報を収集、分析し、サービスに活用している。同社はサービス設計の段階でプライバシーに配慮し、世界最高水準のセキュリティを確保することを基本方針としている。Googleがユーザー同士の会話を盗み聞きすることもないという。
Google Japanは6月23日、プライバシー保護の取り組みに関するオンライン記者説明会を実施した。
Web検索やマップ、カレンダーなどさまざまなWebサービスを展開するGoogle。同意を得た上でユーザーの情報を収集、分析し、サービスに活用している。同社にはプライバシー保護を担当するチームが数百人規模で存在している。今回プレゼンテーションを行ったGreg Fair氏もそのチームの一員だ。
Googleはプライバシー保護の基本方針を以下のように定めている。この方針はGoogleの全てのサービスで適用される。
- サービス設計の段階でプライバシーに配慮する
- ユーザー自身でGoogleに共有するデータを管理できるようにする
- 世界最高水準のセキュリティを確保する
Googleはどのようにデータを使うのか
Googleは多くのサービスでユーザー情報を活用しているが、その実態について認識している人は多くはないだろう。Fair氏は実際のサービスを例として、Googleがどのようにユーザー情報を活用しているのかの一端を紹介した。
例えばGoogle マップには、混雑している道路や、電車内の混み具合を表示する機能がある。これはユーザーの位置情報をもとにGoogleが交通状況を解析しているという。その際、ユーザーの位置情報データは匿名化を施し、どのユーザーの移動履歴なのかを特定できない形に加工した上で処理される。
また、Google マップではユーザーが滞在した場所を記録するロケーション履歴という機能が存在する。これはユーザー自身がサービスに同意した時点で初めて有効となる(オプトイン)方式となっている。
Gmailはメールボックスに広告が表示されるが、これはメールの内容とは関係ないものとなっている。Googleはユーザーのパーソナルデータのうち、特に機微な情報は広告では使わないというポリシーを定めている。GmailのメールやGoogle ドライブのデータ、Google フォトの写真の内容は広告表示には用いないとしている。また、ユーザーの人種や性指向といった情報も広告表示では利用しない方針だ。
Google 検索では多少の入力ミスをしても、正しい検索結果が表示される。この検索結果のオートコンプリート機能は、過去に同じような検索ミスをした人の情報をもとに作られている。
Googleは盗み聞きしない
Googleの収益源の大部分はオンライン広告だ。Google 検索やGmailのような無料サービスは、ユーザーがクリックした広告について、Googleは広告収入を得る。また、Webサイト上のAdSense広告では、広告収入がGoogleとWebサイトの運営者で分け合う仕組みとなっている。
一方でGoogleは、広告について以下のようなプライバシー保護ポリシーを定めている。
- 広告のために利用者の個人情報を販売しません
- 広告のパーソナライズのために機微は利用しません
- 利用者に代わってプライバシーを守ります
例えば、Google 検索には検索結果の上部に広告も表示されるが、必ず「広告」と識別できる表示がされているこの広告表示においては、ユーザーの機微な情報は使用されない。
ただし、アクセス情報などから得られたユーザーの大まかな現在地や、Googleサービスを利用しているWebサイトの表示履歴などから得られた情報については、広告の最適化のために使用されている。
なお、役に立つと判断された広告が存在しない場合、広告が表示されない場合もあるという。Fair氏は「実は、Google 検索では広告が表示されない場合の方が多い」と明かしている。
Googleでプライバシー保護のための技術を開発しているFair氏には、うんざりするほど聞かれる質問があるという。それは「Googleは会話を盗み聞きしているのではないか」というものだ。Fair氏は「絶対にしない(absolutely not)」と答えている。
盗み聞きの懸念を抱く人は、「家族がチョコレートの会話をしたら、Google 検索でチョコレートの広告が表示された」といったような話をするという。Fair氏いわく、こうした状況はありがちなことだが、Googleが会話を盗み聞きした結果ではないという。例えばユーザーがこれまでにチョコレートの通販サイトにアクセスしていたり、チョコレートを買いそうな時間帯にアクセスしたり、たくさんのチョコレート会社が広告を出稿していたりといった事象が重なることで、こうした広告が表示される説明している。
Google Nestシリーズなどのスマートスピーカーで使われるGoogle アシスタントは、ライトの点灯状態でそのステータスが表示される。「ねぇ グーグル」と発話ワードを言わない限りは、録音されることはない。
発話ワードで起動したくない場合、スマートスピーカー本体のスイッチ操作でマイクをオフにできる。
Google アシスタントを操作した直前の発言をGoogleのサーバから消去したいときは、「ねぇ グーグル、今言ったことを忘れて」と指示すれば消去できる。また、「ねぇ グーグル、ゲストモードにして」と発話すると、Google アシスタントに指示した発言が保存されないゲストモードに入ることも可能だ。
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