nuroモバイルに聞く、新料金プラン「バリュープラス」の狙い 5GやXperiaの展開は?:MVNOに聞く(3/3 ページ)
MVNO各社が新料金プランを打ち出す中、ソニーネットワークコミュニケーションズのnuroモバイルも「バリュープラス」を打ち出した。新料金プランでデータ容量8GB以下のユーザーにターゲットを絞り、低価格を実現。音声通話付きの3GBプランはわずか792円。5GBと8GBのプランには、「Gigaプラス」という仕組みも用意した。
音声の自動プレフィックスは導入予定
―― 新料金プランも、音声オプションはそのままでした。自動プレフィックスの提供についてはいかがでしょうか。
亀井氏 他社で今、提供しているのはOCN モバイル ONEだけで、さらに具体的に言うとドコモ回線だけだと思います。私どもにも話は来ているので、鋭意検討中です。後れを取らないタイミングで導入したいと考えています。
―― トリプルキャリアですが、auやソフトバンク回線はどうなるのでしょうか。
亀井氏 現時点で明確な案内があるのはドコモだけで、au、ソフトバンクからも案内があれば取り入れていきたいと思っています。
―― ということは、提供するとしたら、まずドコモ回線からという形になりそうですね。
亀井氏 そうなります。
神山氏 本当はいつやるかをここで言いたいのですが、まだ詰め切れていないのが現状です。
―― 自動プレフィックス付与と並んで、音声定額のメニューを増やすことはお考えでしょうか。完全定額はいかがでしょうか。
神山氏 現状では10分定額を提供していますが、その他のプランも検討しています。ただし、完全定額を今すぐやるかどうかは、明言できる状況ではありません。
―― 10分定額の利用状況はいかがですか。
神山氏 音声通話を使われるお客さまの中で、電話を中心に使われている方にはいいオプションだと思います。ただ、自動プレフィックスは定額という切り口だけではなく、使い勝手がよくなる部分に期待されているところもあります。使い勝手がよくなることに関しては、前向きに検討しています。
端末は在庫切れを起こさないオペレーションが課題
―― ここまで3プランとしてお話を進めてきましたが、もう1つ「お試しプラン」があります。プレスリリースの表にも載っていませんでしたが、これはなぜでしょうか。
神山氏 お試しプランは、旧プランのプランが1つ残る形になっていて、音声プランがありません。本当にデータを少ししか使わない方が、継続して申し込まれている感じです。
―― 音声を付けて、音声利用に特化したプランにすることもできたと思いますが、なぜそれをしなかったのでしょうか。
神山氏 新プランが安いので、ここに音声を付けても……というのがあります。もともとは音声付きで1000円という値段が付いていたので、今の3GBプランより高くなってしまう。残しておくのは意味がないということで、データを低速に使いたい方に向けて継続していくことにしました。ニーズは一定数あります。
―― 発表会でも指摘されていましたが、端末のラインアップが寂しいような気がします。ここを拡充していくご予定はありますか。
神山氏 分かりやすいのはXperiaだと思いますが、これは前回もSIMフリー端末が出たときには積極的に販売しました。今後も計画が出てくれば、取り扱っていきます。おっしゃるように、ラインアップ的に新しいものがなかったり、在庫切れが起こったりしているので、この部分に関しても在庫切れを減らせるようなオペレーションができないかを検討しています。
亀井氏 申し込みが4倍ぐらい増えていることもあり、なかなか端末の在庫のコントロールが難しいという事情もあります。ここは、トライ&エラーでやっていて、まだ在庫切れを起こしている日もありますが、オペレーションは改善しているところです。
―― ソニーには、リアルな店舗のソニーストアもありますが、ここと連携するということはないのでしょうか。
田中氏 今はオンラインが中心で、ご契約されている方もほぼオンラインです。店頭でお手続きいただくようなことも考えとしてはありますが、店頭オペレーションだと説明義務も多く、そこを完全に配備するより、オンラインで契約できた方がいいということでこのような形になっています。
神山氏 オペレーションの人手がかかるというのは、コストがかかるということです。結果として、お客さま還元のある競争力の高いプランが作りづらくなります。基本的には、オンラインでやっていく方が、よりお得なプランを提供できることになります。
―― ahamoやpovo、LINEMOでオンラインに注目が集まったのは、nuroモバイルにとってもプラスになったのでしょうか。
神山氏 オンライン契約をハードルに感じるお客さまは、確かに多かったですね。特にMNOと契約している方は、ショップに行くのが当たり前になっていましたが、オンラインでしか契約できないプランがあるとなれば、それが当たり前になります。オンライン同士で比較することになれば、われわれも検討の俎上(そじょう)に載ります。これはある意味でチャンスだと捉えています。
ソフトバンク回線で使い放題のプランも提供
―― 新プランとは別に、Wi-Fiルーター用の使い放題プランを提供されています。これはどういった経緯で導入したのでしょうか。
亀井氏 4月のタイミングで使い放題に変えましたが、プラン自体は1月から提供しています。コロナ禍で、テレワークの需要が増えてきているからで、そこに向けて提供しています。
―― 再販のSIMカードを使って大容量プランや使い放題のプランを提供する会社もありますが、仕組みは同じでしょうか。
神山氏 いえ。われわれのサービスは、再販やクラウドSIMを使ったものではありません。MVNOとして、われわれが品質まで管理している回線になります。
―― ソフトバンクだけだったので、再販かと思っていました。
神山氏 ソフトバンクの卸値が一番安くなったことがあります。大容量プランは、われわれにとってトライアルでした。20GBやそれ以上の大容量に、一定数のパイがあることは間違いありません。そこに対して、トラフィックコントロールがうまくできるのかどうか。実験しているわけではありませんが、提供しながらお客さまの使い方を分析し、コントロールをかけることを今やっています。コロナ禍がポストコロナになったとき、もう少し外に出る機会が増えると、データ容量が増えることも考えられます。そのときのために、今からやっているということです。
5Gの提供も検討している
―― nuroモバイルでは、現状5Gが提供されていません。MVNOの中でも徐々に5Gに対応する会社が増えている中、ここについてはどうお考えでしょうか。
亀井氏 mineoが12月に、6月からはIIJmioもサービスを始めていて、各社検討している状況だと思いますが、弊社も検討しています。端末も5G対応のものが増えていますからね。そんなに遅くならないタイミングで、導入したいと考えています。ただ、この段階ではNSA(ノンスタンドアロン)の5Gなので、全てのメリットは出せません。お客さまの状況や環境によって、享受できることとできないことがあります。
―― 5Gの追加料金を取るかどうかは、MVNOによって考え方が分かれています。nuroモバイルはどうでしょうか。
神山氏 難しいですよね。フルの5Gを提供できれば料金も……となりますが、今の5Gだと難しい。そうなったときにお金をいただけるのかどうかは、議論しています。ただ、200円程度のプラスになってしまうと、(もともと安いので)全体に占める比率がかなり高くなってしまいます。期待と現実のギャップがあり、お金を取るのは難しいですね。最終的な結論には至っていませんが、取りづらいとは考えています。
亀井氏 段階的に対応が必要で、NSAは設備を4Gと共有しているので、メリットも一部になってしまいます。これが4Gと5Gで設備が分かれることになれば、高速大容量だけでなく、低遅延や多端末接続などのメリットが出てきます。まずは5Gを低いハードルで使っていただくためには、無償でいいのでは……と、考えているところです。
取材を終えて:旧プランからの移行をどう増やしていくか
値下げに踏み切った同業他社と比べても一段低い料金を打ち出したnuroモバイルだが、そのインパクトは小さくなかったようだ。新規契約者が4倍に増え、流出との差し引きでプラスに転じたのは、新料金プランの導入が功を奏したとみていいだろう。神山氏が語っていたように、上位プランの魅力をきちんと伝えていければ、収益性も高まるはずだ。
一方で、旧プランからの移行比率が低いのは少々気になった。確かにMNOと比べればもともとの料金プランでも十分安いのは事実だが、移行すれば大多数のユーザーの負担額は下がる。顧客満足度の向上を考えると、移行してもらった方がいいだろう。この傾向が続くようであれば、新旧プランの条件の違いをなくして自動移行にするなど、一歩踏み込んだ対応が必要になりそうだ。
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