「明確な理由がない限りNGを出さない」 ネットプロテクションズの“後払い決済”戦略(3/3 ページ)
後払い決済サービス「NP後払い」などを提供するネットプロテクションズが、国内外の後払い決済サービスの現状について説明。日本と海外では決済方法に対する考えの違いがあると説明しつつ、同社がサービス水準を向上させるための取り組みや業界の今後についても言及した。
疑わしい取引はAIと目視でチェック
同社が違いの1つとして挙げるのが「明確な理由がない限りNGを出さない」というスタンスだ。利用枠を超過している、未払いがある、不正取引として検知されたという明確な理由があれば与信で却下するが、それ以外は基本的に申し込みを通すようにしているという。
これには、「他社でやっているところがほぼない」(高田氏)という目視確認もポイントだ。「明確な理由はないが、グレーな取引である」と判断された申し込みは人の目で確認することで不正の見逃しを防いでいる。
不正検知では機械学習を用いたAIも活用しており、不正取引かどうかの判断も行っているが、仮に目視確認を経て与信を行い、その結果不払いが発生した場合も、そうした点も学習させることで精度が向上する。「グレーなら一律で却下する」というルールにすると、実際に貸し出した結果が分からず、不正利用データを学習させることができないが、貸し出しをすれば結果が学習でき、「与信力は上がる一方」と高田氏。
その結果、目視確認と同程度の精度でAIによる不正検出が可能になったとして、目視確認をしない加盟店を増やしているという。今後、全加盟店で目視確認なしの与信を提供する計画だという。目視確認が入った場合、5分から2時間の審査時間が必要だったが、AIのみになれば即時審査が実現できるため、ユーザー側のメリットも大きい。
利用枠を5万円と比較的少額にして、分割払いも提供しないため支払いが分かりやすい点もメリットだ。「誰にでも身の丈に合った額」(高田氏)であるため貸し倒れのリスクも減る。支払いが遅れた場合の遅延損害金を過剰に請求しないことも特徴で、海外ではこの損害金の高額化が問題になり始めているそうだ。
豪州では当局の注意勧告によって業界団体が行動指針を定め、英国では規制の導入が決定しているそうで、遅延損害金を削減する方向になっているという。日本ではまだ問題は大きくなっていないが、2021年5月には同社を含む後払い決済サービス7社が加盟する業界団体が設立され、「自主ガイドラインを策定する可能性もある」(高田氏)という。
同社では、台湾で後払い決済サービス「AFTEE」を提供。一括払いと長期分割の機能を備えたサービスで、今後台湾以外にもサービスを拡大していきたい考え。国内とは異なるニーズに合わせたサービスとして、海外市場でのサービス拡大を狙っていく。
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