4キャリアの5Gはどれだけつながり、どれだけ速い? iPhone 13シリーズで比較検証(1/4 ページ)
2020年に「iPhone 12」が発売された直後に5Gがどれだけつながるかを検証したが、当時はエリアが駅前などに限られていた。現在は山手線沿線ならばほぼ全域で5Gピクトが表示されるようになったが、実際はどうなのか?
iPhone 12シリーズに続き、5Gに対応したiPhone 13シリーズ。5Gエリアは着実に広がっているとはいえ、実際の通信速度はどれほどあるのか。いくつかの場所で調べてみた。
iPhone 12シリーズの発売直後に同様の調査をした際には、そもそも各社とも5Gピクトになるエリアが駅前に限られていたが、今回の検証では、山手線沿線ならほぼ全域で5Gピクトを目にするようになった。高速通信できるエリアは限られてはいるが、2020年秋に試した際に感じた「点」のようなエリア化からは脱し、少なくとも東京山手線内に限っては面でのエリア化が進む状況となっていた。
その上で、東京都心における5Gエリア化状況はauとソフトバンクが先んじており、ドコモは通信できるエリアが限られており、特に5Gの電波が入る境界エリアでは反応速度が遅くなる傾向にあった。楽天モバイルは検証時点で、二子玉川エリア以外では5Gでの高速通信を体感することはできなかった。
ただし、人の利用が集中するような駅、空港、商業施設では、各社とも積極的なエリア整備を進めているようだ。千葉市の大規模展示場・幕張メッセでは、ドコモとauの5G通信が高速だった。特にエントランス付近では両社とも1Gbpsに迫る速度を記録していた。
5Gで高速な通信が可能になるというのは、単にスピードテストアプリ上で良い数字がでるだけ以上のインパクトがある。例えば500Mbps近い速度が快適にでるような場所では、Netflixの動画再生すら数秒で完了する。常に通信が発生するようなSNSでも近年では画像や動画によるコミュニケーションが多くなっていることから、その通信速度の速さは体感にも大きく影響してくるはずだ。
なお、今回の検証にあたって、キャリア各社に「東京都心で5Gが体感できるスポット」をリクエストした。その一覧から各キャリア1〜2地点をピックアップして実地で測定した。各社のおすすめスポットは、記事の末尾で紹介する。
NTTドコモ:エリア端が厳しい
ドコモの5Gは「入れば速いが入りづらい」という印象で、au、ソフトバンクと比べてもエリアは限定的になるものの、旅先で訪れる要所をカバーしている印象だった。例えば羽田空港、那覇空港では、時間をつぶすエントランスホールで下り400Mbpsを超える高速な通信が可能だった。
一方で、ドコモの5Gではユーザーから通信が安定しないという指摘が相次いでおり、「パケ止まり」という言葉も生まれた。同社もこの状態を認識しており、対策を施すことを発表している。検証時点では対策の実施途上にあるのか、5Gへの接続自体が抑制的に運用されている状況だった。
ドコモでは5Gのサービス開始当初、割り当てられた新周波数帯を中心にエリア整備し、4G LTEの既存周波数帯の5G転用を抑制する方針を取っていた。同社の吉澤和弘前社長は5G転用について「本来の5Gの速度が出ない」と否定的なコメントをしたことがあり、一部で「なんちゃって5G」と揶揄(やゆ)されたこともある。
この「なんちゃって5G」の指摘にも一理ある。原理上、4G LTEを転用した周波数帯では、5Gに転用しても高速にはならないからだ。ただし、この「なんちゃって5G」を使わないという方針は、エリア整備の途上段階にある現時点では裏目に出ているようだ。
新周波数帯による5Gは圏内に入れば高速だが、既存周波数帯と同じ範囲をカバーするためには多くの基地局が必要となる。特に問題となるのは、5G基地局のサービスエリアの境界にいるときだ。通信が安定せず、4G LTEの基地局に接続し直すために時間を取られることがある。また、5Gエリアにいるときも、すぐに高速な通信にならず、通信を始めてから数秒は待つ必要がある。5Gの境界エリアでは、この性質によって通信に数秒程度のラグが生じることが多く、結果として速度も伸び悩んだ印象だ。
なお、今回の検証では詳しく見ることができなかったが、ドコモは地方都市での5G展開については他社に先んじている。筆者は9月のiPhone 13発売前に宮城県を訪れる機会があったが、ドコモは気仙沼市や石巻市などで広範なエリアを5G新周波数帯でエリア化していた。
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