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インタビュー

KDDIに聞く「au PAY」戦略 苦境の加盟店に寄り添い、アプリの機能改善も進めるモバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

au PAYは、共通ポイントのPontaと連携することで利用シーンの拡大を図っている。コロナ禍で店舗運営が厳しい状況を鑑み、加盟店向けには手数料を2022年9月まで無料としている。au PAYアプリはUIも改善しながら機能強化を進めている。

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 KDDIが提供するコード決済サービスの「au PAY」。携帯キャリア提供の決済サービスとしては、共通ポイントのPontaと連携することで利用シーンの拡大を図っている。今回、au PAYの現状に関してパーソナル事業本部サービス統括本部金融決済ビジネス部長の長野敦史氏とパーソナル事業本部マーケティング本部au PAY企画部長の菊池良則氏に話を聞いた。

au PAY
KDDIの長野敦史氏(右)と菊池良則氏(左)

コロナ禍で利用が拡大するau PAY

 現在、au PAYの使われ方は「コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーといった日常利用が多い」と長野氏。コロナ禍においては、外出自粛や非接触のニーズでキャッシュレス決済が拡大。請求書払いでもau PAYが徐々に使えるようになっていて利用も増加している。

 6月にはデリバリーサービスのmenuに対応したことで、デリバリーの利用も拡大しており、au PAY全体として利用者数、回数ともに増加しているという。

 2021年9月時点でau PAYとau PAYカードの会員数は3460万、au PAYカードが700万を突破しており、au PAY単体では2700万程度の会員数を確保している。2019年8月にau PAYをキャリアフリー化し、遅れて2020年5月にau PAYカードをキャリアフリー化。キャンペーンなどを実施することで利用者を拡大し、「auユーザー以外の利用者も順調に増えている」(菊池氏)という。

au PAY
au PAYとau PAY カードの会員数は3400万を突破した

 auの回線ユーザー以外でもau PAY決済で0.5%、au PAYカードのチャージで1%、合計1.5%の還元率は変わらず、「継続して利用してもらえるケースが多い」と長野氏。やはり「Pontaポイントをためている人は利用している傾向が強い」(長野氏)という。

 コロナ禍でもau PAYの利用は拡大しているが、それが直接「コロナ禍が理由かは分からない」と菊池氏は言うが、au PAYの成長は「リニアに伸びている」そうだ。2020年4月〜5月ごろは、au PAYの利用にもコロナ影響があったそうだが、スーパー、コンビニといった営業している店での利用は伸び、旅行などの金額の大きい利用でクレジットカードが縮小していたという。

加盟店手数料無料化を継続も、「採算は考えている」

 コロナ禍でも順調というau PAYだが、PayPayの加盟店手数料有料化に対して、加盟店手数料無料化を1年延長している。もともと業績見通しに織り込み済みだが、「かなり広い加盟店が対象になる」(菊池氏)施策だという。

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au PAY加盟店の決済手数料は、2022年9月30日まで無料としている

 ただし、今回の施策は「他社の影響ではない」と菊池氏。加盟店からはこのコロナ渦で「非常に苦しい」という声があり、延長を決めたそうだ。コロナ以外にも、大雨の影響などもあって、特に中小加盟店が苦戦している中、その支援も踏まえての施策だったという。

 au PAYは「お客さまの接点」だと菊池氏。そのため、決済サービス単独で考えるのではなく、スマートマネー構想の入口としての役割を担っている。決済は毎日のように使われるもので、「タッチポイントとして築きやすい」と長野氏。そのために、まず利用回数が増えるような施策を打ち出して、同時に金融サービスへとつなげることを目指してきた。

 例えばauじぶん銀行と発表したauまとめて金利優遇では、通信と銀行をセットで利用するといったクロスユースが広がっており、これを銀行とスマホ決済、スマホ決済と証券、といった具合にクロスユースを高めていく方針だ。

 加えて、コマースやエンターテインメント方面での利用も拡大し、au経済圏での利用を促進する環境作りを継続。金融、エンターテインメント、コマースなど、auによるさまざまなサービスへの波及を見込んでいるため、決済手数料だけを収益源とは考えていない。

 「au PAYを使うほど、au通信の利用がより長くなる傾向がある」(菊池氏)。本業である通信事業への好影響もあり、そうした波及効果を重視しているそうだ。ただし、もちろん「プロダクトとして採算は考えており、赤字のままでいいというわけではない」と同氏は強調する。

売り上げが1万円を超えると即時入金

 とはいえ、手数料の無料化を継続すると単体での黒字化は難しい。2022年10月以降の有料化に関しては「決定していない」(菊池氏)という。その時期になって、状況を踏まえてどうするのかを決定するそうだ。ただ、加盟店手数料が無料である、というだけが魅力というサービスにはせず、「魅力的なものにするのが事業者としての責務」と菊池氏は話す。

 加盟店側の希望は利用客の拡大につながることであり、「加盟店の声を聞きながらニーズを探っている」と菊池氏。クーポンの提供か、それ以外のサービスがあるのか、金融サービスとの連携など、どういったサービスを提供すればいいのか見極めていきたい考えだ。

 その中で、売り上げをなるべく早く入金してほしいという声に対しては即時振込サービスを提供。振込手数料もau側が負担しており、ニーズをカバーしている。売り上げが1万円を超えると即時入金するというもので、一定額を超えないと入金はされないが、少額が頻繁に入金されることを希望する声も少なく、「即時入金される金額を下げてほしいという声はあまりない」(同)そうだ。

 加盟店向けにはau PAY for BIZを提供し、決済、返金、取引記録、振込口座の設定といった機能を提供しているが、顧客管理機能などはなく、売り上げ管理機能のみだ。これに対しては今後機能を拡張していく方針を示している。

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