HISモバイルに聞く“290円プラン”誕生の背景 OCNに対抗して価格ナンバーワンを維持:MVNOに聞く(2/3 ページ)
5月中旬に新料金プランを導入するHISモバイルの目玉になっているが、1GBプランだ。通常だと550円(税込み)かかるが、1カ月のデータ使用量が100MB未満だった場合のみ、金額が290円まで下がる。290円という料金で狙うのが、フィーチャーフォンからの乗り換えを考えるユーザーだ。
実は7GBプランが一番値下げをした
―― 個人的には、7GBで990円のプランが実は一番多くのユーザーが加入するのではと思いました。割と普通に使えて1000円以下というのも安いですよね。
猪腰氏 ありえると思っています。実は一番値下げしたのがここなんです。7GBになると、カバーできる方が非常に多くなります。そこが1000円以下という掛け算で、相乗効果が一番出るのではないでしょうか。「よく分からないけど、1000円出しておけばOK」という方は意外と多い。1GBや3GBだと足りるのか足りなくなるのか分かりませんが、7GBあればたいていの方は間に合いますからね。ガラケーからガラケーに変える人より、ガラケーからスマホに変える人の方が多いので、その際に何を選べばいいのか分からないという場合、7GBは安心感があります。そのような分かりやすさも含めてつけた料金です。
―― 大手キャリアも、以前は7GBが主力のデータ容量だったので、移りやすいというのはありそうですね。
猪腰氏 統計的に見ても7GBが結構多かったですね。(プランの区切りとして)1GB、3GB、7GBとなっているところも多いので、比べられやすいようにして、あえて安いところに持っていきました。
―― 値下げの原資として、卸価格や接続料の値下げは前回導入した料金プランに反映していたと思います。今回はどのような形で値下げできたのでしょうか。
猪腰氏 1つは利幅を削っていることです。もう1つは、2月に発表された(接続料の)届け出で料金がかなり下がっていたことです。前回は1GBや3GBをギュッと絞っていた反面、5GBや7GBはいっぱいいっぱいであまり(値下げが)できていませんでしたが、そこが見透かされてしまいました。せっかくユーザーが来ても契約していただけないのであれば、ゼロを掛けているようなもので(収益も)ゼロになってしまいます。どうせ今ユーザーがいないのであれば、もっと踏み込んでもいいという思いはありました。
料金プランは何回も作っていますが、やはり難しいですね。開発期間や費用的なところもあり、寿命が短いプランはダメだという考えもありました。ワンプランで2、3年持つのであれば、そこを先取りした価格にしたい。みなさん、大容量に行かれていますが、OCN モバイル ONEが550円プランを出した時点で、その下には先行きがないと思っていると判断しました。上(のデータ容量で)で無理をして戦うと、ドコモのahamo大盛りのようなものもありえますが、その領域には踏み込まないようにしました。緩やかには戦うので選択肢がないのはダメですが、取りあえず80%のユーザーに刺さればということでやっています。
音声通話の従量課金は日本通信より安く
―― ちなみに、現行の料金プランは全てのデータ容量をひっくるめて「格安ステップ」という総称がついていますが、今回は「新料金プラン」としかうたっていません。
猪腰氏 それは、これから付けます(笑)。今、ちょうど最終選考に入っているところです。
―― 格安ステップをそのままにしつつ料金だけ下げることもできたと思いますが、そうしなかったのはなぜでしょうか。
猪腰氏 検討をしている中で、「あれができる」「これができる」ということがあり、それが全て同じ料金プランの枠内でできるのかが決まらなかったからです。そもそも別プランと決めていた方が、何かを動かすときに融通が利きやすい。実は発表会を開催するギリギリのギリギリまで、100MBを290円で行くこと、そこを従量でやることが決まっていませんでした。価格とデータ容量のプロットはある程度決まっていましたが、そこは本当にギリギリでした。別プランとして走らせることだけは決めていましたが、100MBの設計思想が違うので変えてよかったと思います。
―― 通話料が安いのはMVNEの日本通信がドコモから調達している音声卸の価格を反映してのことだと思いますが、従量部分の30秒9円は日本通信より安くなっています。日本通信の方が音声通話で利益を出している、ということでしょうか(笑)。
猪腰氏 想定される原価があり、その中で30秒11円(日本通信の音声通話の価格)で取れる利益があります。ということは、原価はもっと安い。3Gのユーザーが安く使えるという特徴を出すためにも、音声通話が安くないとダメだと思っていました。最安値を取れるところでは取るという方針で、30秒9円にしています。音声通話の通話料は、もともと勝負のしどころではないので、あえて皆さんここでは戦いませんが、われわれはこれも選択肢として捉えた方がいいと考えました。
現状では、主回線としてガンガン使われているというわけではないので、逆に言えば使う方が増えればトータルでメリットが出ます。日本通信から回線を仕入れることで、結果的に他社より安くできているところを世の中に還元した形ですね。ただ、実は2円安くしたかったのではなく、消費税と小数点の兼ね合いで10円にできなかったので9円にしたのですが(笑)。
―― そこはシステム都合だったんですね(笑)。とはいえ、通話定額のオプションも安いと思います。
猪腰氏 オプションとしては最安値ではありません。ただ、基本料金が最低290円と安いので、音声のかけ放題だけを使うなら弊社が安くなります。
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