今、外部メモリスロットを備えたスマートフォンが減っている理由(1/2 ページ)
近年のスマートフォンでは、Android端末でもSDカードを使用できない機種も多く存在している。比較的高価なスマートフォンにてSDカード利用できない機種が多いが利用できなくなる傾向にあるのか、少し掘り下げてみようと思う。
近年のスマートフォンでは、iPhoneだけでなく、Android端末でも外部メモリスロットを使用できない機種も多く存在している。その理由はなぜか、考察したい。
外部メモリスロットを搭載しないスマートフォンの代名詞として、AppleのiPhoneが挙げられる。加えて近年ではAndroidスマートフォンにおいても、10万円クラスのハイエンド機種を中心に外部メモリスロットを利用できない機種が販売されている
2021年、日本でキャリアが発売した10万円以上のスマートフォンにて、外部メモリスロットを利用できる機種は、ソニーのXperiaシリーズとシャープのAQUOS R6(ソフトバンクより発売のLEITZ PHONE1を含む)にとどまった。SIMロックフリーで展開されたハイエンド機でもASUS Zenfone 8 Flipに限られる。
ハイエンドと呼ばれるスマートフォンで外部メモリスロットが利用できなくなりつつある理由としては端末の性能の向上、スマートフォン本体のスペース確保の難しさなどが挙げられる。
近年の高価格帯のAndroidスマートフォンでは「UFS3.1」と呼ばれる規格のストレージを利用している。こちらの読み出し速度(シーケンシャルリード)は規格値で約2100MB/秒となる。一方で、microSDでは一般的なUHS-I規格で100MB/秒前後となる。
かつてはmicroSDを内部ストレージ化できることもあったが、速度差を理由にパフォーマンスの低下にもつながるため、現在ではあまり推奨されていない。
microSDはあくまで写真や動画といったメディアの保存領域なので、高速である必要はない。そのように思われがちではあるが、動画撮影に関してはそうも言っていられない現実もある。
動画撮影性能については、昨今のハイエンドスマートフォンでは、4K解像度で撮影ができるものが多い。機種によっては8K解像度で撮影できるものもあり、高解像度撮影もここまで来たかと感心させられる。
ただ、4K撮影では撮影時のデータ容量が増えるのはもちろん、書込み時の伝送容量も多くなる。そのため、並のmicroSDでは書込み速度を確保できず、うまく保存できないこともある。
4K撮影ではV30の表記がある(最低伝送保証速度が30MB/秒以上)microSDが望ましい。何も考えずに安価なmicroSDを選んでしまうと、うまく保存できないといったことにもなる。加えて、機種によって4K60fps撮影や10ビットカラー(10億色の色表現)での撮影なども可能であり、この場合伝送データ量は一気に増える。
このような環境では上位のUHS-II規格といったmicroSDでないと安心して保存するには厳しくなってくるが、UHS-II以上の規格に対応しているスマートフォンは皆無だ。
スマートフォンにおいてmicroSDはどれだけ頑張ってもUHS-Iの速度で頭打ちとなり、約100MB/s以上の速度で書き込むことはできない。そのため、高画質や高フレームレートで撮影する場合は本体ストレージで保存した後、microSDに転送するといった工夫が必要といえる。
端末の部品数増加によるスペース確保の難しさ
近年のスマートフォンは非常に高性能だ。それゆえに本体の発熱も大きいものとなっている。5年ほど前の冷却性能が追い付かずにパフォーマンス低下となった時期とは異なり、現在では多くの機種にて適切な冷却対策がされている。
2022年に発売されたハイエンド機種に採用されているQualcommのSnapdragon 8 Gen.1では、一昔前のゲーミングPCクラスの性能を持つ。これを十数Wの消費電力で動かすだけでもすごい話なのだが、高性能ゆえに相応の発熱もある。
高性能なプロセッサを搭載する関係か、近年のハイエンドスマホでは軒並みバッテリー容量が4000mA/h以上と大容量だ。一昔前のノートPCやタブレット端末がこのくらいの容量のものが多かっただけに、近年のスマホが大容量のバッテリーを必要とする事は性能向上を考えれば納得といえる。
加えて5G通信対応の本体設計、カメラユニットの大型化などの要素も加わる。パーツ数増加や部品の大型化などが本体スペースを圧迫している場合も多い。大容量のバッテリー、高性能な冷却媒体、5G対応などによる部品数増加を加味すると、microSDを収めるスペースを確保するのはかなり難しいといえる。
近年話題となる折りたたみスマートフォンでは、現時点で発売された全機種がmicroSDを利用できない。折りたたむ機構や本体の薄型化からスペース確保の難しさがうかがえる。
見ての通り、microSDを入れるという点では、限られた本体スペースを圧迫するといえる。SIMトレーの小型化、配置など各社工夫してはいるが、microSDそのものを小さくすることはできない。
加えて高速化を狙ってUHS-II対応としたら、さらに端子数が増えて部品数も増えてしまう。逆を言えば、microSDを廃せばその分のスペースが確保できるので、部品の配置にも自由度が増すといえる。
SIMロックフリー端末を求めるユーザーに支持を集めるmicroSDと2枚目SIMが干渉しないタイプのSIMトレーでは、かなり本体の容積を圧迫するといえる。2021年発売されたハイエンド端末でも物理SIMでこのタイプのものはASUS Zenfone 8 Flipでしか採用されていない。
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