近接無線通信「TransferJet X」の規格化が完了 実効速度で5Gbps以上、スマホへの搭載は?:ワイヤレスジャパン 2022
Transferコンソーシアムが5月24日、新たな近接無線通信規格「TransferJet X」の規格化が完了したことを発表した。60GHz帯のミリ波を用いており、理論値で最大13.1Gbpsの通信を実現する。通信の開始時間(遅延)を2ミリ秒(0.002秒)に抑えたことも特徴。
Transferコンソーシアムが5月24日、新たな無線通信規格「TransferJet X」の規格化が完了したことを発表した。
TransferJet Xは、60GHz帯のミリ波を用いたIEEE802.15.3e準拠の近接無線通信規格で、従来よりも高速かつ大容量の通信が可能になった。
【訂正:2022年5月27日17時30分 初出時、使用する帯域を「60Hz」としていましたが、正しくは「60GHz」です。おわびして訂正いたします。】
2010年台前半から半ば頃まで、TransferJetを内蔵したデジタルカメラやSDメモリカード、USBアダプターなどが販売されていた。携帯電話では、2015年に発売された「ARROWS NX F-04G」と「arrows NX F-02H」がTransferJetを内蔵しており、当時の転送速度は375Mbpsだった。
新たなTransferJet Xでは、最大13.1Gbpsという高速大容量の通信を実現する。これにより、4KやVRなどの大容量コンテンツをスピーディーに転送可能になる。13.1Gbpsという速度はあくまで理論値だが、実効速度で5Gbps以上出ることを確認済みとのこと。これなら、2時間の映画(640MB)をわずか1秒で転送できる。
通信の開始時間(遅延)を2ミリ秒(0.002秒)に抑えたことも特徴で、瞬時に通信ができるため、改札機やゲートを通過したユーザーのスマートフォンに大容量のデータを送信するといったシーンにも向いている。
Wi-FiやBluetoothとの違いとして、Wi-Fiは100mほど、Bluetoothは10mほど離れていても通信できるが、TransferJet Xは原則として10cmまでの近距離で通信をする必要がある。ただし、送信アンテナを利用することで、通信距離を10m程度まで延長することができ、改札機やゲートでも使用できる。またTransferJet XはWi-Fiやモバイル回線(LTEや5G)と異なり、1対1で通信をするため、人の多い展示会や駅などでも安定した高速通信が可能。NFCも近距離通信だが、こちらは決済やタグの読み取りなどに使われ、大容量の通信には向かない。
5月25日〜27日に開催された「ワイヤレスジャパン2022」では、TransferJet Xの技術デモを実施していた。TransferJet Xに準拠したSoC(システム・オン・チップ)を内蔵したUSBアダプターをスマートフォンに接続し、タッチポイントと呼ばれるデバイスにスマホをかざすだけで、大容量ゲームコンテンツや動画を瞬時に転送できることが確認できた。この高速ダウンロードシステム「touch and get」を商業施設や店舗などで導入すれば、Wi-Fiや5Gなどの通信環境に依存することなく、手軽に大容量コンテンツを入手できる。
F-04GやF-02Hのように、スマートフォンにTransferJet XのSoCを内蔵することも考えられるが、SoCはアンテナを含めて10mm×10mmのサイズ。スマートフォンの薄型化が進む昨今のトレンドを考えると、外付けのUSBアダプターやケースなどを使う方が現実的といえる。
スマートフォンだけでなく、監視カメラやドローンなどで撮影した映像を転送するシーンも想定される。会場では、カメラが撮影した映像を、有線と無線(TransferJet X)でリアルタイムで転送し、双方で遅延や画質に差がない模様を披露していた。
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