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宇宙に自律的な通信インフラを ドコモ5G Evolution & 6Gの取り組みワイヤレスジャパン 2022(1/2 ページ)

「ワイヤレスジャパン 2022」が5月25日から27日まで開催された。26日にNTTドコモの常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長の谷 直樹氏が講演。「サステナブルでWellbeingな社会の実現に向けて」と題し、5G、さらに6Gに向けたドコモの取り組みを紹介した。

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 5月25日から27日まで開催された「ワイヤレスジャパン 2022」では、26日にNTTドコモの常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長の谷直樹氏が講演。「サステナブルでWellbeingな社会の実現に向けて」と題し、5G、さらに6Gに向けたドコモの取り組みを紹介した。

docomo NTTドコモ 5G
NTTドコモ 常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長 谷直樹氏

 ドコモは2022年1月から新ドコモグループとして再編されたが、2021年秋に中期経営計画を発表している。その中期戦略のポイントは3つあると谷氏はいう。

 1つは通信事業、スマートライフ事業、法人事業の3事業を軸とすること。それらをグローバルにも展開する。2つ目は、この3事業のうち、コンシューマー通信事業は顧客基盤を拡大していくが、今後、法人事業とスマートライフ事業を大きく伸ばしていくこと。3つ目はR&Dで、各事業を支えると同時に、世界をリードしていくような最先端のテクノロジーを研究開発していくことだ。

 谷氏は、本部長を務めるR&Dが何に取り組んでいるかを説明。ドコモのR&Dは、人に優しく、人に寄り添った社会、Wellbeing Societyを目指しているという。ネットワークの進化と新しいライフスタイルの創造とをうまく融合させながら、ユーザーに「新しい感動を届けるような仕組み、サービス、ソリューションを提供」すべく、研究開発に取り組んでいる。

 次に、5Gの現状について紹介した。ドコモの5G契約数は、2022年3月末時点で1100万人を超え、5G用に割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯の3つの周波数を活用した「瞬速5G」の基地局は、4月28日時点で2万局を超えている。ドコモの5Gはイギリスのモバイル調査会社Opensignalの調査で、「5G Raech評価(5Gユーザーが訪れた全ての場所のうち5Gに接続できた場所の度合いを示す指標)」「5G Download Speed評価」で国内1位という評価を得ている。

 また、5Gの能力を活用していくためには「パートナー様との協力、共創が重要」との認識から、4年前から5Gオープンパートナープログラムを展開。2022年3月末時点で5200社以上が参加している。

docomo NTTドコモ 5G
ドコモの5Gサービスの現状

5Gの進化に対する5つの取り組み

 谷氏は「5Gはまだまだ進化途上」と述べた上で、進化ポイントを5つ挙げて、それに対する取り組みを紹介した。

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ネットワークの進化に向けた5つの取り組みを紹介した

 1つ目は「仮想化・オープン化・グローバル化」だ。ドコモは6年前からコアネットワークの仮想化を進め、実用化している。直近では7割以上が仮想化され、切り替わっている状況だという。合わせて無線アクセスネットワーク(RAN)の仮想化の取り組みも進めている。これについてはオープンRAN(O-RAN)が非常に重要だと語った。

 「5Gでは特に、いろいろな場所、いろいろな環境でお使いいただきたい。そのためには、いろいろなベンダーさんの特徴、強さを適切に、スピーディーに組み合わせることが極めて重要。また、最近はサプライチェーンリスクもよく考えないといけない。そこで、インタフェースがオープン仕様に従ったものを導入する取り組みを進めている」(谷氏)

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コアネットワークの仮想化適用率は7割を超えた

 無線アクセスネットワークは、大きく親局と、そこからいろんなところに貼り出している子局、子局の先に無線機があり、その先にアンテナという構成になっている。ドコモは、装置間のインタフェースについてはO-RAN Allianceで規定されてるインタフェースに準拠したものを導入。これによって、O-RANアライアンスに準拠した装置であれば、さまざまなベンダーのさまざまな装置を組み合わせられる環境になっている。

 「グローバルのトレンド、技術の進化を踏まえると、今まさにそういった時期」(谷氏)ということで、現在は親局の仮想化に取り組んでいる。仮想化に合わせて、RIC(RAN Intelligent Controller)も実用化を進めている。

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装置はO-RAN準拠のインタフェース適用。現在は2、3で示される親局の仮想化に取り組んでいる

 O-RANについてはドコモだけではなく、グローバルな展開を目指している。「海外のオペレーターも非常に高い関心を持って取り組んでいる」とのことから、2021年に「5GオープンRANエコシステム」を発足。2021年11月時点で13社が参加している。

 また、横須賀にvRAN検証ラボを構築し、22年2月末からは「シェアドオープンラボ」という形で提供している。シェアドオープンラボでは、5GオープンRANエコシステムに参加している企業の製品を組み合わせた3つの環境を用意。海外からでもリモートでその環境に入り、自分のオペレーターの環境に合わせると、どのような能力が出るのか試すことができる。これらを通じて、グローバルにO-RAN、vRANの環境、仕組みを提供したいという考えだ。

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シェアドオープンラボで試せる組み合わせ3つ
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海外からリモートでラボにアクセスして性能を検証できる

 2つ目は「MECの高度化」。5Gは無線区間の低遅延化に貢献するが、一方、有線の低遅延化を具現化するためには、MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)のような仕組みが必要だ。ドコモではネットワーク内にクラウドの設備を導入し、「ドコモオープンイノベーションクラウド」として提供。サービス開始当初は全国4カ所だったが、2022年6月末までに新たに5カ所追加。7月からは「docomo MEC」と改称し、全国9拠点で提供する。

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MECのドコモオープンイノベーションクラウドはdocomo MECと改称し、全国9拠点で提供

 3つ目は「フレキシブルネットワーク化」で、2021年12月から5G用のコアネットワーク(5GC)を導入し、スタンドアロン方式を開始した。谷氏は「これによって、5Gならではのいろんな仕組み、サービスにつながる」と期待する。また、ユースケースに合わせて、さまざまなスライシングをエンド・トゥ・エンド(E2E)で提供できる環境に進化させていくという。

 「docomo MECと組み合わせることで、より多彩なスライシングの環境を提供できるようになっていく。仕組みを提供するだけではなく、それを使いやすくしていく取り組みも重要」(谷氏)

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E2Eで多彩なスライシングの環境を提供

 一方で、パブリックなクラウドプレイヤーとの連携も欠かせない。ドコモは、自社の仮想化基盤の上に載っている5GCだけではなく、AWSのOutpostsやパブリッククラウドにも5GCの機能を搭載し、パブリッククラウドと通信事業者の適切な役割分担を検証しているという。

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自社だけでなく、パブリックなクラウドプレーヤーと役割分担して仮想化ネットワークを提供していく

 4つ目は「OAM(ネットワークの運用・管理・保守)業務の高度化」。ネットワークが進化して、スライシングなどでさまざまな能力を提供するようになると、それを「ネットワークを制御し、使いやすくする仕組みが必要」(谷氏)になる。それがE2Eのオーケストレーターだ。

 E2Eオーケストレーターには2つのメリットがあるという。1つは法人顧客により使いやすいスライシングを提供できるという点。また、ドコモにとってはゼロタッチオペレーションを実現できる。E2Eオーケストレーターの仕組みはNTTコミュニケーションズやNTT持株会社のさまざまな技術を融合して作られており、欧州の標準化団体で標準化された規格の活用も踏まえて進めている。

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ネットワークの運用・管理・保守の仕組みを高度化することで、顧客、自社両方にメリットが得られるという

 5つ目は「ネットワークのグリーン化」。ドコモは2030年カーボンニュートラル宣言をしている。装置の省電力化に加え、自然、太陽光活用の検討を進めている。また、いわゆるデマンドレスポンスを導入しており、電力の課題が生じたときには、商用電源ではなくてバッテリーを活用するなどの調整を行う。2022年3月に稼働して、動作の検証を行っているところだという。

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