“裏方”のJENESISがなぜ「aiwa」ブランドのスマホを出すのか 日本市場での勝算は?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
JENESISがアイワからライセンスを取得し、aiwaブランドを冠したスマートフォンやタブレットを8月に発売する。JENESISは深センに拠点を持つことを強みに、これまでもさまざまな製品の開発を裏方として支えてきた。スマートフォンやタブレットが成熟期を迎える中、なぜJENESISはaiwaブランドを引っ提げ、表舞台に立とうとしているのか。
中国・深センに生産拠点を構え、デジタル機器の受託開発を主要事業に据えるJENESISが、アイワからライセンスを取得。aiwaブランドを冠したスマートフォン、タブレット、スマートウォッチを8月に発売する。ライセンスはスマートフォンなどのデジタル機器に特化したもの。スマートフォンとスマートウォッチは1機種ずつ、タブレットはWindows PCを含めた計4機種を用意する。
一般のユーザーにはなじみが薄いかもしれないが、JENESISは翻訳機として大ヒットを記録した「POCKETALK」の開発などで知られる。“世界の工場”と呼ばれる深センに拠点を持つことを強みに、これまでもさまざまな製品の開発を裏方として支えてきた。一方のaiwaは、ソニー傘下の企業としてコストパフォーマンスに優れたオーディオ製品などを展開してきたが、業績不振から2002年にはソニーに吸収され、2008年にブランドを終了。9年後に十和田オーディオが商標権を取得し、オーディオ機器を展開している。
スマートフォンやタブレットが成熟期を迎える中、なぜJENESISはaiwaブランドを引っ提げ、表舞台に立とうとしているのか。同社の代表取締役社長CEOを務める藤岡淳一氏に、その経緯や今後の構想などを聞いた。
JENESISはなぜ自社製品の販売に踏み切るのか
aiwaは、40代以上の読者にとってなじみの深いブランドだろう。かく言う筆者も、子どもの頃に使っていたラジカセがaiwaだった記憶がかすかに残っている。ソニー傘下のメーカーとして、コストパフォーマンスの高い製品を世に送り出していた印象が強い。今ではすっかりおなじみになったサブブランドだが、そのはしりのような位置付けだったとも言えそうだ。そんなaiwaブランドを冠したスマートフォンやタブレットなどの新製品が、8月に登場する。
手掛けるのは、受託開発を主に行ってきたJENESISだ。同社は、開発から試作、量産、量産やサポートを一手に手掛けるEMS(電子機器製造受託サービス)として有名な企業。裏方に徹しているため一般のユーザーがその名を目にする機会は少ないかもしれないが、ソースネクストから分社化したポケトーク社のPOCKETALKや、ソースネクストのAutoMemoシリーズ、JapanTaxiに搭載されているJapanTaxiタブレットなど、同社が開発を担った有名な製品は多い。
かつては、「geanee」というブランドで、イオンから発売される低価格なスマートフォンも製造していた。スタートアップや流通業のモノ作りを支える企業として、業界では、その名を知らない人がないほどだ。そんなJENESISがaiwaブランドのラインセンスを取得し、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチといった一般ユーザー向けの製品を展開してく理由はどこにあるのか。JENESISの藤岡氏は、JENESISが当初からコンシューマーへの展開も視野に入れていたことを明かす。
「創業して10数年たちましたが、最初のころはコンシューマー向けも少しやっていました。ただ、その頃もちょうど80円ぐらいの為替が一気に100円以上に上がってしまう円安で、駆け出しのベンチャーは体力もなく、経営が大変になってしまっていた。当時はIoTという言葉もなかったころだが、いったんEMSからODMという形で仕切り直し、黒子としていろいろなメーカーの製品をやらせていただくことにした」
一方で、その間、特にスマートフォンやタブレットは市場が急成長し、飽和期を迎えつつある。藤岡氏が「市場が飽和して、大手が撤退したり、ファンドに身売りされたりしている」と語るように、メーカー間の競争環境も激変した。
「そんな中、Lenovoは別格だとしても、OPPOやXiaomiといった中国メーカーがここ1年、2年で入り始めている。前職でデジタルカメラや液晶テレビ、DVDプレイヤーなどのいわゆるデジタル家電をやっていたとき、大手が撤退して中国系企業が入ってきたときにチャンスを感じた。これは(スマートフォンやタブレットでも)出番が来たからもしれないと、勝手に使命感を感じている」
市場の構造が大きく変わる中、そこにチャンスを見いだしたというわけだ。ただ、長く裏方を続けてきたJENESISには、コンシューマーにリーチできるブランドがない。「5年、10年かけ、無名のブランドを育てるのは、スピードの速いIT業界ではなかなか難しい」のが現実だ。そこで、藤岡氏は休眠しているブランドや、日本での展開を休止してしまった複数のブランドにライセンス提供を打診する。逆に、ブランドを必要としていたJENESIS側にもオファーがあったという。その中で白羽の矢が立ったのがaiwaだった。
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