ソラコムが新サービスを多数発表 通信障害に備えた回線追加、eSIMサービスの強化など(1/2 ページ)
ソラコムが「SORACOM Discovery 2022」に合わせて新たなサービスやサービスを多数発表した。IoT向けモバイル通信サービスでは、従来対応していたKDDIとソフトバンク回線に加え、新たにNTTドコモを追加した。eSIMサービスでは新たに日本を含む国別プランと、アジア向けの「アジアパシフィック周遊プラン」を追加する。
IoT向け通信サービスやプラットフォームを手掛けるソラコムは、2022年7月6日に開催する同社のイベント「SORACOM Discovery 2022」に合わせて新たなサービスやサービスを多数発表。その開催に先駆ける形でメディア向けに新サービスなどの説明がなされた。
モバイル通信は対応回線を増加、通信障害の備えに
同社の代表取締役社長である玉川憲氏は、まずソラコムの現在の状況について説明。ソラコムはIoT向けのモバイル通信サービスを提供しているが、その接続回線数は400万を突破、顧客数も2万を突破し、大企業からスタートアップまで幅広い企業に採用されているという。
ソラコムのバイル通信サービスにはグローバル向けと日本向けの2種類が存在するが、89%がグローバル向けの「SORACOM IoT SIM」であり、なおかつeSIMでの出荷が54%と過半数に達していると玉川氏は話す。このSORACOM IoT SIMは、SIMの中に無線で「サブスクリプションコンテナ」を追加することで利用できる通信サービスを変更できる仕組みで、150カ国・280の携帯電話会社が利用できる「Plan 01s」をはじめとして、日本国内向けやAPAC(アジア太平洋)向けなど複数のコンテナが用意されている。
その中から今回は日本国内向けの「planX1」をアップデートし、従来対応していたKDDIとソフトバンク回線に加え、新たにNTTドコモを追加して3社の回線が利用できる環境を整えた。さらに、またLTE回線を用いたIoT向け通信方式「LTE-M」に対応した「plan-X3」についても、従来のNTTドコモ回線に加え、ソフトバンク回線が近日中に追加され冗長化が図られることが明らかにされている。
発表の少し前となる2022年7月2日には、KDDIが大規模通信障害を長時間にわたって発生させた。ソラコムにも回線のバックアップに関する問い合わせが増えているそうで、玉川氏もそうした顧客のニーズに応えていきたい意向を示している。ソラコムでもKDDIの回線を使用しており、通信障害の影響は同社にも及んだというが、もともと顧客に複数の携帯電話会社の回線を提供し冗長化を進めていたこと、そして今回、障害の影響を大きく受けた音声通話に対応したSIMを提供していなかったこともあり、実際の問い合わせや影響は少なかったと玉川氏は話している。
また、SORACOM IoT SIMは世界中で利用できることから、通信時の遅延を少なくするための取り組みも強化。これまで同社では欧州と日本、そして米国に通信経路を最適化する「ランデブーポイント」を設置して遅延を抑える取り組みを進めてきたが、豪州でのニーズが高まっていることから、近日中に豪州にもランデブーポイントを設置する予定であることも明らかにした。
コロナ禍明けを見越しeSIMサービスを強化
もう1つ、玉川氏が打ち出したのが「Soracom Mobile」のアップデートだ。これは2020年より提供されているiOS向けのeSIMによるデータ通信サービスで、主に海外渡航者に向けて提供していたが、サービス直後にコロナ禍が発生したため「時期が悪かった」と玉川氏は振り返る。
だがコロナ禍からの規制緩和が徐々に進んでいることから、今回アップデートを実施。欧州と北米向けプランを値下げしたが、料金はドル建てなので、円安が進んでいる現状、日本円に換算すると2020年時点より高くなっている可能性もある。また、新たに日本を含む国別プランと、アジア向けの「アジアパシフィック周遊プラン」を追加することを明らかにした。ちなみに日本で接続する通信事業者は、国別プランはKDDI、アジアパシフィック周遊プランはソフトバンクとのことだ。
続いて取締役最高技術責任者CTOの安川健太氏から、プラットフォームの領域拡大に向けた新たな発表がなされた。ソラコムはモバイル通信で満たせない低価格・低消費電力を求めるニーズを開拓するため、2017年よりIoT向け通信規格の1つ「Sigfox」への対応を進め、さらにWi-Fiや有線で接続するデバイスも対象にするべく、2021年にはインターネット経由で安全にソラコムのサービスに接続する「SORACOM Arc」を提供している。
だが「世界を見回せばまだ接続できていない場所がたくさんある」(安川氏)ことから、新たに衛星メッセージングサービスに対応させた。スイスのAstrocastと米国のSwarm Technologiesが提供する、低軌道衛星を通じてメッセージを送受信するサービスをソラコムのプラットフォームと接続し、ソラコムの各種サービスと連携できるようにするそうで、当初は技術検証のためのテクノロジープレビューとして提供する。
新たに衛星メッセージングサービスとの連携を発表。2社の衛星サービスによるメッセージをソラコムのプラットフォームと直接やりとりし、ソラコムのサービスやパブリッククラウドと連携して場所を問わないIoTサービスを実現できるという
安川氏によると、既にAstrocastのサービスとLTE-Mの両方に対応したデバイスなども提供されているそうで、それらを活用してソラコムのプラットフォームと連携することで、例えばコンテナを船で輸送しているときは衛星で、地上でトラックに乗せ換えた後はLTE-Mによる通信に切り替えて常時トラッキングできる仕組みなどが実現できるという。
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