「PayPayはマネタイズの時期に」「KDDI通信障害は対岸の火事ではない」 ソフトバンク宮川社長(2/2 ページ)
ソフトバンクが2023年第3月期1四半期の連結決算を発表した。携帯事業の値下げが響き、増収減益となった。登録者数が4800万人を超えたPayPayについては「これまでの種まきの時期から本格的なマネタイズの時期に移行したい」と宮川社長は言う。KDDIの通信障害については「対岸の火事ではない」と話し、事業者間ローミングでeSIMを活用する案を披露した。
KDDIの通信障害は対岸の火事ではない ローミングはeSIMで対応の案
7月にKDDIが引き起こした通信障害について問われた宮川社長は、「対岸の火事という認識は全くない」として、既にさまざまな検討を開始したという。今回の障害原因は既に明らかになっているが、「ソフトバンクで同じことが起きるかというと、今回の件は起こり得ない」というのが宮川社長の結論。
ただ、人的ミスを含めて、どんなトラブルが発生するかは予測できないので、「対策チームを設けて、一から(ネットワークを)見直すよう検討してもらっている」と宮川社長。
総務省は、災害、障害時の事業者間ローミングに関する検討会を9月にも設置する予定。もともと、宮川社長は事業者間ローミングについて過去にコメントをしていたこともあって、「ローミングについて本気で考える時期に来たのではないか」と話す。
ソフトバンクは2018年に大規模障害を発生させたが、「当時よりも現在の方が、モバイルの社会インフラとしての重要度が増している」(同)。特に「認証と決済」に関して広く使われている点を理由として挙げる。認証は、2要素認証などでSMSが使われることが増えており、スマートフォンが使えなくなると認証ができなくなるという問題がある。
決済では、PayPayをはじめとしてスマートフォンを前提とした決済が増えたことで、より通信の維持が重要になった。
KDDIの通信障害では、警察・消防などへの緊急通報が問題となった。海外では、SIMがない状態でも緊急通報だけはどのキャリアにでもつながる仕組みも構築されているが、国内では通報が途切れたときのために呼び返しができることが必要で、SIMなし通報には法改正が必要になる。
それに加えて宮川氏は「緊急通報の確保だけで、障害時のパニックに対処できるかというとそうはならない」との認識を示す。さらに、単にデータローミングをするだけでは、他社ネットワークに利用者が殺到して共倒れになる危険性もある。
「個人的な考え」と宮川社長は前置きしつつ、「キャリア同士でMVNOのような構造を受けておいて、緊急時には切り替えが可能になるような、eSIMのようなものを用意しておく」という手法を紹介。このときは、通信自体が快適である必要はないため、「300kbpsぐらいの最低限の通信を確保」(同)しておくことで、電話、メール、ニュースなどの確認ができるようにする、という考え方だ。
「日本国として、有事の際にはどのように通信を使えるようにするのかは検討していきたい」(同)
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