ドコモ傘下となった「OCN モバイル ONE」の戦略 「Y!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたい」:MVNOに聞く(1/4 ページ)
ドコモのエコノミーMVNOに参画して以降、OCN モバイル ONEが順調に契約者数を拡大している。一方、同社をドコモ傘下の廉価ブランドと見ると、Y!mobileやUQ mobileには完全に対抗し切れていない。今後、NTTレゾナントはどのような戦略でOCN モバイル ONEを展開していくのか。
ドコモのエコノミーMVNOに参画して以降、OCN モバイル ONEが順調に契約者数を拡大している。調査会社・MM総研の「独自サービス型SIM市場の事業者別シェア」では、2022年3月末時点のシェアは14.1%で2位。順位自体は変わっていないが、2021年9月と比べ、0.6%シェアを伸ばしている。シェア1位はIIJだが、ここには法人向けのIIJモバイルも含まれるため、個人向けとしてはOCN モバイル ONEが実質的なトップといえる。
最近の動きでは、NTTのグループ再編に伴い、OCN モバイル ONEは7月1日にNTTコミュニケーションズから、ドコモの子会社となったNTTレゾナントに事業が移管された。以前からNTTレゾナントも共同運営という形でOCN モバイル ONEのサービスに携わっていたが、この再編によって、NTTコミュニケーションズがMVNE、NTTレゾナントがMVNOに分かれ、その役割が明確化した格好だ。これに伴い、端末販売ストアの「goo Simseller」も「OCN モバイル オンラインショップ」に名称を変更している。
好調なOCN モバイル ONEだが、同社をドコモ傘下の廉価ブランドと見ると話は変わってくる。UQ mobileやY!mobileと、契約者数の差はまだまだ大きく、完全には対抗しきれていないのが現状だ。そんな中、同社はどのようにMVNO市場で生き残っていくのか。NTTレゾナントのパーソナルサービス事業部 ND部門 担当部長の植本直樹氏と同部の木藤暢俊氏に話を聞いた。
運営元が移管も、サービス運営自体に大きな変更はなし
―― 7月の事業移管で、運営元がNTTレゾナントになりました。これによって、何かサービスに変化があるのか、それとも特に変わらないのかを教えてください。
植本氏 サービス運営自体には何も変わりはありません。事業主体がNTTレゾナントに変わっただけです。それ以前から、(NTTレゾナントは)NTTコミュニケーションズのグループとして運営をしていたので、メンバーも一緒で変わりはありません。とはいえ、グループの戦略として、ドコモグループでOCNのもろもろ(のサービス移管)が発表されています。MNOの中で他社からポートインを取ってMNPでプラスに持っていくところでは、グループとして動けるようになりました。
また、これはわれわれだけではなく、トーンモバイルもそうですが、ドコモのエコノミーMVNOに入ったということもあり、ドコモ自体と(より)コミュニケーションが取れるようになりました。ドコモショップでたくさん売っていただくにあたっての課題やサポート面での連携など、さまざまなことでコムグループのときにはなかったコミュニケーションが発生しています。
ただ、(移管を機に)サービス名称に関しては、気持ちとして「OCNモバイル」と読んでほしいと思っています。「○○モバイル」というのが一般的なので、「ONE」はちょっと浮いていますよね。ちゃんとブランド変更しろよと思われるかもしれませんが(笑)。
―― MVNOとMVNEが明確に分かれて、動きやすくなったようなことはありますか。
植本氏 MVNEとしてNTTコミュニケーションズが立つ形になっていますが、サービスの運営や提供は今までやってきたことで、特段動きやすくなったというようなことはありません。それよりも、ドコモショップという強いチャネルを持てたのが大きい。今までは強いチャネルがありませんでしたが、ここで情報を得られるようになりました。リアルな接点で、新しいお客さまも入ってきています。こういったところではドコモの方が経験は豊富なので、いろいろと教えていただくことで、サービスの知見という意味ではかなりプラスになりました。
500MBコースはドコモショップでの主力、オンラインで指名買いも
―― エコノミーMVNO参画以降、何か意識してやられたことはありますか。
植本氏 全体として、年末と年度末にかけ、久しぶりにプロモーションをかけたことで一般的な認知度が高まりました。これまでは端末をトリガーに売る方法でオンラインに特化していましたが、ある程度プロモーションをして一般的な認知を得たこともあり、回線の指名買いが増えたのは今までになかった動きです。リアルチャネルもそうですが、オンラインでも継続的に指名買いが見受けられます。
木藤氏 端末セットだけでなく、SIM単体も増えています。
植本氏 乗り換えて端末をそのまま使う層を取り込めている可能性が高いですね。
―― エコノミーMVNO参画と同時に、500MBコースを開始しました。あちらの反響はいかがでしょうか。
木藤氏 500MBコースは、ドコモショップでの販売をメインに準備していたものですが、ドコモショップではあのコースが主力として出続けています。逆にオンラインの方にもSIMの指名買いで500MBコースを選ぶ方はいらっしゃいますが、どちらかといえばオンラインはしっかりデータ通信を使う方が多く、1GB以上の中容量が引き続き選ばれています。
植本氏 ただし、ドコモショップで一番売れているのは500MBコースですが、1GB以上も思っていたよりも出ています。
木藤氏 ザックリ言えば半々ぐらいですね。500MBか、それ以上かという感じです。
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