ユーザーと決済事業者が「ことら送金サービス」を利用するメリットは? 川越社長に聞く(2/3 ページ)
メガバンク5行が設立した「ことら」が10月11日からサービスをスタートした。銀行と決済サービスをまたがって相互に送金できる「ことら送金サービス」によって、どのようなメリットがあるのか。10月5日に実施したインタビューに引き続き、改めて同社の川越洋社長に話を聞いた。
送金対応に伴うアプリの改変は最小限、手数料も安価
資金移動業者の参加における懸念点の1つに、「ことら送金対応に伴うUI/UXの変更」があるだろう。自社アプリに自信を持つ事業者は多く、ことら送金対応で改変を求められる可能性もある。
これを川越社長は否定する。ことら側はAPIを提供するが、APIに接続するためのUIに指定はない。「送金ボタン」のようなUIは必要だが、これは今までの送金ボタンと一緒で、ことら側からの指定は特にないという。
APIを呼び出すUIさえあれば、画面構成の指定もないし、「ことら」のアイコンや名称表記も不要だという。そのため、送金のUIの中に、ことらのAPIを呼び出す機能さえ追加すれば、UI/UXは従来通りで実現できる。
ただし、送金先を電話番号やメールアドレスで指定すると、ひも付いた送金先口座の名称が表示され、それを確認してから送金する、というフローは必須になる。とはいえ、「送金先が正しいか確認する」というワンクッションはいずれにしても必要だろう。
もう1つの問題が送金手数料だ。もともと高額な「全銀システム(全国銀行データ通信システム)」の手数料問題の解決を目指したのがことら。決済ネットワークとしてはCAFIS、電文などはJ-Debitという既存の仕組みを使うことでコストを削減。
さらに手数料は送金元(仕向)と送金先(被仕向)の双方から「広く薄く」(同)徴収することで、1回の送金コストを低減した。具体的な手数料は非公表だが、参加表明した銀行が無料化の判断ができる程度には低減できているようだ。
送金されるだけでも事業者に手数料が掛かる上に、競争上は有料化が難しくなった状態で、あまりに送金数が多くなると事業者の負担も増す。ただ、そもそもどれだけの需要があるのか、負担になるほどの利用があるのか、という点で、川越社長も「数値目標は置いていない」というほど、先が読めないサービスでもある。
現実的に、対応事業者さえ増えれば一定の利用はありそうだ。例えば「コミケ」「ジューンブライド」「忘年会」という一時的な増加はあるかもしれないが、日常的に頻繁に使うようなサービスではないため、負担はそれほど増えないと想定できる。
利用シーンの拡大では、税公金サービスへの対応も挙げられる。自治体からの税金の振込書などが届いたら、記載のQRコードを読み込んでことら送金を使って納付するという機能で、銀行側も自治体側も、J-Debitの経験があるためそれほど対応が難しくないというメリットがある。
この税公金に関してのみ、ことら送金では「上限10万円を撤廃する」ことが決まっている。固定資産税など、10万円を超える税金があるためだが、税公金以外では10万円の上限は維持する。
この上限に関しては、利用状況などを確認しながら検討していく考えだ。
関連記事
- 携帯番号だけで送金できる「ことら」開始 メガバンクが対応も、PayPayなどは様子見
携帯電話番号やメールアドレスを使い、銀行や決済サービス間の送金を低額で行える「ことら送金サービス」が10月11日にスタートした。まずはメガバンク3行にりそな、地方銀行の20行が対応。銀行業界が意気込む反面、接続を期待されている資金移動業者からの申し込みはいまだにない。 - 銀行間の個人送金を手軽かつ安価に メガバンク5社が立ち上げた「ことら」の狙い
銀行間の個人送金を安価に、利便性高く送金できるような仕組みを、メガバンク5行が構築しようとしている。その実務を担う「株式会社ことら」が7月20日に設立された。現時点では決まっていることは少ないが、ことらが目指す新たな送金の仕組みや今後の展開について、ことらの代表取締役社長である川越洋氏に話を聞いた。 - 「Bank Pay」が本格始動 取扱金融機関は33行、加盟店は13万カ所以上に拡大
日本電子決済推進機構が提供し、オールバンクで取り組むスマホ決済サービス「Bank Pay」の取扱金融機関が33行(2021年中に127行予定)、利用可能な加盟店が13万カ所以上に拡大した。 - 銀行口座間の送金サービス「Money Tap」開始 チャージ不要、電話番号から送金可能
SBI Ripple Asiaが、スマートフォン向け送金アプリ「Money Tap(マネータップ)」の提供を開始。銀行口座から銀行口座へ、直接送金できる。1回3万円、1日10万円までの送金は手数料が発生しない。 - J-Debitの仕組みをスマホで 「Bank Pay」の狙う市場と戦略
2019年秋のサービス開始を予定している「Bank Pay」は、「J-Debit」の推進団体としても知られる日本電子決済推進機構(JEPPO)が提供するサービスだ。Bank Payは「既にあるシステムをスマートフォンに拡張」「各金融機関が提供しているアプリやサービスとの連携」を特徴としている。JEPPOがうたう「オールバンクのスマホ決済サービス」とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.