迷走? マスク氏買収のTwitterはどこに向かうのか 今、起きていること(1/2 ページ)
テスラCEOのイーロン・マスク氏は10月27日(現地時間)、米Twitterを買収し自らCEOに就任しました。マスク氏が最初に行ったことは、Twitter取締役9人の一斉解雇。マスク氏は「今後数カ月、多くのバカげたことを行うので注意してほしい」とツイートしています。
テスラCEOのイーロン・マスク氏は10月27日(現地時間)、米Twitterを買収し自らCEOに就任しました。マスク氏のTwitter買収は、4月に合意していたものの、報告されているbotの数が不正確だったことなどを理由に買収を撤回。Twitterが提訴するなどの問題に発展していましたが、最終的には当初の予定通りに1株あたり54.20ドルで買収が行われました。なお、Twitterは11月8日に上場が廃止されています。
マスク氏の買収後、既に多くの変更が行われており、一部では日本でも影響が出ています。この記事では、マスク氏が何を行い、今後どうなっていくのかを簡単にまとめてみたいと思います。
Twitter取締役9人を一斉解雇、日本にも影響
マスク氏が最初に行ったことは、Twitter取締役9人の一斉解雇。前CEOのパラグ・アグラワル氏をはじめ、CFO(最高財務責任者)、CLO(最高法務責任者)などが解雇され、マスク氏が唯一の取締役となりました。その後、大量の社員の解雇も実施。全社員の半数が解雇されたとのことです。日本の企業ではこうした突然の解雇はほとんどありませんが、海外ではしばしば行われていることです。
とはいえ、ここまでの一斉解雇は反発もありますが、マスク氏は「Twitterの人員削減は、1日あたり400万ドル以上の損失を出している今、残念ながら他に選択の余地はない。解雇された全員に、法的に決められているより50%多い3カ月の退職金を提示した」とツイート。十分な対応を行っているとの認識を示しています。
この大量解雇はTwitterの日本法人にも影響しており、広報部門など多数の社員が解雇されたようです。これにより、「ニュース」や「スポーツ」「エンターテイメント」など、人力でのキュレーションが行われていた情報の更新が一時ストップ。ちなみに筆者は、普段からトレンドやニュース欄を見ることがなかったので、更新が止まっているということにも気が付いていませんでした。以前に比べて政治的なニュースなどを目にする機会が減ったという意見も出ていますが、こちらに関しては主観的な意見も多く実際の影響は不明です。ただ、筆者のようにTwitter上のニュースなどは、大して気にしていないというユーザーは多いのではないかと思っています。
「Twitter Blue」を7.99ドルに値上げ
Twitterのサービス面でも、影響は広がっています。1つは、米国などで提供されているサブスクリプションサービス「Twitter Blue」の値上げです。Twitter Blueは、ツイートの取り消しや編集機能などの他、新しい機能をいち早く試すことができるというもの。従来は月額4.99ドル(約700円)でしたが、これが7.99ドル(約1121円)に引き上げられました。これだけであれば、単なる値上げだけだったのですが、これまで、著名人や企業、ブランドなどの公式アカウントに付与されていた青い認証バッジがTwitter Blueの加入者特典になったことが混乱を呼んでいます。
認証バッジは、もともとは著名なアカウントがなりすましではないことを証明する手段でしたが、一般的には、Twitterがお墨付きを与えた公認アカウントであり、一種のステータスとして捉えられています。以前には、差別主義者に認証バッジを与えたことで炎上するような騒ぎもありました。
この認証バッジがTwitter Blueに加入すれば誰でも手に入れられるようになったので、「著名人」や「公式」といったステータスは失われることになります。また、なりすましアカウントがTwitter Blueに加入することも可能なので、もともと持っていた本人確認の意味合いも怪しくなってきます。これに対しては、TwitterのSafety&Integrity担当ディレクターであるヨエル・ロス氏は、認証バッジを付けたアカウントでのなりすましレビューを強化し、積極的に取り締まるとツイート。また、認証バッジのコストが8ドルに上がることで、これを利用したスパムのコストも上昇し、結果的にスパムを減らせるとしています。
公式ラベルは、発表後すぐに撤回
認証バッジに関しては、他にも混乱が起きています。それが新たに導入された公式ラベル。青色の認証バッジがTwitter Blue加入者という意味合いしかなくなるので、これまで担っていた「公式アカウント」の識別を行う別のラベルを用意するというものです。
ただ、この公式ラベルを発表後、わずか数時間で撤回。マスク氏は「今後数カ月、多くのバカげたことを行うので注意してほしい。機能するものは残すし、機能しないものは変更する」とツイート。実運用中のサービスでさまざまな実験を行っていくことを示唆しています。試行錯誤しているともいえるのですが、行き当たりばったりで迷走しているようにも感じるのは筆者だけではないかもしれません。
関連記事
- イーロン・マスク氏のTwitter買収で何が変わるのか? 問われる“自由”の意義
イーロン・マスク氏がTwitterを買収することが承認されました。マスク氏はTwitterを買収する理由について、言論の自由が危ういことを挙げています。マスク氏は「法律をはるかに超えた検閲に反対する」とも述べています。 - Twitterに「編集機能」は実装されるのか? その経緯と影響を整理する
Twitterは、ツイートを後から編集できる編集機能に取り組んでいると明らかにしました。ツイートを編集する機能は、これまでたびたび話題になっていたものの、Twitterがかたくなに導入を拒んでいた機能。編集機能を導入する場合、編集履歴の表示や投稿後5分後以内にするなどの措置が必要となりそうです。 - 「もしもTwitterがなくなったら」を考えてみた
Twitterがなくなったら割りと困る。 - Twitterで特定ユーザーを排除する「スパブロ」とは
- 高校生の約半数がTwitterを実名で利用 MMDとマカフィーの調査
MMD研究所とマカフィーは、3月27日に「高校生、大学生、社会人20代・30代のSNS利用に関する意識調査」の結果を発表した。高校生Twitter利用者の52.7%は実名で、うち41.1%は「すべての人」に情報を公開。投稿内容が問題になったことがある高校生は約2割で、そのうち8割以上が「問題になると思わなかった」と答えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.