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赤字続きの楽天モバイル 三木谷氏が「23年の単月黒字化を目指す」と豪語する理由(1/3 ページ)

楽天グループの2022年の最終的な損益は3728億円の赤字で、赤字額が過去最高になった。モバイル事業の赤字が大きな要因だが、三木谷浩史は2023年ないにモバイル事業の単月黒字化を目指す。その手法として大幅なコスト削減を敢行する構えだ。

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 楽天グループが2月14日、2022年度通期および第4四半期決算説明会を開催した。2022年の最終的な損益は3728億円の赤字で、赤字額が過去最高ということが大きなニュースになっているが、ここではモバイル事業について、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史がプレゼンテーションやその後の質疑応答で説明した内容をピックアップしてまとめた。

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楽天モグループ 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

コスト削減を徹底して2023年に単月黒字化を目指す

 第4のキャリアとして、2020年から本格的にサービスを開始した楽天モバイル。「携帯ネットワークを、よりインターネット的にマネジメントしていく」という「完全仮想化」をコンセプトとし、当初、7年かけるとしていた基地局建設を「未曽有のスピードで」3年で済ませた。財務的な負担も非常に大きかったと三木谷氏は振り返ったが、「今後の設備投資は大幅に軽くなる」との見通しだ。

 2020年から2022年は「仮想化技術の世界的な信頼を得るという意味を含めて」顧客獲得を狙って無料キャンペーンを展開した第1フェーズだったが、2023年から2024年は第2フェーズとして利益を生む体制の確立を目指す。特に2023年は楽天モバイルとして単月黒字化を目指している。三木谷氏も「勝負の年」と意気込んだ。

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2020年から2022年は基盤確立を狙って無料キャンペーンなどを行った第1フェーズ。第2フェーズの2023年、2024年は利益を生む体制の確立を目指す

 第2フェーズに取り組むとしているのが、まずはコスト削減だ。「とにかくコストを安く、リーン(無駄がない)かつ効率的な体制を作る」。また、自社エリア化がされていない地域で利用しているKDDI回線のローミング費用を、年末までに大幅に削減していくとしている。ちなみに三木谷氏によると、ローミングされているのは「実質的に4%ぐらいのデータだけ」だそうだ。

 現在、98%台半ばの人口カバー率は、2023年には99%以上にして、「ヘルシーな収益改善を行い、楽天グループへのエコシステムを強化」するとした。

 マーケティング手法も変える。従来はテレビコマーシャルに頼ったマスマーケティングが中心だったが、それを既にインターネット中心に切り替えたという。例えば、楽天グループのサイトやアプリには楽天モバイルのサイトへのリンクが貼られ、そこから1日約130万人のアクセスがあるという。「今のところ影響がないというか、むしろプラス」に働いている。

 2月15日からは紹介キャンペーンとして、紹介されて契約した人に7000ポイント、紹介した人にも3000ポイント提供するリファラルマーケティングを展開する。「2023年はとにかく利益体制を確立する年」と位置付けている。

eSIMの契約からアクティベーションまでを簡便化する仕組みを準備

 4G屋外基地局は2022年12月現在で5万2000局を超え、2023年末までにさらに8000局建てる予定だ。これにはエコシステムへの貢献が大きいヘビーユーザーを取り込む狙いがあるという。

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基地局の建設に注力し、2023年中に人口カバー率を99%超にする

 ローミングエリアにおけるデータ使用量は現在、全体の約4.2%から4.3%と減っているが、それを極限まで減らすことによってローミング費用を大幅に減らす。設備投資が一巡したこと、その他のコストも削減することで、年末までに月間のオペレーションコストを150億円、年間ベースで1800億円以上削減する計画だ。

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基地局の開設にグループ内の多くの人員を投入し、その間、元の部署では他社のサービスを利用するなどして対応してきたが、設備投資が一巡したことにより、楽天グループ全体としての人件費や外注費が減ってコスト削減になるという

 設備投資額は、2023年もこれまで同様、年間約3000億円かかる予定だが、2024年は1500億円、2025年は1200億円に減る見込み。設備投資額は、他社の設備投資累計額(2008年から2022年)のわずか20%程度だという。

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設備投資額は2024年から大幅に削減される見通し

 ショップも「採算性を見ながら、是々非々で考えていく」としたが、楽天モバイルの場合は約70%がオンラインで契約しており、今後はオンラインを重視していくという。

 そのオンライン契約と相性がいいのがeSIMだ。「eSIMは、これから楽天グループにとっては大変大きな武器になっていく」との認識から、オンラインで加入からSIMのアクティベーションまでワンクリックでできる仕組みを構築し、近々発表するという。

プラチナバンドは「最小のコストで導入できる」

 業績を左右するポイントとして、プラチナバンドの獲得と、低軌道衛星を活用するスペースモバイルプロジェクトも挙げた。プラチナバンド獲得後、どこまでカバレッジが広がるかを、東京23区でシミュレーションした地図も紹介し、獲得できれば「非常に大きなプラスになる」と期待した。

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プラチナバンド獲得後のシミュレーションマップ

 仮にプラチナバンドを獲得した場合には、「最小のコストで導入できる」という。新しい周波数帯域を使うようになったとしても、基地局設置には既存の電柱などを使い回し、基地局はソフトウェアをアップデートすることで対応。そのソフトウェアも、「他社さんとは違って自社で内製しているのでコストがかからない」とした。また、CEOのタレック・アミン氏は、プラチナバンドを獲得した場合、「2024年の初頭から運用開始できる」と語った、

 人口カバー率改善による契約回線数の増加と、楽天エコシステムの活用、大幅なコスト削減、リファラルマーケティングによるコスト効率アップにより、「かなりの収益改善が行われることは間違いないと思っている。年内、なんとか頑張って単月黒字化を目指していきたい」と三木谷氏は語った。

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