KDDIのメタバースサービス「αU」は何が新しいのか? ビジネスとして成功するカギは?(2/3 ページ)
KDDIは3月7日、新しいメタバース・Web3サービスとして「αU(アルファユー)」の提供を開始した。まずは5つのサービスを提供し、仮想空間でライブやショッピングなどを楽しめる。3年間で少なくとも1000億レベルの投資を行うという。
3年間で少なくとも1000億円レベルの投資
発表会後には、事業創造本部 副本部長の中馬和彦氏が記者からの質問に答えた。主なものは以下の通り。
―― αU metaverseは、これまでやってきた「バーチャル渋谷」や「バーチャル大阪」とは異なるのか。
中馬氏 バーチャル空間サービス「cluster(クラスター)」で提供した渋谷と大阪は、そのまま置いてある。引き続きイベントはやろうと思っている。一方で、定常的にユーザーさんに移り住んでいただく場所としてのバーチャル渋谷・大阪はαU metaverseの中に作る。複数の渋谷、大阪ができて、サービスを連携させて、相互に行き来できるようにしている。また、αU metaverseの街は、かなりエリアが広がって変わっている。
―― 事業規模や見通し、金銭的な目標は。
中馬氏 明確に対外公表はしていないが、イメージとしては3年間で少なくとも4桁レベルの投資をすると決めている。1000億円レベルの投資をする予定。売上規模としても同等以上をこの3年でやっていきたい
隣にいる人の声は大きく、遠くの人は小さく聞こえる
―― αU metaverseは音声コミュニケーションが主体になっているが、どういった工夫があるのか。
中馬氏 隣にいる人の声は大きく、遠くの人は小さく聞こえるというようなところを、かなり忠実に再現している。かつ複数の人がいても、日常と同じように会話ができるクオリティーを目指している。最低ラインは20人で、人数は上げていく。ライブ体験では、隣にいる人たちが盛り上がっているから自分も盛り上がるという臨場感を出したい。ボイスの臨場感は相当、緻密に作り込んでいる。
―― 遅延を少なくするような工夫もしているか。
中馬氏 そこも含めてやっている。
―― アバターの行き来ができるという話があった。ウォレットを使ってやりとりするということは、いろいろなアセットも含めて相互連携されているもの同士、いろいろなものが移行できなくてはいけないと思う。現状はどうなっているのか。
中馬氏 cluster時代はNFTに未対応だったので、基本的にウォレットログインができなかった。αUはNFT対応で、ウォレットログインが可能になっている。Web3に対応したメタバースとは、今後ウォレットログインでアセットを共有するようにしていきたい。
―― アセットの共有方法はどうなるか。
中馬氏 それをまさしく議論している。バーチャルシティコンソーシアムという標準化団体を立ちあげたのは、そういう意図がある。われわれが先に始めて、ガイドラインとして提示したい。日本標準、もしくは世界標準にできないかと思って進めているところ。
―― αU walletについて、au PAYなどリアルとの接続は考えているのか。
中馬氏 現状、au PAYアプリとαU walletは別物。αU walletでは法定通貨でNFTを買うことができるようになっており、auかんたん決済とクレジットカードが使える。au PAYは今後対応予定。au PAYやクレジットカード、電子マネー、auじぶん銀行、証券などが全部アグリゲーションされているが、そこに暗号資産が入っていくのか、もしくはαU walletの方にau PAYを融合していくのか、その辺りは模索中。
メタバースとデジタルツインを使い分けている
―― 3年間やってきたバーチャル渋谷や大阪から、どういう課題を見つけたか。それをαUでどう生かしていくのか。
中馬氏 いくつかある。1つに、これまでのメタバースの仕掛けはイベントベースだった。アプリの中に住み着くような構造は作れていなかった。イベントベースから日常使い、恒久的なプラットフォームへと準備してきた。
また、以前はメタバースの中で全てが完結することを目指していた。しかし、例えばVR空間で買い物をすると非常に使いにくかったり、お店の商品点数が非常に多かったりと、使い勝手も作るのも難しいことが分かった。コマースのシーンはメタバースにデフォルメするのではなく、デジタルツインでリアルを追求する方が正しいと思い始めた。
リアルを追求すると、1つのアプリの中で写実的な世界とデフォルメされたゲームっぽい世界が共存し、ユースケースとして分かりづらい。そこで結論として分けることになった。αUではメタバースとデジタルツインを使い分けている。ライブも追求していくと、どんどんリッチになっていくが、そうするとスムーズに動かない。収容人数を少なくするとユーザー体験が貧弱になる。
毎日いるのはmetaverseで、買い物はフォトリアルなデジタルツインにワープすればいい。ライブも、簡易的なライブはmetaverseでいいが、本格的なライブはαU liveの方を使っていただき、しばらくの間切り分けてやろうと決めたことが3年間の成果。
―― メタバースはどうなんだと思いながら見ている人も多い。何が面白いのか、何を感じてほしいのか、αUのおすすめポイントや魅力を教えてほしい。
中馬氏 われわれが今注目しているアプリケーションはライブ配信。今、同期コミュニケーションが盛り上がっているという肌感覚がある。そこを追求していこうとすると、現状、配信者はリアルや3Dでリッチだが、推し(視聴者)側はテキストで表現している状態。ここをフラットにして、同じ空間を共用する構造にしたい。テクノロジー的には5G環境が整い、NFTで価値を込めたものを1点だけ渡すようなこともできるようになって、全部がそろってきたという感覚がある。ここでリアルタイムの音声コミュニケーションのコミュニティーにわれわれはチャレンジしていきたい。
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