最後発のワイヤレスホームルーター「Rakuten Turbo」 死角はないのか?:5分で知るモバイルデータ通信活用術(2/2 ページ)
楽天モバイルが1月から提供しているワイヤレスホームルーター「Rakuten Turbo」。この3月からは店頭での販売を受け付けていますが、この分野で先行する他社と比べるとどうなのでしょうか。その長短を見つめてみようと思います。
Rakuten Turboに“足りないもの”とは?
Rakuten Turboの「おトクなプラン料金キャンペーン」による割引の合計額は、端末代金を48回払いする場合の支払い額と同額です。割引の期間(36カ月間)と端末代金の支払い期間がズレていることの是非はさておき、36カ月間利用すれば端末代金は「実質0円」となります。
このような割引が行えるのは、Rakuten TurboがFWAサービスだからです。現行の電気通信事業法では、回線契約とひも付く利益提供(値引きやキャッシュバック)は税別2万円を超えてはいけないことになっていますが、FWAサービスは対象外。ゆえに、2万円を超える値引きを行えます。
ただし、このような値引きは他社のFWAサービスも実施していて、場合によっては端末代金を超える利益提供が行われているケースも見受けられます。例えば、端末代金をその場で大幅値引きして「一括10円」で販売した上で、キャリアが直接提供する通信料金の値引きが適用されるというケースもあります。
翻って見てみると、Rakuten Turboは他社のFWAサービスと比べるとメリットが薄い状況にあります。まず、端末代金と同額になるような月額料金の値引きは他社もやっています。先述の通り「端末代金の支払い期間」と「割引期間」がズレていることも気になります。
設置する場所の通信環境に大きく左右されるものの、ワイヤレスホームルーターは“快適に通信できてナンボ”という面があります。「自宅ではダントツで楽天モバイルの電波が入る!」ということがない限り、積極的にRakuten Turboを選ぶ理由はないように思います。
とある家電量販店では、NTTドコモの「home 5G」用の端末「home 5G HR01」が定価で販売されています。しかし、ドコモによる「月々サポート」を適用することで36カ月間使うと「実質0円」となる他、新規契約特典として1万円分の商品券がプレゼントされます。家電を同時に購入する場合は、1万円分の商品券の代わりに最大3万円の商品代金割引とすることも可能です
加えていうと、Rakuten Turboには、いわゆる「セット割」が用意されていないことも弱点です。
一応、モバイルサービスである「Rakuten UN-LIMIT VII」の契約者を対象に最大1000円をキャッシュバックするキャンペーンを開始しましたが、Rakuten UN-LIMIT VIIを継続的に利用することによる割引が存在しません。Rakuten UN-LIMIT VII自体、上限まで使っても月額3278円で済むので、他キャリアのようにセット割が必須かといえばそうでもないのですが、この点は少しさみしいです。
Rakuten Turboには「Rakuten UN-LIMIT VII」を契約することによるセット割がありません。Rakuten UN-LIMIT VII自体が元から安く、他社のようにセット割がなくとも十分に安く運用できるのですが……
実は「Rakuten UN-LIMIT VII自体が安い」ということは、見方を変えると別の意味を持ちます。
先述の通り、Rakuten UN-LIMIT VIIの月額料金は最大で3278円です。この料金ステップに入ると、自社エリア内では月間容量制限もありません。そしてRakuten Turboは通常で月額4840円、おトクなプラン料金キャンペーンの適用で3685円で、月間容量制限はありません。
ここで気付いた人もいると思うのですが、同じ条件で使うなら、契約当初の3カ月間を除くとRakuten UN-LIMIT VIIの方が安いです。モバイルルーター、あるいはルーター代わりに使えるスマートフォンやタブレットを持っている人は、それにRakuten UN-LIMIT VIIのSIMカードを入れた方が安上がりです。
以前の連載で実家のインターネット回線をRakuten UN-LIMIT VIIに置き換えた話をしましたが、現在に至るまで、これで特に問題は生じていません。
こう聞くと、ますますRakuten Turboの存在意義が問われそうですが、メリットもあります。Rakuten Turboには「グローバルIPアドレス」が付与されるのです。
一部のWebサービス(特にVPNやオンラインゲーム)では、グローバルIPアドレスが割り当てられないと正常に動作しないものもあります。グローバルIPアドレスでの動作を要件としているサービスを利用している場合は、Rakuten Turboを使うことを強くお勧めします。
とはいえ、コスト面を重視するのであればRakuten UN-LIMIT VIIを使った方が有利なことに変わりありません。現時点では通信制限のポリシーも同様なので、APN(データ通信の接続先)の設定など、ある程度知識があるユーザーならRakuten UN-LIMIT VIIを、そういう知識に自信がないというユーザーならRakuten Turboが良いでしょう。
実家のインターネット回線は以前に紹介した時から機器の入れ替えを行い、「Rakuten WiFi Pocket 2C」とASUS JAPANのWi-Fiルーター「RT-AC68U」を組み合わせて安定度を高めました
春には「一括0円」待ったなし?
Rakuten Turboは当初、オンライン販売限定でしたが、3月10日から楽天モバイルショップでも申し込めるようになりました。1カ月少々のタイムラグがあったのは、店頭スタッフに教育する時間を確保することはもちろんですが、オンライン販売における“反響”を分析することもあったのだろうなと推察しています。
通信サービスにおける最大の商戦期は、学校や多くの企業にとっての年度末、つまりこの3月です。各社共に、あれやこれやと手を尽くして、新規ユーザーの獲得に励む時期でもあります。
他社がワイヤレスホームルーターにおいて「一括10円(0円)」「商品券プレゼント」「商品値引き」といった攻勢をしてくるであろう中で、Rakuten Turbo 5Gだけが“定価の”4万1580円で販売されることは考えづらくもあります。店頭では、他社に対抗するための値下げやキャッシュバックが行われるものと思われます。
繰り返しですが、Rakuten Turboを含むFWAサービスには、電気通信事業法における値引き制限はありません。それだけに、楽天モバイルの“奮起”に期待したいところです。
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