“打倒PayPay”でスタートした「d払い」アプリの刷新 賛否両論の決済音を導入したワケ:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモのコード決済サービス「d払い」が、大幅にリニューアルされた。赤を前面に打ち出していたデザインは、白やベージュが基調になり、dポイントカードも画面上部のスワイプだけで呼び出せるようになった。リニューアルに伴い、これまで決済時に画面の遷移しかなかったd払いに、決済音が加わった。
ドコモのコード決済サービス「d払い」が、大幅にリニューアルされたのは3月16日のこと。事前にアナウンスされてはいたが、アプリを開いた際に初めてUI(ユーザーインタフェーイス)が刷新されていたこと気付き、その違いの大きさに驚いた人もいるはずだ。ドコモのコーポレートカラーである赤を前面に打ち出したデザインは、白やベージュが基調になり、dポイントカードも画面上部のスワイプだけで呼び出せるようになった。
また、このリニューアルに伴い、これまで決済時に画面の遷移しかなかったd払いに、決済音が加わった。競合他社の決済サービスは当初から導入していたサウンドにも追随した格好だ。一大リニューアルを果たしたd払いだが、その狙いはどこにあったのか。同サービスのUIやUX(ユーザー体験)を担当したドコモのスマートライフカンパニー ウォレットサービス部の3人に経緯や成果を聞いた。
【訂正:2023年4月22日10時30分 初出時、タイトルを「妥当PayPay」としていましたが、正しくは「打倒PayPay」です。おわびして訂正いたします。】
狙うは打倒PayPay、使い勝手の差を埋めるために取り入れたアジャイル開発
2018年4月に開始したd払いは、キャッシュレス決済の普及を追い風に、年々、規模を拡大している。2022年度の取扱高は、第3四半期までで1兆5030億円に達しており、2021年度通期での数字を既に超えてしまっている。数カ月の差ではあるものの、その歴史も、実はコード決済サービスでトップシェアを誇るPayPayよりも長い。
一方で、ユーザー数のシェアや決済の取扱高などでは、PayPayの後塵を拝しているのも事実だ。d払いをリニューアルした背景には、そんなドコモの危機感があった。同社のペイメント・企画担当、阿部能人氏は、その理由を赤裸々に語る。
「d払いの利用者多くいますが、PayPayにはかなり負けている状況でした。ドコモ回線のユーザーでもかなりの割合の方がPayPayを使っている。かなりユーザーを取られている状態でした。理由を探っていく中で、競合の方が使いやすいという回答がありました。一方のd払いは、街のお店での支払いなど、ベースの機能で負けていて、なおかつ使い勝手の調査も各項目が全てマイナス評価でした。そうなるのは、かなり問題がある。そこで使い勝手をよくする動きを2年前からスタートし、UXチームが誕生しました」
阿部氏が語っていたように、リニューアル自体は2年前にスタートし、1年前の2022年から、徐々にアプリに反映させていったという。例えば、「7月に支払い画面をリニューアルして、d払いとdポイントが別々だったのを1つの画面に表示できるようにした」という改善が、その1つ。これも「コンビニなどでPayPayで支払う人も、dポイントカードを出すことが多いのが分かった」(同)からだという。シームレスな体験を提供し、dポイントを起点にd払いの利用を促進するのが、その目的だ。
d払いとdポイント同時表示機能は比較的大きなトピックで、いわば中間地点だが、細かなものまで含めると、2022年3月から「100カ所ぐらいの改善をやっている」(同)という。dポイントの利用をオンにすると画面上部から通知が出てバイブが鳴るようになったり、残高の金額を非表示にできるようにしたりと、さまざまな新機能を加えていった。
また、起動速度やコードの表示速度も「1年を通してきれいにしていったことがジワジワと効いて、速くなっている」(同)。Wi-FiやデュアルSIMで回線を切り替えるとすぐにログアウトしてしまう問題にも改善を施し、以前と比べると「数分の1程度まで落ち着いている」(同)。
いわばチューニングとも呼べそうな細かなリニューアル作業を短期間で、かつ素早くできるよう、「2021年の秋ぐらいに、アジャイルで開発できる体制に変え、2週間に1回ぐらいのリリースをできるようになった」(同)。4月からは、その改善を「1週間に1回にしようとしている」(同)といい、スピードをさらに上げている。3月に実施されたUI刷新は、そんなリニューアルプロジェクトの集大成だ。
関連記事
- d払いアプリをリニューアル 支払い完了時に決済音が鳴るように
NTTドコモは、3月16日に「d払い」アプリをリニューアル。シンプルで見やすいデザインに刷新し、バーコードの部分を左右にスワイプすれば「dポイントカード」と簡単に切り替えられる。支払い完了時には決済音も鳴る。 - 他社比較で浮かび上がる「d払い/dポイント」の課題 ドコモが推し進める改革とは
dポイント、d払い、iD、dカードといった、各種決済・ポイントサービスを抱えているNTTドコモだが、一体感に欠けていた。競合他社を見ると、サービス連携をしつつ、各サービスの機能面はもちろん、マーケティングにも横ぐしを刺しているケースが多い。同社はカンパニー制度を導入して、機動力を高める方針を打ち出した。 - 「dポイント」と「d払い/dカード」拡充でドコモが持つ課題意識とは? カギは「苦労からの開放」
NTTドコモは、ポイントプログラムと決済サービス/プラットフォームを“自社で”抱えている……のだが、その普及において課題を抱えているのだという。日本を取り巻くキャッシュレス決済の現状と合わせて、同社が説明した。 - ドコモに聞く「dポイントクラブ」改定の背景 なぜ契約年数を条件から撤廃したのか?
NTTドコモの共通ポイント「dポイント」の新たな会員プログラムがスタートした。これまでの「ステージ制」から「ランク制」となり、ランクアップの仕組みや特典が大幅に変更された。このランク制の導入には「『dポイントがたまる、使える』をもっと実感してほしい」という背景があったという。 - 「dポイントクラブ」改定 6月3日以降のお得なdポイントのため方は?
筆者が今、注目しているのが2022年6月3日から改定される「dポイントクラブ」だ。6月3日からは3カ月間累計のdポイント獲得数で5段階のランクが設定され、ポイント倍率アップ特典に改定される。街やネットのdポイント加盟店で「dポイントカード」を提示すると、dポイントがもらえる倍率がなんと最大2.5倍までアップするのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.