楽天モバイルと米AST、低軌道衛星と市販スマホの音声通話試験に成功
楽天モバイルと米AST SpaceMobileは低軌道衛星のモバイルブロードバンド通信を使用した、市販スマートフォン同士の音声通話試験に成功した。地球低軌道に展開された商用通信アレイの強度を実証するものになるという。
楽天モバイルと米AST SpaceMobile(AST)は、4月26日に低軌道衛星のモバイルブロードバンド通信を使用した市販スマートフォン同士でのエンドツーエンド音声通話試験の成功を発表した。
本試験では、2022年9月にASTが打ち上げた試験衛星「BlueWalker3(ブルーウォーカー3)」とASTの保有する特許取得済みのシステムとアーキテクチャを利用。米国テキサス州ミッドランドと東京の楽天モバイル間で、改造など手を加えていない通常仕様の市販のスマートフォンを用いて音声通話を実現した。
音声通話には米AT&Tの周波数を使用し、この成功は地球低軌道に展開された商用通信アレイの強度を実証するものとしている。ASTは世界中35社以上(2023年4月現在)の通信事業者と覚書や予備契約を締結し、今回の試験には楽天モバイルの他に英VodafoneとAT&Tの技術者も参加している。
ASTは今回の試験で多様なスマートフォンやデバイスでの初期互換性試験も実施。スマートフォンは加入者識別モジュール(SIM)とネットワーク情報をBlueWalker 3と直接交換することに成功し、スマートフォンのアップリンクとダウンリンクの信号強度に関する追加試験と測定でモバイルブロードバンド速度と4G LTE、5G波形に対応できることも確認したという。
両社は、ASTが低軌道衛星(LEO)で構築するモバイルブロードバンド通信が市販のスマートフォンとの直接通信を目指す「SpaceMobile(スペースモバイル)」プロジェクトを推進している。本サービスが実現すればモバイル通信サービスの提供が難しかった山岳地帯や離島などでも通信サービスが提供可能となり、エリアカバー率を大幅に向上させられるとしている。
本プロジェクトの実現に向け、ASTはBlueWalker3打ち上げ後の11月に商用通信アレイを地球軌道へ展開。今後は2024年第1四半期に5機の衛星「Block1 BlueBird(ブロック1 ブルーバード)」の打ち上げと、試験衛星BlueWalker 3の追加機能試験を継続して行うことを予定している。
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