ネットワーク品質維持には「4Gと5Gのミックス」が肝――「なんちゃって5G」から「真の5G」へ:石川温のスマホ業界新聞
NTTドコモのLTE(4G)ネットワークの通信品質問題が話題になる一方で、ソフトバンクの通信品質が良いと評判である。ドコモが「なんちゃって5G」として導入を避けてきたLTEからの転用周波数帯をうまく使ったおかげで、速度はさておき安定性を確保できた結果なのかもしれない。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年9月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
なお、本記事は同日配信のメールマガジンに含まれる別トピックの“続き”となるため、文章の冒頭に文脈をつなげるための追記を行っています。
ソフトバンクの関和氏の話で印象的だったのが結局のところ「4Gと5Gをいかにミックスさせて活用していくか」という点だ。
5G開始時、5Gの基地局が離散的、ピンポイントでしか設置できていなかったため、セルエッジでは弱い電波をつかんでしまい、満足な品質に至らなかった。また、5Gではないところでは、アンカーバンドに集中してしまい、輻輳が起きてしまった。もちろん、5Gがないところではトラフィックが混雑してしまうのであった。
NSAのネットワークでは4Gのアンカーバンドが重要になってくる。5Gエリアを点ではなく、面展開していくことで、セルエッジでの品質低下もなくなり、アンカーバンドをうまくコントロールすることで、5Gと4Gのバランスが良くなり、結果として、ネットワーク品質が維持されるようになるという。
ここで頭のなかでひらめいたのがDSSだ。
かつて、クアルコムのイベントで熱く語られたのだが、DSSといって、4Gの周波数帯に5G通信できる電波を混ぜてしまうという仕組みだ。
4Gの周波数帯なので、通信速度の向上は期待できないのだが、クアルコム関係者によれば「DSSによって、5Gのエリアを一気に広げることができる。5Gエリアが広がれば、ネットワークは安定し、さらに5G SAの導入も速くすることが可能になる」と説明されたのを思い出した。
もちろん、ソフトバンクでもDSSを用いることで、4Gから5Gへの移行をスムーズに行った模様だ。
しかし、NTTドコモはこの4G周波数の5Gへの転用は否定的で「なんちゃって5Gは優良誤認になる」と断言し、4G周波数の転用はやらないと言い続けてきた(その後、撤回)。
確かに「5Gにつながっても、速度は全然、速くないじゃん」という評価を生み出たことになるので、5Gにとって良かったかは議論の余地があるが、いずれにしても、キャリアとして5Gに移行するには最良の手段だったと言えるだろう。
NTTドコモは、DSSといった4Gの周波数帯に5Gを混ぜると言うよりも、まるごと5G向けに転用するといったやり方をしているのではないか。ただでさえ、4Gネットワークがひっ迫しているので、そう簡単に5Gに転用するのも難しいという声も聞いたことがある。
NTTドコモは「瞬速5G」にこだわったが故に、5Gへの移行に苦労してしまっているのではないか。ソフトバンクは「なんちゃって5G」ではあったが、結果として「真の5G」に着実に近づいているといえそうだ。
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